サスペンス

映画「蜘蛛の巣を払う女」感想・評価:スピーディなテンポで一気に見させる極上のハッカー・アクションドラマ

サマリー


★★★☆☆(お薦め)

2019年日本公開のアメリカ・スウェーデン・イギリス・カナダ・ドイツ合作サスペンス映画
監督 フェデ・アルバレス(死霊のはらわた、ドント・ブリーズ、蜘蛛の巣を払う女
原作 デヴィッド・ラーゲルクランツ「The Girl in the Spider’s Web」
出演 ●クレア・フォイ(ファースト・マン蜘蛛の巣を払う女
●スヴェリル・グドナソン(蜘蛛の巣を払う女
●レイキース・スタンフィールド(スノーデンゲット・アウト蜘蛛の巣を払う女
●シルヴィア・フークス(鑑定士と顔のない依頼人ブレードランナー2049蜘蛛の巣を払う女

映画『蜘蛛の巣を払う女』予告2(2019年1月11日公開)

別の予告編

映画『蜘蛛の巣を払う女』予告(2019年公開)

 

寒くて暗く殺風景な北欧の雰囲気が映画全体を覆う「ミレニアム」シリーズの最新作だ。このシリーズの原作は全世界で9000万部を超えるベストテラーだ。原作者のスティーグ・ラーソンは第一作が出版される前に心臓発作で亡くなっている。彼の死後デヴィッド・ラーゲルクランツがあとを引き継いでいる。

ドラゴン・タトゥーの女

第一部「ドラゴン・タトゥーの女」はミカエル・ニクヴィスト(最近亡くなってしまった)、ノオミ・ラパスで「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」として映画化された。この映画は本国スウェーデンで大ヒットし、ハリウッドでリメイクされている。

ハリウッド版「ドラゴン・タトゥーの女」は監督デヴィッド・フィンチャー、主演ダニエル・クレイヴ、ルーニー・マーラでこれまた世界中で大ヒットした。

今回、第4部「蜘蛛の巣を払う女」の映画化だ。主演にクレア・フォイを起用している。彼女の切れ味のよい演技がすばらしい。でも、世界的には前作ほどヒットしていない。批評家は「ストーリーが単調だ」と手厳しい。

でも僕は物語がテンポよく展開し、息を尽かせないアクションの連続で視聴者を飽きさせない。決して悪い出来ではなくお薦め作品だ。今作品では天才ハッカー、リスベットの双子の妹が出て来る。彼女は敵なのか味方なのか?

あらすじを少し紹介すると。天才的なハッカー、リスベット(クレア・フォイ)はバルデル教授(スティーヴン・マーチャント)から特殊なソフト「ファイアーフォール」をNSA(アメリカ国家安全保障局)から盗み出してほしいと依頼される。

彼はかつて暗号の考案者でNSA核防衛システム分析の責任者だ。今ではNSAをクビになっている。彼の話では「衛星によって、世界の防衛システムが管理され、同じ量子暗号プロトコルで保護されている。」ところが「私が開発したソフト(「ファイアーフォール」)を使えば、主要国の戦術核兵器に簡単にアクセスできる」。

つまり、個人のPCで誰もが「神の力を手に入れることが出来る(防衛システムを突破し核兵器を自由にコントロールできる)」のだ。このソフトは単独ファイルで再現もコピーも不可能、ただ移動させることしかできない。バルデルはこのソフトを作ったことに後悔しているようだった。

リスベットはこの仕事を受ける。厳重なNSAから高度なハッキングによって「ファイアーフォール」を自分のPCに移動させる。しかし、ファイルを開くにはある数字を入力しなければならない。

夜中にリスベットのアジトに何者かが侵入し、PCを奪われる。彼女はとっさにパニックルームに避難するが部屋は爆破される。果たして誰がPCを奪ったのか、そしてリスベットは「ファイアーフォール」を取り戻すことが出来るのか・・・。

その後のストーリーとネタバレ

リスベットは恋人のミカエル・ブルムクヴィスト(スヴェリル・グドナソン)に助けを求める。侵入した奴の顔写真をスマホに送る。彼は雑誌「ミレニアム」のジャーナリストだ。その頃、ワシントンのNSA特別部門からニーダム(レイキース・スタンフィールド)がストックホルムにやってくる。「ファイアーフォール」を取り戻すためだ。

「ファイアーフォール」は盗まれたがこのファイルを開くことはバルデルしか出来ない。複雑なパスワードでガードされているからだ。リスベットは彼を見つけたが彼は殺され幼い息子のアウグストが連れ去られた。しかも、バルデル殺害はリスベットによるものと偽装された。

ミカエルはリスベットを襲った連中がもの凄く危険な「スパイダーズ」であることを調べ上げた。リスベットが送ってきた写真の男は「毒殺者」と言われる恐ろしい奴だった。

リスベットは「毒殺者」に薬をうたれ、朦朧とする意識の中で奴らを追い、アウグストを取り戻す。アウグストはサバン症候群で彼が複雑なパスワードを知っているようだった。

リスベットはミカエルと合流する。彼の調査では今回の一連の事件はリスベットの双子の妹カミラ・サランデル(シルヴィア・フークス)に行き着くとのことだ。カミラは父親の組織「スパイダーズ」を引き継いだようだ。アウグストをサンフランシスコにいる母親のもとに送り返す必要がある。

ニーダムは不穏な動きをした為、スウェーデン公安警察本部、副部長G・グラーネに拘束される。リスベットはニーダムを逃がし、アウグストをサンフランシスコに送ることを確約させる。ところが、アウグストの携帯情報から隠れ場所が特定され、彼は連れ去られてしまう。

リスベットはアウグストに追跡装置を渡していた。これを頼りに彼を取り戻すつもりだ。ミカエルはG・グラーネに協力を要請する。リスベットはカミラのアジトに乗り込み、監視カメラに機器を接続し、仲間に建物内の敵の位置情報をモニターできるようにする。

ところがカミラはリスベットが来ることを知っていてワナをかけ、彼女を捕える。捕えられたリスベットはアウグストに「ファイアーフォール」のパスワードを言うように指示する。アウグストは今、リスベットにしか心を開かない。

アウグストはパスワードを話し、これによって「ファイアーフォール」は開く。主要国の核施設はこれによってカミラがコントロールできる。しかし、この一連の黒幕はG・グラーネだった。ここにグラーネが現われるがカミラは彼女を殺し「ファイアーフォール」を自分のものにしてしまう。最初からこの筋書きだったのだ。

リスベットは殺されようとしていた。その時、建物の向かいの丘からカミラの仲間たちを狙撃する者がいた。ニーダムだ、彼は伝説的なハッカーだが有能な狙撃手でもあった。彼は次から次へと敵を射殺してゆく。

カミラは「ファイアーフォール」の入ったPCを持って車で逃走しようとする。リスベットは後を追いかける。カミラの車は突然道に出てきた彼女の部下に接触し道を踏み外し木に激突する。車から出てきたカミラは大けがを負っていた。

リスベットはカミラを崖へと追い詰める。カミラは「16年間父に虐待を受けてきた、何故助けに来てくれなかったの」と姉をなじる。リスベットは「戻れなかった、父はあなたを選んだからだ」と答える。

カミラは崖から身を投げる。「ファイアーフォール」の入ったPCは崖に残されていた。ニーダムがPCを開くと「ファイアーフォール」は全消去されたあとだった・・・リスベットはバルデルの意志を完遂した。

アウグストは母のもとに送り返される。リスベットはかつてカミラと一緒に昔住んでいた家を焼き尽くし去って行く。

レビュー

こんなヤバいソフト「ファイアーフォール」がリスベットに簡単に盗まれる。このシーンをもっと工夫してほしかった・・・簡単すぎ。

「衛星によって、世界の防衛システムが管理され、同じ量子暗号プロトコルで保護されている。」とは現実問題として事実なんだろうか?高性能コンピューターの一億倍以上の能力を持つ量子コンピューターが開発されれば複雑なパスワードでも瞬時に開けられてしまう。

危険な戦術核システムはネットには接続されてないと考えた方がいい。ところでこのドラマではリスベットが主役になっていてミカエルがわき役だ。両者のやり取りが少ないのが寂しいね。

フェデ・アルバレス監督がクレア・フォイを起用したのが成功につながったようだ。シルヴィア・フークスは「ブレードランナー2049」で怖い殺人レプリカントを演じていたがこのドラマでもサイコパス女を演じている。役が定着してきたか、もうホームドラマは無理かもしれないね・・・。

TATSUTATSU

 

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