サスペンス

映画「ウインド・リバー」感想・評価:極寒の地での連続少女失踪事件を描いたサスペンスドラマ

サマリー


★★★☆☆(お薦め)

2018年日本公開のアメリカ製作少女失踪サスペンスドラマ
監督・脚本 テイラー・シェリダン
出演 ●ジェレミー・レナー(ハート・ロッカー、ミッション:インポッシブルシリーズ、アベンジャーズシリーズ、メッセージウインド・リバー
●エリザベス・オルセン(レッド・ライトアベンジャーズ/インフィニティ・ウォーウインド・リバー

https://youtu.be/ZVuBuQcuFOI

 

事実に基づいたサスペンスドラマだ。ワイオミング州ウインド・リバー先住民保留地。冬になると零下30℃まで下がる極寒の地だ。この地で少女の連続失踪事件が起こる。しかもその数は正確に把握されていない。

広大なこの地を管轄する警官は6名、まさに現代の無法地帯だ。そして自然の節理どおり強い奴だけが生き残る。ここでは都会での「運」は通用しない。野獣の世界なのだ。

少女の死亡にかかわった悪人を探し出すサスペンス。そして大自然をバックに迫力ある銃撃シーンが展開される。重苦しい雰囲気の映画だがこれが事実をベースにしたものと言われるとネイティブ・アメリカン社会の闇を感じざるを得ない。

シリアスな骨太映画が好きな人にはお薦めだ。ジェレミー・レナーとエリザベス・オルセンの真に迫る演技には目が離せない。こんなレベルの高い映画を作り上げたテイラー・シェリダンが初めて監督した作品とは信じられない。

ドラマのスジを少し紹介すると。ウインド・リバー保留地の山の中で少女の遺体が発見される。発見したのは野生生物局の職員、コリン・ランバート(ジェレミー・レナー)だ。

彼は地元の警察に連絡を取る。そしてFBIから新人捜査官ジェーン・バナー(エリザベス・オルセン)が派遣される。彼女はここをなめきっており、軽装でレンタカーに乗って現れる。

部族警察長のベン(グラハム・グリーン)はあきれるが、彼女もこの地では街中のように簡単に捜査が出来ないことを察知する。そしてコリンに捜査協力を要請する。

被害者はコリンの顔見知りナタリー(ケルシー・アスビル)だった。実はコリンも数年前に娘を亡くしており、事件性があったが遺体がコヨーテに食べられ検死不可能だった。

コリンとジェーンは少女の足取りを探り始める。そしてナタリーの恋人マットの存在が浮かび上がる。ところが彼らしい遺体が山中から発見される。ナタリーは数人の男にレイプされた痕跡があった。果たして殺人犯は誰なのか・・・。

その後のストーリーとネタバレ

ナタリーは検死の結果、肺からの出血が致命傷の様だ。それに足が重度の凍傷になっており、どこかから全力で走って逃げようとしていた。零下30℃の状況で走れば肺が氷りつき破裂して自分の血で窒息する。

狼、ピューマなどの家畜を襲う害獣の駆除をしているコリンは牛を殺したピューマをスノーモービルで追っていて死体を見つける。死体から、最も近い民家は5.5キロ先の南東だ。そのほかには8キロ先の掘削所に作業員の寮がある。

まず、5.5キロ先の民家を調べる。3人のガラの悪い若者が住んでいる。扉を開けると先住民の若者がロリッて出てきていきなりスプレーを吹きかける。違法ドラッグをやっていたようだ。

ジェーンは小屋に入り、銃撃戦のすえ若者を一人撃ち殺す。後二人は逮捕する。二人の内一人は殺されたナタリーの兄だ。そして妹はマットと言う男と付き合っていたと言う。

その小屋からスノーモービルのあとが山へと続く。それを見つけたコリンはジェーンをスノーモービルに乗せて跡をたどる。何とそこには男性らしき遺体があった。

ジェーンはベンと警察官4名の6人でマットと言う男を調べるため掘削所の寮に行く。コリンは男性遺体のあったスノーモービルの痕跡の行き先を調べると、別行動だ。

ジェーン達は小屋に近づくと周りから男たちが出てきて取り囲む。そしてみんな銃を向ける。彼女は「私はFBIだ落ちつけ」と銃撃戦を回避する。

そして、マットの部屋を調べるだけだと小屋のドアの前に立つ。その時、近くでスノーモービルの痕跡を調べていたコリンからベンに「殺ったのは奴らだと」無線連絡が入る。

ベンはジェーンにそこは危ないと言いかけた時、ドア越しに撃たれる。そして両者の銃撃戦が始まる。ジェーンが重傷を負い、警察官は全員射殺された。ジェーンがとどめを刺されそうになった時、コリンのライフルが火を噴く。一人を残して生き残った敵を射殺する。

ジェーンは防弾ベストを着ていたが首と体に重傷を負う。コリンは彼女に近づき応急治療を施し、逃げた男を追う。男を追い詰め捕まえると、山の上に運び、逃げろと自由にする。男は走って逃げるが極低温の外気の為、肺が破裂し倒れ込んで息絶える。

事の真相はナタリーが夜にマットを訪ねて来る。愛し合い、小屋のベッドで寝ていた。ところが突然同僚が入ってきて、二人に暴力を振るいナタリーはレイプされる。そしてマットが彼らと殴り合いをしているスキに小屋から逃げたようだ。その後マットは殴り殺され、山に捨てられる。

ジェーンは一命を取り留めた。彼女は運が良かったと言う。コリンは言う「ここでは運は通用しない」「君は自分の力で生き抜いたのだ」と・・・。

レビュー

コリンは雪山にあった男の死体周辺を調べていたとき、スノーモービルの轍を見つける。その轍が掘削所に続いているのを見て殺人者は掘削所にいる男たちだと判断したようだ。

これだけ厳しい自然環境下では死体はコヨーテに食われ、雪に埋もれてしまう。したがって殺人の痕跡は完全に消し去られてしまう。だからこんな場所で人が失踪しても見つからない。自然は殺人鬼の絶好の隠れ家だ。

かつて「ハリケーン(1979)」と言う映画があった。恋人たちや全てを飲み込む自然災害の前には人間の存在などあまりに小さいこと。また、大自然を生き抜いた「レヴェナント:蘇えりし者」と言う映画があった。

大自然の中で人間が生きるためには猛獣にならなければならない。「運」ではなく「生きる意志の強さ」が生死を分ける・・・それを感じさせる映画だね。

最期に、先住民の若者たちの悲惨さも描かれている。彼らは現実社会に適応できずドラッグにはまってゆく。かつては、厳しい自然を相手に生き残ってきたのに、文明は人間を堕落させてしまうのか?

TATSUTATSU

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