サマリー
2017年11月日本公開アメリカ製作 天才ヒューマンドラマ
監督 マーク・ウェブ(500日のサマー、アメイジング・スパイダーマンシリーズ、ギフテッド)
出演 ●クリス・エヴァンス(ファンタスティック・フォーシリーズ、キャプテン・アメリカシリーズ、アベンジャーズシリーズ、スノーピアサー、サンシャイン2057、ギフテッド)
●マッケナ・グレイス(ギフテッド)
●リンゼイ・ダンカン(アリス・イン・ワンダーランド、アバウト・タイム、バードマン、ギフテッド)
●ジェニー・スレイト(ギフテッド)
●オクタヴィア・スペンサー(スノーピアサー、ドリーム、ギフテッド)
小品だけど心温まるいい作品だ。「天才は幸せになれるのかな」なんて考えちゃう。もし自分の子供が「天才」だったらどうやって育てればいいんだろうか?
でもトンビが鷹を産むとは思われない。ひょっとしたら突然変異なんてことがあるかもしれないけど、やっぱり天才は遺伝子だ。天才の家系に生まれることが天才になれる最低条件だね。
監督のマーク・ウェブはスパイダーマンのような大作ではなく地味だけどこんな小品が作りたかったようだ。彼らしい温か味が映画全体に広がり、心地よく見られる。でもホロリとするシーンもあるからハンカチは必需品だ。
キャプテン・アメリカ役で有名なクリス・エヴァンスが生活力の無い叔父フランクを好演している。メアリー役のマッケナ・グレイスはオマセで可愛い。それに片目の猫フレッドも忘れてはならない。
7才のメアリーは叔父のフランク、猫のフレッドとフロリダ州タンパの小さな町で暮らしている。フランクは小型船の修理を仕事にして毎日 湾に出かける。
メアリーは近くに住む黒人の中年女性ロバータ(オクタヴィア・スペンサー)と大の仲良しだ、いつもあずかってもらっている。フランクはメアリーを育てるのにロバータにかなり世話になったようだ。
今までは問題なく暮らしてきたが、メアリーが小学校にあがる初日に問題が起こる。彼女は担任のボニー(ジェニー・スレイト)先生の算数の授業がつまらないとふてくされる。
ボニーはメアリーを困らせようとわざと難しい問題を出すが、彼女は難なくそれを解いてしまう。彼女の数学の能力は7才で既にボニー先生をはるかに超してしまっていた。そしてイジメっ子の上級生を本で殴りつけトラブルも起こす。
保護者のフランクは校長に呼びつけられ、天才的な能力を持った(ギフテッド)子供たちが通う奨学金付きの私立学校に通わせるべきだと言われる。
しかし彼はかたくなにそれを拒む。なぜなら普通に育てたいと言うのが亡くなった姉ダイアンの意志だからだ。メアリーの母親は天才数学者だった、そして自ら命を絶っている。
そんな時にフランクの母親のイヴリン(リンゼイ・ダンカン)が現われる。彼女も数学者であり、天才の片鱗を見せる孫メアリーを自分の手元に置いて世界的な数学者へと育てたいと考えている。亡くなった娘ダイアンのように。
フランクは母親イヴリンと激しく対立する。イヴリンは「メアリーは10億人に一人の天才だ」「彼女は人間社会に貢献するのが使命だ」と法廷闘争も辞さない覚悟だ。
フランクはメアリーを自分の子供のように愛していた。彼女を手放す事なんてとても出来ない。母と子は何処まで行っても平行線で・・・ついに裁判所での親権争いになる。まともに戦ってしまえば、生活力の低いフランクに勝ち目はない、さてどうなるのか。
その後のストーリーとネタバレ
傷心のフランクをボニーは慰めるがそれがいつしか愛に変わり二人は結ばれる。彼女は翌朝、フランクと居る所をメアリーに見つかり気まずい思いをする。
結局フランクは母親イヴリンと裁判所で争うことになる。この裁判を起点として彼の秘密にしてきた出来事が明らかになって行く。
フランクはメアリーを引き取る前はボストン大学で哲学の准教授として将来を嘱望されたエリートだった。彼は姉のダイアンから重要な相談にのって欲しいと連絡を受けたが、恋人とのデートを優先し断わってしまった。
姉は自殺し、あとには幼いメアリーが残された。あの時、姉に会っていれば自殺は防げたとフランクは自分を責め続ける。
母親のイヴリンは著名な数学者であった。クレイ数学研究所が出した、7問の懸賞問題の内の一つ「ナビエ・ストークスの方程式」を解くことをライフワークにしてきた。
彼女の娘ダイアンは天才少女であり、イヴリンはダイアンを数学者として育ててきた。親が出来なかった難問を娘はあと一歩のところまで解明していた。
しかし、ダイアンは母親から逃げ出す。そしてポールと知り合い子供を授かる。ところがイヴリンは難くせをつけ、強引にポールと別れさせる。ダイアンはメアリーを出産したが、娘を信頼している弟に託し自殺する。
フランクは裁判において、メアリーを育てる環境が整ってないと指摘される、彼は最低限の健康保険すら加入していなかった。フランクの弁護士はこのままでは相手に親権を取られてしまう。ここはぐっと我慢して和解しろとアドバイスする。
フランクは仕方なく調停案をのむ。メアリーを育児環境の整った里親に預け、フランクは月一回の面会が許される。そしてメアリーが12才になったときに彼女の意志で里親かフランクのどちらかと住むことを決められると言うものだった。
問題は解決したかに見えた時、ボニーから電話が入る。何と猫のフレッドが里親募集のポスターに載っているのだ。これらの猫は期間内に里親が見つからなければ安楽死させられる。
フランクは動物愛護センターに駆け付ける。あと一歩のところで処分されるフレッドと2匹の猫も持ち帰る。イヴリンは約束を破ったのだ。彼女は猫アレルギーで、猫嫌いだった。
フランクはメアリーのところに駆け付けるが、そこにはイヴリンがいてメアリーを自分の思い通りにしていた。里親は隠れ蓑で、裏では財力のあるイヴリンが付きっ切りで孫の天才教育を行っていた。
フランクは姉が残した論文をメアリーと交換を条件にイヴリンに投げつける。「ナビエ・ストークスの方程式」は既に姉によって解明されていた。姉は母が亡くなったら公表してほしいと弟に遺言を残していた。フランクは姉との約束を破ったがメアリーを取り戻すことが出来た。彼女もフランクと暮らせると大喜びだ。
メアリーは大学でハイレベルな教育を受け、放課後は小学校の仲間たちと楽しく遊ぶ毎日を過ごす。フランクはそんな輝いているメアリーを見て微笑む。
レビュー
現実には天才少女・少年と言えども世界で認められるのは「ギフテッド」のほんの一握りらしい。だから高度な教育ばかりでなく、人間関係を重視した教育が必要だと叫ばれている。
この映画では「本当の幸せってなんなのかな」がテーマだ。「愛し愛されることが重要だ」とメアリーとフランクが教えてくれる。
ところで、映画に7つの数学のミレニアム懸賞問題が出て来る。この問題を一つでも解ければ100万ドル(1億1000万円)の賞金がもらえる。今までに7つの内の1つが解かれている。その一つとは「ポアンカレ予想」と言われるものでペレルマンが解いている。
しかし彼は変人で100万ドルの賞金や名誉はすべて拒否し数学の研究すらもやめてしまう。人生の目標を見失ったのか、真相はよく分からない。
やはり、天才の考えることは僕ら凡人には分からないねえ。
TATSUTATSU
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