サマリー
台湾の巨匠ホウ・シャオシェン監督による8年ぶりの長編映画、撮影期間5年、製作費15億円をかけた大作だ。台湾・中国・香港・フランスの合作で、撮影は中国・台湾・日本で行われている。
日本からは妻夫木聡(つまぶきさとし)、忽那汐里(くつなしおり)が出演するとのことで話題となった作品でもあるね。
映画を観てびっくり、画面が12:5のシネマスコープサイズではなく、4:3のスタンダードサイズとなっている。しかも映画の出だしの8分くらいは白黒だ、監督としては一般受けするより、芸術性を選んだようだ。
セリフがあまりにも少なく物語のスジがよく理解出来ない。また、刺客と言うことでアクションシーンが多いかと期待したが意外と少ない。
この映画を一言で言うと日本の歌舞伎とか能のイメージになるのかな?
黒衣の刺客バックに流れる風景
中国の唐の時代の物語だがオリジナルとのことである。刺客として育てられた娘が、かつての自分の許嫁(いいなずけ)を暗殺するよう命じられる。
朝廷に敵対する程の権力者となった、かつての許嫁と朝廷の道士に刺客として育てられた娘が運命の狭間で揺れ動く。
風景映像が信じられないほどきれいで、撮影に5年の歳月がかかったのがうかがわれる・・・良い絵を撮るには忍耐が必要だ。
黒衣の刺客バックに流れる風景
物語は水がゆっくり流れるようなスローテンポですすんでゆく。
派手なカンフー映画やハリウッド映画に慣れてしまった僕にはやや物足りないが、規格外の映画であることには間違いない。是非自分の目で確かめてみてはどうだろーか・・・。
2015年公開の中国、唐の時代劇、監督・脚本はホウ・シャオシェン(悲情城市、珈琲時光)、主な俳優はスー・チー(トランスポーター、西遊記~はじまりのはじまり~)、チャン・チェン(レッドクリフシリーズ、グランド・マスター)である。
第68回カンヌ国際映画祭にて監督賞を受賞、第52回金馬奨(台湾版アカデミー賞)最優秀作品賞、最優秀監督賞など5部門受賞、そのほか多数の賞を受賞。
季安の正室 元氏(ユェンシ)と子供、女官たち
ストーリー
8世紀の後半、唐王朝の支配は揺らぎはじめ、朝廷は辺境の外敵から国を守るため「藩鎮」(地方組織の名称で、地方軍と地方財政を統括していた)を設置した。ところがその後、力を持った「藩鎮」が現れ、朝廷への離反が始まる。
「藩鎮」の中から、最強の軍事力を備えた「魏博(ウェイボー)」が現れる。そして「魏博」の主公 田季安(ティエン・ジィアン:チャン・チェン)は暴君として、周囲から恐れられていた。
田季安(ティエン・ジィアン:チャン・チェン)
かつて聶隠娘(ニエ・インニャン:スー・チー)は田季安と婚約し、将来結婚する予定であった。ところが田家と元家が同盟を結ぶための政略結婚が行われ、この婚約は破談となってしまった。
隠娘は元家から命を狙われる恐れがあったことから、季安の養母 嘉誠(ジャーチャン)公主は双子の姉 嘉信(ジャーシン)道士に彼女をあずけることにした。
聶隠娘(ニエ・インニャン:スー・チー)
そして隠娘は嘉信道士に「刺客」として育てられる。彼女は道士(朝廷との関係が深い)の命令のもと次から次へと朝廷にじゃまな重要人物の暗殺を行ってゆく。
隠娘は道士から、かつての婚約者 季安の暗殺を命じられる。
西域の国王は青鸞を得たが三年鳴かない、妃は「仲間を見れば鳴くらしい」そして「鏡を使えばどうか」と試したところ青鸞は一晩中鳴いて踊り、息絶えたそうだ。
「魏博」と朝廷の平和の為に、先帝は隠娘と季安の結婚を奨励し、玉玦(ぎょくけつ)を与えた。ところが四年前に先帝が崩御すると、甥の新帝も一年で崩御し、この婚約は流れてしまった。
隠娘は季安の屋敷に潜り込み、季安と一戦交えるが、殺す気はないらしい。季安は隠娘の残した玉玦を見る。
季安は亡き母から玉玦をもらっていた、隠娘も玉玦を持っていたつまり二人は昔、許嫁の間柄となる。
ところが翌年、元家と魏博が同盟を結び、季安の父は元家と結婚させることを望んだ。季安は側室からの養子だ、亡き母は季安の将来のことを考え、隠娘との結婚をあきらめた。
季安は朝廷寄りの考えを持つ弱腰の田興(テイエンジン)を臨清に左遷させる。田興の長い道中の護衛として、隠娘の父親 聶鋒(ニエ・フォン)に同行するように申し伝える。
果たして田興と聶鋒は目的地に着くことが出来るのか。また隠娘は季安を暗殺してしまうのか、是非映画を観てね。
ネタバレ
<ここから先はネタバレするから映画を観てから読んでね>
季安の正室 元氏(ユェンシ)
ところが元氏は密かに、田興と聶鋒の殺害を命じ、追っ手を差し向ける。
彼らは元氏の追っ手に捕まり、田興は生き埋めにされようとしていた。そこに鏡磨きの青年(妻夫木聡)が現れ、彼らの窮地を救う。
そして隠娘も加勢に駆け付ける。
鏡磨きの青年(妻夫木聡)
隠娘は嘉信道士と真剣による試合を行う。隠娘は既に師匠の道士をしのぐほどの剣術の腕前になっていた。
隠娘は道士との真剣勝負によって背中にキズを負っていた。
鏡磨きの青年は隠娘のキズを治療する。
季安の養母 嘉誠は琴を奏で、青鸞と鏡の話をした。青鸞は嘉誠のたとえで、朝廷から一人で「魏博」に嫁ぎ孤独な鳥だった。
季安は側室の瑚姫(フージィ)が大層お気に入りだ、瑚姫や女官たちと音楽に合わせ踊って過ごす。
ところが正室の元氏は呪術師を使って瑚姫を呪い殺そうとする。瑚姫は煙に包まれ、あわやと言うところで隠娘に救われる。
呪い殺そうとされる瑚姫
隠娘は駆け付けてきた季安に瑚姫は懐妊していると告げて立ち去る。
瑚姫が煙に包まれた廊下の近くに人形の御札が落ちていた。そして護衛の者は先の主公が急死したときも同じ人形の御札があったことを季安に伝える。
そして呪術師は季安の手のものによって殺され、当面の危険は排除された。
季安は正室の元氏が瑚姫を呪い殺そうとしたことを知る。そして元氏のもとにおもむき、剣を抜いて怒りを露わにし、その場を立ち去る。
隠娘は師匠である嘉信道士に会う。隠娘は田季安を殺しても世継ぎは幼く「魏博」の混乱は目に見えている、それ故田季安の暗殺が出来なかったことを道士に訴える。
道士は隠娘に「汝の術は既になるも 情未だ断てず」と返答する。隠娘は道士のもとを永遠に去って行く。
そして隠娘は鏡磨きの青年達と共に新羅に向かって旅立つ。
レビュー
冒頭にも書いたが、なんせセリフが少ない映画だから、人物の相関関係が良く分からない。事前に調べておいた方が理解しやすいと思うよ。
妻夫木さん演じる鏡磨きの青年の素性が良く分からない。遣唐使船で日本からやってきた青年だが、田興と聶鋒を助けたり、隠娘のキズを治療したりしている。そして唐から新羅に旅するようだ・・・日本に帰るのかな?
妻夫木聡とホウ・シャオシェン監督
鏡磨きの青年の素性をもっと明らかにしておけば、妻夫木さんがこの映画に出たかいがあると思うよ・・・残念ながら彼の影が薄過ぎだね。忽那汐里さんにいたっては、日本向け版にしか出てないらしい。
目立つのはやはりスー・チーとチャン・チェンの2人だけだね。スー・チーは決して美人とは言えないが、何故か人を引き付けるオーラを持っている。
国内外の映画評論家が、今年度の最高傑作と絶賛していた。僕はTSUTAYAさんに駆け付けDVDを探したがどこにもない・・・何とかみつけたところ、吹き替えなしのDVD1本だけだった。
芸術性と興行成績とはなかなか一致しない。
こころが洗われるように自然がきれいだ、登場人物の衣装も豪華だ、物語もスローテンポで進んで行く、セリフも少ないそして音楽も耳に心地よい・・・・映画を観ていると自然にウトウトしてくる。
でも大丈夫、DVDだからまた巻き戻せばいい・・・あと何回巻き戻せばいいのかな。
TATSUTATSU
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