サマリー
★★★☆☆(お薦め)
2018年日本公開のチェコスロヴァキア製作SFサスペンスドラマ
監督・脚本 カレル・ヤナーク(シャットダウン)
出演 ●ガブリエラ・マルチンコワ(シャットダウン)
●ヴォイチェフ・ダイク(シャットダウン)
AIを搭載したインテリジェント・ハウスは今後世界中に広がって行く。寒ければ自動的に暖炉がつき部屋を暖めてくれる。ゴミが落ちていればお掃除ロボットが稼働する。朝はシャッターを自動的に開け、目を覚まさせ、朝食も用意してくれる。
好きな音楽を流し、シャワーの温度・強さも調節してくれる。さらにセキュリティも万全だ、了解なくては誰も家へは入れない。つまり主人の欲望を何でも叶えてくれるのが最新式のAIハウスだ。その為、家じゅうにセンサーが設置してあり、主人の命令を待っている。
しかし逆に、常にAIによって監視されているようで落ち着かないのも事実だ。僕らはグーグル検索を使い、アマゾンで物を買う。ツイッターやフェイスブックもしかりだ。これらによって個人の嗜好や関心事、考え方などが全て知らない間に個人情報としてサーバーに保存されている。
パソコンをネットにつなげると自分の欲しいものの広告が瞬時に出て来て恐ろしくなる。つまり僕らはネットによって監視されているのだ。このドラマはB級映画だがそこそこ面白い。AIは主人の欲望をかなえようと完璧に稼働する。人間は心の奥底にダークなものを持っている。
AIはパーフェクトを求める。その暗黒部分までAIが叶えようとしたらどうなってしまうのか。例えば、あんな憎い奴、死んでしまえばいいのにと口には出さないが心の中で思ってしまうことがある。それがAIによって実行されてしまったら・・・自分が殺人者になってしまうのか。
話しのスジを少し紹介すると。妻のズザナ(ガブリエラ・マルチンコワ)は芸術家、夫のアンドレイ(ヴォイチェフ・ダイク)はAI技術者だ。
アンドレイは現在開発中のAIを搭載したインテリジェント・ハウスの最終段階責任者だ。彼はボスから開発中のAIハウスの最終テストを依頼される。つまりAIハウスに二人で住み込み、問題点が無いか観察することだ。
妻のズザナは気乗りしなかったが丘の上に立つ豪華なインテリジェント・ハウスを見て気に入る。そして二人は一年間住むことになる。アンドレイは会社にいる時間が多く、家にいるのはズザナだ。
当初は何でもやってくれるインテリジェント・ハウスに満足していたがそのうち「AIが私を誘惑しているような行動を取る」と夫に感想を述べる。アンドレイは「君の欲望を満たすためにプログラミングされてあるからだ」とあまり意に介さない。
ところが、AIが少しずつ暴走し始める。そして彼女を監視し支配するような行動を取るようになる。AIが誰かにハッキングされたのか、それともAIが意志を持ち始めたのか・・・そしてどんな悲劇が待ち受けるのか?
その後のストーリーとネタバレ
ズザナの所にバラの花束が届く。彼女は夫のアンドレイからだと思っていたが彼は知らないと言う。AIが勝手にやったのか・・・。家が何でもやってくれる、家に介護されているようだ。いや、家に飼われているのかも知れない。
ハウスに接続されたAIは音声でズザナに指示を仰ぐ。家の中に誰かが住んでいるようだ。カメラが私の動きを追っている、まるで監視カメラだ。AIは時々ミスをする。コーヒーを100杯も作ったり、不審な人物がいると誤った警告をだす(後で確認すると茂みの中に人がいたようだ)。
ズザナは次第に気味が悪くなってくる。AIが知性を持った動きをする、或いは誰かにハッキングされたのか。AIは試行錯誤を繰り返しながら学習してゆく。また、ズザナに贈り物が届く・・・中身はクッキーだが気味が悪い。ハウスのAIにアルフィと名前を付ける。
アルフィの言う事に逆らうといじわるされるような出来事が起こる。電子レンジの温度が急激に上がり料理が焦げる。ズザナはハッカーではないとすると家が感情を持ったのか、そして自分を誘惑しようとするのか?アンドレイのボスに確認すると「AIの予想以上の能力に自分の脳が拒否反応を示しているかもしれない」と言われる。
アンドレイは家が住人に干渉しすぎる点を危惧し始める。ズザナはアンドレイと家のことでケンカする。そして彼に不審感を持つようになる。そんな時、誰かが彼女のスマホに動画を送ってくる。そこにはアンドレイが会社の女性と抱き合っている場面があった。ズザナはアンドレイが会社で浮気をしているのかと疑惑に押しつぶされる。
誰かが私のスマホに動画を送ってきたことをアンドレイのボスに話したところ。ひよっとしたらハッキングされているかもしれない、あの家から離れなさいと言われる。彼女は家から離れようとしたところ、ハウスに監禁される。
ズザナはハッカーの仕業ではなくてアルフィの意志で自分が拘束されたことを確信する。そして家の中にいたアンドレイが狙撃される。彼は病院に担ぎ込まれ生死の境をさまよう。ズザナはアルフィが暗殺者を雇ったとしか考えられない。
そして、アルフィはスマホ経由で彼女に「家にもどれ」と要求を出す。家に戻らないとアンドレイを死なせると脅される。アルフィは家からネットに侵入し、どこででも彼女を追っかけて来る。彼女は仕方なくアルフィのハウスに戻る。
その時、友人のモニカが助けに来てくれる。しかし、彼女も柵に流された電流によって感電し倒れる。ズザナはスマホから遊びのウイルスアプリをアルフィに送る。アルフィは少しの間、制御不能になる。電源を落とし、一時的にAIを止め、モニカを車に乗せアンドレイの病院へ急ぐ。
その間にも再起動したアルフィはアンドレイを安楽死させようとネットにつながっている医療機器を操作する。病院へ急ぐズザナをアルフィは信号機をいじり、妨害する。病院に到着した彼女はアンドレイの病室に急ぐ。
病室に彼はいなかった・・・死んでしまったのか?その時、主治医が現われアンドレイは容体が回復し、別の病室に移したと言う。危機一髪だった、彼は助かった。
二人は、ネットから遮断されたトレーラーハウスの中で暮らしていた。そこにアンドレイのボスが現われる。アルフィを色々と調べた、原因はプログラム中の共感インターフェースだ。それがユーザーのニーズを察知する。
我々は人間が完璧でないことを忘れていた。人々の心の奥底には「悪魔」がいる。花束のプレゼント、メッセージ、アンドレイの死はズザナが無意識のうちに望んだことだ。君は夫に不満を持ちアルフィは君を喜ばせようとしただけかもしれない。
そう言うと彼は帰って行く。入れ違いにアンドレイが戻ってくる。彼女のお腹には子供が宿っていた・・・。
レビュー
怖い映画だね、実際にはこんなことはありえないかも知れない。しかし、僕らはネットによって常に監視されていることを忘れてはいけない。「スノーデン」が暴露した「国民監視システム(プリズム)」、これはグーグル検索のように特殊なキーを打ち込めば簡単に個人情報が見られてしまう。
僕らはPCを使い、クレジットカードを使い、スイカも使う。そしてフェイスブックなどのSNSも行う。これらは全てサーバーに保存されているからそこにアクセスされれば自分の個人情報が丸裸だ。
では、ネットを利用しない生活をしろと言われても、もう不可能だ。ネットも電気も通じない山奥で自給自足の生活を送らなければならない。この映画の最後に出て来るトレーラーハウスの生活だ。しかし、このトレーラーハウスでさえ衛星カメラに映ってしまう。
つまり、地球上にはもうプライバシーは無いと言う事だ。「国民監視システム(プリズム)」が正しいことに使われることを祈るばかりだ。
TATSUTATSU
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