SF

映画「猿の惑星 聖戦記」感想・評価‐猿と人間のこれが本当に最後の戦いだ

サマリー


2017年10月 日本公開のアメリカ製作SF映画
監督・脚本 マット・リーヴス(クローバーフィールド/HAKAISHA、猿の惑星:新世紀猿の惑星:聖戦記
出演 ●アンディ・サーキス(ロード・オブ・ザ・リングシリーズ、キング・コング、猿の惑星シリーズ、ホビットシリーズ)
●ウディ・ハレルソン(グランド・イリュージョン、ハンガー・ゲームシリーズ、TRUE DETECTIVE/二人の刑事

映画『猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)』予告編

 

今回のシリーズは今までの「猿の惑星」とはやや異なっている。猿のリーダー シーザー(アンディ・サーキス)が人間のように悩み、葛藤し、復讐心に燃える姿を描いている。

人類は徹底的に冷酷な非人間として、サルは血の通った優しい生き物として対照的に捉えられている。猿たちは人間とは戦いたくない、森の奥でひっそりと暮らしたい。ところが人間たちは知性を持った猿どもを抹殺しようと最後の戦いを挑んでくる。

前作(猿の惑星:新世紀)は世界中で大ヒットしたが、今作は同時に封切られたライバル作品に押されやや低調気味である。しかし内容が劣っているとは思えない・・・この作品はこの作品でけっこう面白い。

地球に君臨してきた人類が猿に取って代わられようとしている。猿インフルエンザによって文明は崩壊し、絶滅してゆく人類の悲哀さを感じさせる。新たな切り口で臨むシーザーのヒューマンストーリーを堪能してはどうかと思う。

ドラマの設定は前作の2年後から始まる。シーザー達は森の奥に砦を築き戦いを挑んでくる人間たちを迎え撃つ。冷酷な大佐(ウディ・ハレルソン)が独自に作り上げた特殊な軍隊がひそかに襲ってくる。

滝の裏側に隠れていた猿の大家族が大佐達に襲われ、シーザーの妻コーネリア(ジュディ・グリア)と息子のブルーアイズが殺害される。

妻と息子を失ったシーザーは我を忘れ、大佐を殺害しようと群れから離れ軍隊を追う。それを心配してモーリス(カリン・コノヴァル)、ロケット(テリー・ノタリー)、ルカ(マイケル・アダムスウェイト)が追従する。

途中口のきけない人間の少女ノバ(アミア・ミラー)をみつけ、雪山の中にほってはおけないと一緒に先を急ぐ。軍隊の中におかしな病気が広がりつつあるのか、撃ち殺され処分された兵士が横たわる・・・彼らも口がきけないようだ。

ところが新天地を目指した猿の群れは大佐の軍隊に捕まり要塞の中で捕虜となっていた。そしてシーザーも大佐に捕まってしまう。

この要塞に軍の本体が向かってくる。彼らは大佐の援軍なのかそれとも敵対しているのか。二つの軍隊と猿の群れ、三つ巴の戦いが始まろうとしている・・・。

ストーリー

森の奥の猿たちの砦を人間の特殊部隊が急襲する。猿たちは突然襲われパニックに陥るが、応援に駆け付けたシーザー(アンディ・サーキス)の軍隊に駆逐される。

特殊部隊は大佐(ウディ・ハレルソン)と呼ばれる冷酷な男がリーダーで猿たちを根絶やしにしようと企んでいた。シーザーは「人間と戦うつもりはない」と生き残った人間たちにメッセージを伝え、大佐のもとに送り返す。

ところが、滝の裏側の猿の隠れ家を大佐達に襲われ、シーザーの妻コーネリア(ジュディ・グリア)と年長の息子ブルーアイズが殺害される。コバ(トビー・ケベル)の残党が隠れ家を大佐に漏らしたようだ。

シーザーは我を忘れて単身 大佐を殺害しようと人間の軍隊のあとをつける。心配したモーリス(カリン・コノヴァル)、ロケット(テリー・ノタリー)、ルカ(マイケル・アダムスウェイト)はシーザーに同行することになる。

途中の村で口のきけない少女(アミア・ミラー)を見つけるが、この雪の中に置いてゆけないと一緒に馬に乗せる。モーリスは少女にノバと名前を付ける。

人間の軍隊たちは何処かに向かおうとしていたが、三人の仲間が撃たれているのを発見する。彼らはノバと同じように口がきけ無いようだ。どうも人間の軍隊には何らかの病気が広がりつつあるようだった。

さらに動物園らしきところでバッド・エイプ(スティーヴ・ザーン)と言う変わった猿に遭遇する。彼は体毛が少なく寒さよけに人間のジャケットを来ていた。彼は大佐の基地の場所を知っていることから道案内として同行させる。

基地に到着すると多くの猿たちが捕えられ、砦の建設に従事させられていた。良く見ると何とシーザー達の群れだった。彼らは新天地に向かう途中に大佐によって捕えられたらしい。

シーザーは一人で檻に近づくが大佐に捕まってしまう。そして拷問を受け瀕死の状態となる。夜になってノバがこっそりシーザーに近づき水と食料を渡す。そして彼女が持っていた人形も檻に入れる。

次の朝、大佐はシーザーが生きているのを確認し群れに戻す。ところが檻の中に落ちていた人形を拾って、誰かが来たことを不審がる。

モーリスとバッド・エイプ達は地下道を掘り、サルの群れを逃がそうとする。この計画は上手くゆくのか、大佐たちは何故急ピッチで砦の建設を行っているのか・・・。

ネタバレ

大佐たちの軍隊を目指してアメリカ軍の本体が押し寄せてくる。この二つの軍隊は敵対関係にあり、大佐はこのために要塞の建設を急がせたようだ。

地下道が貫通し、猿たちは少しずつ逃亡を始める。そんな時アメリカ軍本体のヘリが砦を襲う。迎え撃つ大佐率いる軍隊はロケット弾、機関銃で応戦する。

このチャンスにシーザーは大佐の部屋に押し入るがそこで驚くべき光景を見る。大佐は鼻から血を流し口がきけ無い、ノバが落とした人形から病気が感染したようだ。この病気は人間を退化させ動物のように知性を失わせてゆく。

シーザーは妻子のかたきを取ろうと拳銃を握るが撃つことが出来なかった。銃を置いて大佐の部屋を出る、そのあと銃声が鳴り響き大佐は自害する。

シーザーは大佐の軍隊を壊滅させようと手榴弾を持って燃料タンクに近づくが、弓矢を横腹に喰らって倒れ込む。もう絶体絶命だ、その時敵に寝返っていたレッド・ドンキー(タイ・オルソン)に助けられる。

シーザーは手榴弾を燃料タンクに投げ入れ大爆発を起こさせる。それを合図にしたかのように米軍本体が砦になだれ込む。ところがこの大爆発の振動で雪崩が起き二つの軍隊共に飲み込んでしまう。

猿たちは大木にしがみつき難を逃れる。人間たちは愚かにも自滅してしまったようだ。シーザーは群れを率いて新天地を目指す。

かなりの時間が経過した。大きな湖のある理想の地にやっと到着することが出来た。丘の上でそれを眺めていたシーザーは傍らのモーリスにみとられ、安心したかのように静かに息を引き取って行く。

レビュー

猿インフルの影響なのかこれに感染した人間は退化してゆく。猿は進化してゆくに従って人間は野生に戻って行く。今回の戦いは人間同士の戦いも描かれている。


「猿の惑星」

滅びる運命にある人間は最後まで戦いを止めない、自業自得と言える。結局シーザーも亡くなってしまう。このあともっとも有名な初期作品「猿の惑星」に繋がって行くのか。或いはまた続編が作られるのか。


「猿の惑星」

「猿の惑星」の結末は映画史の中でも有名なシーンだ。このシーンのおかげでこのシリーズは成功したと言っていいかもしれない。人間のおごりと逆転現象これがこのシリーズのテーマだ。


「猿の惑星」

それにしても猿の動きが生きているようだ、映像の進歩は凄いと感じる。「猿の惑星」が公開された1968年当時、猿の特殊メイクは精巧なもので周りを驚かせた。

ところがここに出て来る猿たちはモーションキャプチャ(実際の人物や物体の動きをデジタル的に記録する技術)によって、まるで本物の猿たちが映画の中で動き回っている。

大昔の特殊メイクも味があるが、昔の人が今の映像を見たら多分腰を抜かしてしまうに違いない。

TATSUTATSU

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