SF

映画「トゥモロー・ワールド」感想・評価‐子供が生まれなくなる近未来映画だ

サマリー


トゥモロー・ワールド 日本語予告

2006年公開のイギリス・アメリカ合作SF映画、監督はアルフォンソ・キュアロン(パンズ・ラビリンス【製作】、ゼロ・グラビティ)、主演はクライヴ・オーウェン(ボーン・アイデンティティ、キング・アーサー、ラスト・ナイツ)である。

この作品は第79回アカデミー賞に脚色賞、撮影賞、編集賞でノミネートされたが、残念ながら受賞はしていない。

物語は2027年近未来のイギリスが舞台となっており、世界的な恐慌と内戦、テロによって人々の生活がすさんでいる。イギリスには大量の不法移民がなだれ込み、政府はこれを武力で鎮圧していた。

そして何が原因なのか良く分からないが、世界中で18年の間、子供が生まれていない。さらに地球上で最も若い青年が殺される事件がアルゼンチンで起こり、民衆の絶望は極限に達していた。

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主人公は反政府組織に拉致され、不法滞在者の「通行証」を手に入れるよう指示される、その組織の首謀者は元妻である。

彼は成り行きにまかせ、一人の黒人女性と逃避行を始める、その女性は子供を身ごもっており、今では唯一の希望と言える女性である。果たして彼は女性と子供を無事に逃がすことが出来るのであろうか・・・・・。

全編を通し重苦しい雰囲気で物語が進行してゆく、近未来がこんなにも過酷に描かれる映像に目を背けたくなるが、あながちあり得ない話ではない。

子供が生まれないと言うことは社会にとってこれほどつらいことは無い。しばらくすれば人類が滅んでしまうかも知れない。敵味方関係なく子供を抱いた女性をマリア様のように見守るシーンは感動を呼び覚ます。

あまりにも暗い映画なので、落ち込んだ時や次の日が出勤日などは避けた方がいいかも知れない。まあ、こんな時代が来ないことを祈って観るしかないね。

お薦めSFパニック映画ベスト20-将来人類は滅亡するかも知れない」もアップしたよ。

 

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ストーリー

ストーリーを紹介すると、英国エネルギー省に勤めるセオ(クライヴ・オーウェン)は出勤途中に、爆破テロに突然襲われ危うく難を逃れる。ロンドンの市街地でも安全なところは無い、人々の心はすさんでおり、今やこんな光景は珍しくない。

彼はあくる日、反政府組織「フィッシュ」に拉致される。リーダーは元妻ジュリアン(ジュリアン・ムーア:フライト・ゲーム)であり、彼女の要求は若い密入国女性の「通行証」が欲しいとのことであった。そしてその娘を何としても海岸まで連れてゆき船「トゥモロー号」に乗せたいのが彼女の要望であった。

セオは渋々仕事を請け負う、しかし通行証はセオが同行しないと効力を発揮しないとのことで、彼も巻き込まれることとなる。

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ジュリアンたちの車に若い黒人女性も含め5名がのり込み、検問所に行く途中暴漢達に襲われ、ジュリアンは亡くなってしまう。

そして一旦「フィッシュ」のアジトに戻る事になった。そこでセオは驚愕の事実を知ることになる。何と若い黒人女性キーは妊娠しているのであった。

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しかもジュリアンを殺した暴漢はジュリアンの右腕ルーク(キウェテル・イジョフォー)の差し金であったことも分かる。彼らはキーの子供が目当てであり、子供を政治の道具として使おうとしていた。

セオは夜中にキー達を連れて、アジトから車で脱出する。そして昔なじみのジャスパー(マイケル・ケイン)の所に逃げ込む。

船「トゥモロー号」は漁船を装っているが「ヒューマン・プロジェクト」に連れて行ってくれる。「ヒューマン・プロジェクト」とはその存在は島国にあり、そこで生活共同体を作っているとのことであった。ここなら子供も無事に育つかもしれない。

セオはキーと子供を無事に船に乗せることが出来るのであろうか、是非映画を観て頂きたい。

ネタバレ

<ここから先はネタバレするので映画を観てから読んでね>

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セオはキーと付添のミリアムを車に乗せ逃避行が始まる。ジャスパーの隠れ家はルークに見つかり、ジャスパーはルークに射殺される。

セオはジャスパーが手筈を整えてくれた目的地に向かって車を走らせる。一旦、不法滞在者の収容所に入ったと見せかけ、これを隠れ蓑にして海岸までたどり着く計画であった。

不法滞在者の収容所でキーは子供を産み落とす。そしてマルカと言う名前の女の導きで、海岸に向かう。途中、反政府組織と警察の衝突や、「フィッシュ」のメンバー達に遭遇する。

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一時はキーと子供をルークに奪われたが、建物が警官隊に包囲され銃撃戦のさ中セオは彼女らを奪い返す。警官隊は子供がいることを発見し、銃撃を停止する。そしてキーと子供を崇めるように見届ける。

セオはキーと子供とボートに乗り込む、そして目的地のブイの所まで来るが、彼は腹部の撃たれたキズで昏睡状態におちいる。そんなところに「トゥモロー号」が霧の中から現れる。

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レビュー

セオは何時でも途中から逃げ出すことが出来る。ところが彼は最後まで目的を達しようと努力する。何故なのか・・・・18年ぶりにこの世に生まれた人類の生命を何としてでも助けたかったのかも知れない。

果たして「ヒューマン・プロジェクト」と言われる生活共同体は、子供を大切に育てられる場所なのか、そして昏睡状態におちいったセオは助かるのか・・・・・・映画では何も答えてくれない。

世界中で子供が生まれない時代は来るのか、地球上が化学物質で汚染されてゆけば、こんな日が来るのかも知れない。

この映画を観ていると、人類の愚かさが伝わってくる、とても恐ろしい映画である。

ところで、私事であるが、長い間入院しており、やっと退院出来た次第である。また今後もお付き合い願いたい。

辰々

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