ホラー

映画「アス」感想・評価:人間は誰しも自分のドッペルゲンガーに殺される恐怖を抱いている

サマリー


★★★☆☆(お薦め)

2019年9月日本公開のアメリカ制作ドッペルゲンガー・ホラードラマ
監督・脚本 ジョーダン・ピール(ゲット・アウト、アス)
出演 ●ルピタ・ニョンゴ(ブラックパンサー、アス)
●ウィンストン・デューク(ブラックパンサーアベンジャーズ/インフィニティ・ウォー
●エリザベス・モス(アス)

『アス』予告編90秒

 

ドッペルゲンガーを題材にした風刺ホラーだ。僕らは心の奥底で自分と瓜二つの人間に殺されるのではないかと恐怖心を持っている。ところがここでは家族(私たち:アス)のドッペルゲンガーが出現し、本物の家族を襲う。

ドッペルゲンガーとは「自分自身の姿を自分で見る幻覚の一種」だ。ドッペルゲンガーに出会ったら死ぬと言われている。つまり、すでに魂と体が分離しているからだ。芥川龍之介の話が有名だ。彼は2度ドッペルゲンガーに会っている。そしてこれが原因かはどうか分からないが35才で自殺している。

最初、架空の世界における心理ホラーだと思っていた。ところが実態を持ったドッペルゲンガー達が大きなハサミを持って人間を襲ってくる。ゾンビをドッペルゲンガーに置き換えたスプラッタードラマと言ってもいいのかもしれない。

米国の評論家は高い評価を与えているしヒットもしている。僕としてはそこそこ面白いのだが発想があまりにも飛躍している。ストーリーも分かり辛い。コアなファンには受けるかもしれないが万人向けとは言い難い。前作「ゲット・アウト」の方が良いと思うね。

ゲット・アウト

話のスジを少し紹介すると。1986年、カルフォルニア州サンタクルーズ。子供時代のアデレードはビーチで迷子になり、ミラー・ハウスに迷い込んでしまう。

そこには、自分と瓜二つの少女がいた。アデレードは運よく探し出されたがショックが大きかったのか言葉を失っていた。それから大人になったアデレード(ルピタ・ニョンゴ)は夫のゲイブ(ウィンストン・デューク)、娘のゾーラ(シャハディ・ライト・ジョセフ)、息子のジェイソン(エヴァン・アレックス)と幸せな日々を送っていた。

失語症のショックから立ち直っていたが、いまだにミラー・ハウスでの恐怖を引きずっていた。夏休み、家族はサンタクルーズを訪れる。ところがそこでジェイソンが迷子になってしまう。

幸い、ジェイソンは見つかったもののアデレードは不吉な予感を感じる。そしてその夜、真っ赤な服を着た私たちとそっくりな侵入者がアデレードの前に現れる。私たち「アス」とは何者なのかそして家族の運命は・・・。

その後のストーリーとネタバレ

アデレードとそっくりな女はレッドと呼ばれている。ケイブはアブラハム、ゾーラはアンブラ、ジェイソンはプルートーだ。この中で唯一言葉がしゃべれるのはレッドだけだ。

彼女はアデレード家に復習しに来たようだ。特にアデレードに強い恨みを抱いている。一家の家に押し入り家族を拘束する。ところがこの現象はアデレード一家だけではなく多くの家庭にドッペルゲンガー達が現れ本物を殺害し始めていた。

ゾーラは外に逃げアンブラが追いかける。ケイブはアブラハムに殴られ気絶して湖に連れてゆかれる。ところがジェイソンがプルートーをクローゼットに閉じ込めることに成功する。

プルートーを助けようとレッドがいなくなったすきを狙ってアデレードは外に逃げる。ケイブは運よくアブラハムを倒し、ボートに乗って家族を助けに来る。

助かったアデレード家は友人のタイラー家に助けを求めるがこの家族もすでにドッペルゲンガー達に殺されていた。しかし、アデレードたちは力を合わせてドッペルゲンガー達を倒す。テレビをつけるとアメリカ全土がドッペルゲンガー達によって襲われているニュースが目に入ってくる。

次の朝、ビーチにたどり着くとプルートーが待ち伏せをしていた。家族の乗った車を爆破しようと火炎瓶を持っていたが、不思議なことに後ろの燃え盛る車の中へと後ずさりし自分自身も火に包まれてしまう。

ところが後ろを振り返るとレッドが現れジェイソンをさらっていた。アデレードはレッドを追いかけミラーハウスの中に入ってゆく。そしてハウスの階段を降りると地下に続くトンネルがあった。

そのトンネルはドッペルゲンガー達の巨大な居住区だった。ドッペルゲンガーの正体はアメリカ政府によって作られたクローン人間たちだったのだ。彼らの行動は本物とシンクロしていたが言葉はしゃべれなかった。

アデレードはレッドを探し当てる。彼女が言うには、虐げられたクローンたちの復讐を計画し実行に移したのだと。アデレードはレッドとの壮絶な戦いの結果、彼女を殺害する。そしてジェイソンを見つけて地下を脱出する。

彼女は過去を思い出す。1986年の子供のころの記憶だ。アデレードはミラーハウスに紛れ込み、そこには自分そっくりの少女がいた。その少女はアデレードの首を絞め、気絶させると服を交換し、彼女を地下に拘束したまま自分は地上を目指したのだ。

実はアデレードはレッドだった。そしてジェイソンもクローンかもしれない。そのころ地上に出たクローンたちは手をつなぎどこまでも続く人々の列を作っていた。

レビュー

大どんでん返しだ。アデレードと思っていたのが実はレッドだったとは、しかもジェイソンも入れ替わっているかもしれない。しかし、地下に住んでいたのが大量のクローンたちと言う設定はやや突飛すぎる。

ジョーダン・ピール監督は生活困窮者の富裕層への憎悪を描きたかったようだ。アメリカ社会の貧富の差は毎年確実にひらいている。生まれたときにどちらの陣営にいるかで自分の人生が決まってしまう。

アメリカはかつて、今よりは自由で平等の国だった。今では階級社会のように見えない壁がある。この破れない壁がいつまでも存在し続ければ、そのうち暴動が起こっても不思議ではない。

ドッペルゲンガーとはドイツ語で「二重身」と訳される。英語では「ダブル」、漢字では「復体」と書くようだ。自分と同じ人間が自分を見て「にやり」とすればものすごく恐ろしい。

ドッペルゲンガーは「死の前兆」とも言われ、肉体から魂が分離、それが実体化されたものと説明される。地獄から自分を迎えに来た悪魔の化身なのか魅力あるテーマだがあまりかかわりたくない。

場合によっては第三者(多くの人に見られることもある)にも見えることがある。ある日友人から「昨日東京で見かけたよ」と言われ、そんなところに行ってもいないのに愕然とすることがある。ひょっとしたら魂がかってにそこらじゅうを歩き回っているかもしれない。

そのドッペルゲンガーが自分と遭遇しなければ問題ないが、万一かち合ってしまったら死を覚悟しなければならない。医学的にもこの研究がされており、脳腫瘍の患者がドッペルゲンガーをよく見るそうだ。また統合失調症の患者もこの傾向が強い。

ドッペルゲンガーを題材にした小説や映画なども多い。ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の「複製された男」、黒沢清監督の「ドッペルゲンガー」などがおすすめだ。

まあ、とにかくまだ死にたくないからドッペルゲンガーだけは勘弁願いたい。

TATSUTATSU

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