SF

映画「アジャストメント」感想・評価:主人公が彼女と手に入れた未来はバラ色か

サマリー


★★★☆☆(お薦め)

2011年日本公開のアメリカ製作SFドラマ
監督・脚本・製作 ジョージ・ノルフィ(アジャストメント
原作 フィリップ・K・ディック「調整班」
出演 ●マット・デイモン(グッド・ウィル・ハンティング/旅立ちプライベート・ライアン、ボーンシリーズ、アジャストメントインターステラーグレートウォールジェイソン・ボーンフォードvsフェラーリ
●エミリー・ブラント(プラダを着た悪魔、オール・ユー・ニード・イズ・キルガール・オン・ザ・トレインボーダーラインクワイエット・プレイスアジャストメント

映画『アジャストメント』予告編

 

「timshel(ティムシェル)」と言う言葉をご存じだろうか。映画「エデンの東」「ウエストワールド」などに出てくるヘブライ語だ。意味は「汝、治ること能う」、つまり「自分の運命は自分で切り開け」と言うことだ。

逆に「運命は生まれた時から決まっている」と言う人がいる。最近ではDNAの研究がかなり進んでいる。数万円程度でDNA解析してくれる機関もある。これによって、性格、免疫、感染症、アレルギー、体形、体質、筋肉、運動能力・・・などかなりの情報が分かる。

自分に向いている職業や将来罹りそうな病気、精神や肉体の弱点、など知っておいて損はない。もちろん育った環境にも左右されるがおおむね「運命は生まれた時から決まっている」と考えても間違いではない。人生の分かれ道で「運命が誰かに操作されている」と感じたことはないだろうか。僕自身も振り返ると既に決まっているレールの上を走らされていたと思えることがある。

世界は物理法則で回っている。だからこれに逆らうことはできない。自分の運命を決めるのは「神」や「天使」なのか。自分の思った通りの人生は選択できないのか・・・がこの映画のテーマだ。もし、自分の運命を変えようとするなら、自分の前に引かれたレールの上を運命より早く走らなければならない。

この映画では人間一人ひとりの運命は決まっている。但し、この運命からずれると「調整局」と言われる天使たち(?)が微調整をほどこす。デヴィッド・ノリス(マット・デイモン)はアメリカ合衆国議会の上院議員候補の下院議員だ。ところがスキャンダルが暴露され支持率が急落する。

そんな時、彼は運命の女性エリース・セラス(エミリー・ブラント)と巡り合い、愛し合う。これは運命を司る「調整局員」ハリー(アンソニー・マッキー)のミスだった。本来二人は出会わない運命になっていた。ところがハリーがうっかりしていたことから運命がおかしな方向にずれてゆく。彼と彼の上司リチャードソン(ジョン・スラッテリー)は二人の仲を裂こうとする。何故なら、デヴィッドは将来大統領になる予定の人物だった。

人間の運命を自由選択にまかすと戦争などの大惨事が起こって人類が滅亡する。だから「調整局員」たちが忙しく動き回る。通常彼らは人間社会にまぎれこんで誰も知らない。ところが彼らの仕事をデヴィッドは見てしまう。果たして彼の運命は・・・そして彼女か大統領のイスかどちらを選ぶのか・・・。

監督は「ボーン・アルティメイタム」の脚本に参加し大ヒットさせた実績を持つジョージ・ノルフィだ。そして当時、「ボーンシリーズ」でハリウッド・トップレベルの俳優になったマット・デイモンと演技派女優エミリー・ブラントの共演だ。

その後のストーリーとネタバレ

デヴィッドはエリースを愛していた。しかし、ベテラン「調整局員」トンプソン(テレンス・スタンプ)から「彼女は素晴らしいダンサーだ。君が彼女と結婚し、彼女が家庭に入ったらあの素晴らしい才能はしぼんでしまう」と言う。だから彼女はそのままにしておけと・・・。

それを聞いたデヴィッドは真剣に悩む。そして彼女を諦め、政治の世界にもどってゆく。11か月後、彼は順調に支持率を取り戻していた。ところがエリースのダンサーとしての素晴らしい評価と結婚の記事が新聞に載る。それを見たデヴィッドは落ち込む。

そんな彼のもとに「調整局員」ハリーが現れる。デヴィッドは彼女が忘れられない、彼女を取り戻すのに協力してくれと懇願する。そして何故、僕らを引き裂こうとするのかと詰め寄る。

ハリーは「君が彼女に夢中になったら、政治的野心が無くなる」「君は将来大統領になる男だ」と答える。それでもデヴィッドは引き下がらない。ハリーは彼に根負けし協力を約束する。

我々「調整員」はドアを使って色々な場所にワープできる。彼女をすぐに見つけ、ドアを使って自分の運命より早く移動しろと「運命の地図」を見せ帽子を渡す。帽子はワープするときの道具だ。

デヴィッドはハリーに言われた通りの回路をドアを使って移動する。エリースを見つけ彼女を説得し一緒に逃げる。「調整員」も気づいて後を追ってくる。捕まれば二人ともリセットだ。

デヴィッドは腹を決めた「調整局」に乗り込んで「運命の書」の著者を探す。彼らは「調整局」の中を探し回り著者つまり議長に会おうとする。ところが追っ手に追われ屋上に出る。そこからは、エンパイアステートビルやセントラルパークが見渡せる。

しかし、もう逃げ場がない・・・諦めた時ハリーが現れる。君も彼女も全てをかけてドアをくぐった。その行動には私も議長も感動させられた。君たちの強い絆は、運命を逸脱したとみなされる。「運命の書」は書き直された。「君らは自由だ」と告げる。二人は手を取り合って楽しく未来に向かって進む。

「人は定められた道を歩く、迷うのが怖いからだ」「だが障害を克服して自由意志を貫く人間もいる」「人は命がけで自由意志の大切さを知るのだ」「議長が真に望むのは、人類が自ら運命を書く、そんな日が来ることだ、君にはそれが書ける」

レビュー

面白い「運命論」を描いたSFドラマだ。あなたは、毎日の行動計画が順調に行ったことがあるだろうか。家を出て会社に行こうとしたら電車が止まっていた。或いはアポイントが急にキャンセルされた。スマホを家に忘れてきたとか・・・きりがない。これらは偶然か、いや、何かに運命が左右されていると思ってもおかしくない。

人生も同じで悪いことばかり続かないし、いいことも続かない・・・それが人生だ。受け入れるしかない。もちろん、自分の人生は自分で切り開くべきだけど、自分ではどうしようもないことの方が多い。この映画の「運命論」は決して間違いではない。

僕も偶然倒れたところが病院の前で命が助かったことがある。これは偶然と言えるのか・・・何かの力が働いたのかもしれない。いまだに不思議だ、もっと生きろと言うことなのか?

人間には第六感と言うやつがある。鉄塔にヘリコプターで高圧電線を施設する仕事がある。あるヘリコプターの機長は飛ぶ朝、ヘリの整備をする。その時、何か得体の知れない違和感を感じる時があるそうだ。そしてその時は絶対に飛ばない。その違和感は、「神」からのサインなのか。彼は数名の同乗者の命を握っている。

映画の中でデヴィッドとエリースは自分たちだけで新しい人生をはじめる。きっと彼は彼女を手に入れただけではなく大統領の椅子も手に入れるだろう。それにデヴィッドを助けた時のハリーは議長が化けたハリーだったのかもね。

TATSUTATSU

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