はじめに
新海誠監督は長編映画5作目「君の名は。」で2016年ブレイクした。監督の特徴は「新海ワールド」と言われる、瑞々しく透明感のある風景描写だ。この映像を見てるだけで、心が安らぎ郷愁を覚えさせる。
映像の魔術師と言ってもいい。この独特のタッチで描かれる映像に、淡い恋のストーリーが加わる。多くの視聴者の共感を得ているのも当然だ。
「言の葉の庭」などの代表作を観ていると、忘れてしまった若い時の記憶が甦ってくるようだ。「男女のすれ違い」こそが監督のテーマなのか・・・。
今回3年ぶりに新作「天気の子」が発表された。2019年7月の上映予定だ。待ち遠しい、きっとまた僕らをワクワクさせてくれると思う。(追伸:「天気の子」をアップしました。)
空を「晴れ」にする能力を持った女の子「陽菜」の物語だ。さて彼女に出逢った男の子「帆高」は・・・。世界に色々なメッセージをとどけるドラマらしい。
第7位 ほしのこえ
2002年公開のSFアニメ短編映画
監督・脚本・原案 新海誠(ほしのこえ、雲のむこう、約束の場所、秒速5センチメートル、星を追う子ども、言の葉の庭、君の名は。、すずめの戸締まり、)
出演者 武藤寿美(長峰美加子)
鈴木千尋(寺尾昇)
今から10年以上前に新海誠監督が発表した短編映画だ。
この映画で監督は幾つもの役割をやっている、さらにオリジナル版では声優にまで挑戦している・・・凄い才能を持った人なんだ。
物語はやや突飛な感じがするけど、映像の美しさと画面の切り取り方がうまい。
地球上の雰囲気は現代と変わらないが、物語は2046年の宇宙テクノロジーがもの凄く進化した未来を描いている。
2039年にNASAが火星のタルシス大地(火星の巨大な火星平原)で地球外知的生命体の都市遺跡を発見する。
ところが突然現れた地球外知的生命体(タルシアン)によって火星調査隊は全滅させられる。
驚いた人類はタルシアンの遺跡から彼らの技術を研究し、彼らにに対抗出来る宇宙艦隊(リテシア艦隊)を作り上げる。
リテシア艦隊は4隻の宇宙船からなり、多数の人型起動兵器トレーサーを搭載する。
中学3年の寺尾昇(声:鈴木千尋)と長峰美加子(声:武藤寿美)は幼馴染でお互い惹かれあっている、そして同じ高校への進学を考えていた。
ところが美加子はリテシア艦隊に搭載されるトレーサーの乗組員に選抜される。
彼女は昇と別れて宇宙船に乗り込み冥王星へと向かう。彼女は昇に時々メールを送る・・・でも宇宙空間を光速で移動するため、メールが昇に届くまで何年もかかる。
果たして昇はメールが届くまで何年も待ってくれるのだろーか、それに歳を取るのが遅くなる15才の彼女は地球時間でどんどん歳を取って行く昇と離れて行ってしまうのか・・・。
第6位 雲のむこう、約束の場所
2004年のSFアニメ映画
監督・脚本 新海誠(ほしのこえ、雲のむこう、約束の場所、秒速5センチメートル、星を追う子ども、言の葉の庭、君の名は。)
出演者 吉岡秀隆(藤沢浩紀)
萩原聖人(白川拓也)
南里侑香(沢渡佐由理)
この作品は監督の第三弾目にして初めての長編だ。
最初単純な恋愛ドラマかと思ったが、見てるうちに我々が住んでいる世界とは違う別世界が描かれている。
平行宇宙(パラレルワールド)がテーマになっている。この平行宇宙は理論的には存在しているようだ。
物語の舞台は1996年、日本が北海道と分断されている、架空の世界だ。
北海道(エゾ)は共産国家ユニオンに属し、本州以南は日米が統治しているんだ。
エゾには異常に高い塔が建設され、塔の設計者はエクスン・ツキノエと言われている。そして後で分かることだがヒロイン沢渡佐由理は彼の孫娘にあたる。
塔は平行宇宙を観測するための塔だ、しかし塔の周りには別の世界があふれるように浸食していることから、塔による平行宇宙の制御がうまくいっていないようだ。
津軽半島に住む中学三年生の藤沢浩紀は白川拓也と一緒に小型飛行機であの塔に近づこうと考えている。
彼らは廃屋の中で小型飛行機ヴェラシーラを少しずつ組み立てている。
そんな時彼らは同級生の沢渡佐由理と知り合い「飛行機が完成したら、あの塔までつれてゆく」と約束してしまう。
ところが佐由理は原因不明の「眠り病」にかかり、彼らの前から姿を消す。
浩紀は夢の中で佐由理が一人ぼっちでいるところを見る。そして彼女を飛行機に乗せて塔に近づけば眠りから覚めるのではないかと思うようになる。
彼らは計画を実現しようと奔走するのだが・・・。
第5位 秒速5センチメートル
2007年公開の日本恋愛アニメ
監督・脚本 新海誠(ほしのこえ、雲のむこう、約束の場所、秒速5センチメートル、星を追う子ども、言の葉の庭、君の名は。)
声の出演 水橋研二
近藤好美
尾上綾華
花村怜美
秒速5センチメートルとは桜の花びらが地面に落下する速度なんだ。
新海監督は3部作の短編連作アニメ手法で思春期の恋人たちの淡い恋を描いている。
恋人との心の距離、転校によって遠く離れてゆく恋人との距離、恋人に会いに行くまでの時間と距離・・・一瞬で過ぎ去ってしまう思春期の淡い恋を時間と距離でうまくまとめたドラマだ。
中学、高校の淡い恋は心の中にいつまでも残っている。でもその恋に引きずられて生きなければならない時もある。そう思うと胸が締め付けられるような郷愁に襲われる。
63分と短いが、新海監督らしい映像美に酔いしれる。季節感が作品の中に漂い失ったものを思い出させるような寂寥感を感じる。
このアニメを見ていると過ぎ去って行く時間の大切さを痛感する。1日1日を精一杯生きないといけない。
山崎まさよしの「One more time,One more chance」が主題歌にぴったりだ。
第一話 「桜花抄」
遠野貴樹(水橋研二)と篠原明里(近藤好美)は小学校の同級生だ、明里は小学校卒業と同時に栃木県に転校してしまう。
お互い淡い恋を抱いたまま文通が始まる。しかし冬になって今度は貴樹が鹿児島に転校することになる。
貴樹は転校する前に栃木の岩舟に明里を訪ねてゆく。ところが大雪で列車が思うように進まない。
果たして貴樹は明里に会うことが出来るのか?
第二話 「コスモナウト」
貴樹は明里との淡い恋を引きずったまま種子島に転校する。
そんな貴樹に対して高校3年のクラスメイト澄田花苗(花村怜美)は思いを寄せる。
貴樹は東京の大学に行くことが決まっている。花苗はそれまでに貴樹に思いを打ち明けようと決心するのだが。
第三話 「秒速5センチメートル」
貴樹は大学を卒業し就職する。今でも明里のことを引きずっている。
そんな貴樹に3年間も付き合っている水野理紗(水野理紗)から別れを告げられる。
貴樹は仕事に没頭し、自分を見失って会社を辞めてしまう・・・。
第4位 星を追う子ども
2011年公開の日本SFアニメ
監督・脚本 新海誠(ほしのこえ、雲のむこう、約束の場所、秒速5センチメートル、星を追う子ども、言の葉の庭、君の名は。)
声の出演者 金子寿子(広瀬明日菜)
入野自由(シュン、シン)
井上和彦(森崎竜司)
新海監督の冒険SF意欲作だ・・・今までの作品とジャンルが少し異なる。
地底都市「アガルタ」が舞台になっているが、宮崎アニメに強い影響を受けた作品のように思える。
ストーリーも映像もジブリに似通ったところが多く、残念ながら新鮮味に欠ける。
新海監督としてはこのジャンルはまだまだジブリに勝てない。
ヒロインの明日菜(アスナ)は父を早くに亡くし、母と二人暮らしだ。
ある日、彼女は山の秘密基地に行く途中、得体の知れないクマのような動物に襲われる。
そこにシュンと言う青年が現れ、明日菜は救われる。しかし彼はしばらく後に川下で死体となって発見される。
シュンは不治の病に侵されていた。そして死ぬ前に地上を一目見たい一心でここに現れたらしい。
彼は地底都市アガルタから来たと言った。そして地上の夕陽と星空をまぶたに焼き付けていた。
それからしばらくして新任教師 森崎が学校にやってくる。森崎は授業で「死後の世界」の話をし、アガルタもその一つであると言う。そしてアガルタには死者を復活させる神々の伝説がある。
明日菜は山の秘密基地でシュンの弟シンに会う。彼は兄が持ち出した鉱石の結晶「クラヴィス」を取り戻しにきたのだ。
そこに森崎が現れシンの後を追ってアガルタへと地下を降りてゆく。明日菜も成り行きから猫のような小動物ミミと彼についてゆく。
森崎はアガルタを長い間調査してきた組織「アルカンジェリ」の一員だった。彼は亡き妻リサをアガルタで復活させることを目的にしていた。
明日菜は迷い込んでしまった地底都市アガルタから無事帰ってくることは出来るのか?
また、森崎は亡き妻リサをアガルタで復活させることが出来るのか?
第3位 言の葉の庭
2013年公開の日本アニメ映画
監督・脚本・原作 新海誠(ほしのこえ、雲のむこう、約束の場所、秒速5センチメートル、星を追う子ども、言の葉の庭、君の名は。)
声の出演 入野自由(秋月孝雄)
花澤香菜(雪野百香里)
46分の小作品だけど、何回も見たくなるほど心を打つドラマだ。
「言の葉」とは「言葉」のことだ。大昔では「和歌」を表していたらしい。
言葉(和歌)とは心を種にして葉が茂るように広がってゆくもの。
梅雨の時期の雨のうっとうしさを爽快な気分に変えてくれる、心洗われる恋の物語だ。
雨の日の映像が実に美しい、「実写」なのか「アニメ」なのか新海誠監督らしい優しい表現だ。
雨の中に映える庭の緑、初夏の鮮やかな緑が主人公たちを包んでゆく・・・ゆっくりと時間が流れてゆく・・・もう何時間でも見ていたい。
高校1年の孝雄は、雨の日はいつも授業をサボって公園に行く。公園では雨をしのげるベンチで靴のデザインを考えている。
孝雄は将来 靴職人になりたいと考えている。
ある日、いつもの公園のベンチに行くと、雪野と言うどこかで見たことのある女性がいた。
彼女はチョコレートをつまみに缶ビールを飲んでいた。
そして万葉集の短歌「雷神(なるかみ)の 少し響みてさし曇り 雨も降らぬか 君を留めむ」(雨が降ったら君はここに留まってくれるだろうか)を残して帰って行く。
それから雨の日はいつも雪野と会う、孝雄は雪野に靴職人になる夢を語る。
そして孝雄は雪野に好意を持つようになる。歳の離れた彼らの恋はどうなって行くのか・・・。
第2位 君の名は。
2016年公開のSFタイムリープアニメ
監督・脚本・原作 新海誠(ほしのこえ、雲のむこう、約束の場所、秒速5センチメートル、星を追う子ども、言の葉の庭)
声の出演 神木隆之介(立花瀧)
上白石萌音(宮水三葉)
長澤まさみ(奥寺ミキ)
市原悦子(宮水一葉)
娘と一緒に観に行ってきたけど映画館の中では、じじいはさすがに僕一人でした。
若い人に人気のあるアニメだね。僕ぐらいじじいになると「タイムトラベル」「タイムループ」「タイムリープ」物はもう何回も見ている。
少し前にはやった細田守監督の「時をかける少女」を思い出した。でもアニメがもの凄く透明感があって「実写よりも実写らしい」思わず目を奪われる・・・映像の進歩にはびっくりする。
この映像を見るだけでも劇場に駆け付ける意味があると思うよ。
少し前半もたもたしたけど後半から映画に引き込まれる。若者達のみずみずしくて淡い恋が描かれ、好感が持てる。
恋人同士で見に行ったら最高だろうと思うよ。
僕なんかけがれにケガレちゃってるから、この思春期の淡い恋には残念ながら感情移入出来なかったけど。
「君の名は」(1952年)と聞くと僕以上に古い人は条件反射のように菊田一夫原作のメロドラマを思い浮かべる。このドラマはラジオ・テレビ・映画と社会現象になるほど大ヒットした。
岸恵子さんと佐田啓二(中井貴一のお父さんだね)さんのキャストが特に有名だ。このドラマが始まると町が空っぽになるくらい歩いている人がいなくなったらしい・・・凄いね。
物語は東京の男子高校生 立花瀧(タチバナ タキ)と飛騨に住む女子高校生 宮水三葉(ミヤミズ ミツハ)が夢の中で入れ替わる。
ところが現実にも時々入れ替わっていることが分かり、二人はパニックになる。そしてその記憶を残すため日記を書いたり、スマホのメール交換をしたりしてして現実社会で怪しまれないよう工夫する。
しばらくして二人の入れ替わりは突然途絶える。
瀧は三葉のことを思い出し、自分が三葉と入れ替わっていたときの記憶を頼りに風景のスケッチをする。
そして3年後そのスケッチを頼りに飛騨に彼女を探しに出かける。
ところが彼女が住んでいた糸守町は1000年に一度訪れる彗星の一部がに落下して壊滅状態になっていた。
三葉は3年前にすでに亡くなっていたことを初めて知る。
瀧は導かれるようにクレーター状の台地の中心にある宮水神社に訪れ、三葉が自分の唾液とお米を混ぜて発酵させ3年前に奉納したお神酒(口噛み酒)を飲む。
その時 瀧は三葉の赤い糸に導かれるように3年前にタイムスリップする。
第1位 天気の子
2019年7月公開のファンタジーアニメ映画
原作・脚本・監督:新海誠(ほしのこえ、雲のむこう、約束の場所、秒速5センチメートル、星を追う子ども、言の葉の庭、君の名は。、天気の子)
声の出演 ●醍醐虎汰朗(役柄:森嶋帆高)
●森七菜(役柄:天野陽菜)
●小栗旬(役柄:須賀圭介)
●本田翼(役柄:夏美)
●倍賞千恵子(役柄:冨美)
●吉柳咲良(役柄:天野凪)
●平泉成(役柄:安井)
●梶裕貴(役柄:高井)
RADWIMPS主題歌「愛にできることはまだあるかい」
「君の名は。」を超える大ヒットを予想させる新海誠監督の最新作だ。「君の名は。」から3年、ストーリーの組み立てに相当苦労したことが伺われる。前作の正反対の結末をどうして監督は選んだのか?
狂い始めた天候と世界、若者たちの孤独と貧困、先行きの見えない現代を上手く切り取った名作だ。世界は誰も知らない森嶋帆高と天野陽菜の二人だけの世界。
二人だけの世界は夢の中なのか、いや現実の世界だ。二人は世界を変えようとしたが何のために世界を変えようとするのか。自分を犠牲にしてまで守る世界がそこにはあるのか・・・。新海誠監督の強烈なメッセージだ。
少女は何故「晴れ女」になったのか。彼女が祈れば100%晴れる。人々は大喜びだ。でもその代償は彼女に覆いかぶさる。雲の映像が素晴らしい、そこから漏れる光の束は心を奪われるほど美しい。RADWIMPSの主題歌が淡い恋を切なく歌い上げる。さあハンカチを持って劇場に駆け付けましょう。詳細は「天気の子」を見てね。
まとめ
今売出し中の新海誠監督6作品をまとめてみた。
どの作品も素晴らしく全部見ることをお薦めする。(時間がなければトップ3ぐらいは見てね)
彼の作品は心が洗われるようなストーリーと目の覚めるような映像がウリだね。
この新海ワールドにはまったら泥沼のように抜け出せなくなる・・・あとは自己責任でお願いしますよ。
特に「君の名は。」は興行収入が370億円を超えたらしい・・・「千と千尋の神隠し」を抜いたようだ。
凄いアニメ監督が出てきたね、次回作が楽しみだ。
是非「千と千尋の神隠し」を超えるような斬新なアニメを待っています。
この映像美はアニメと言うより芸術品だ。
TATSUTATSU
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