ミステリー小説

ミステリー小説「家の中を走り回る妖精を見た」あまりの素早さに家ネコでさえお手上げ

ストーリー


日々、暮らしにくくなっている昨今、何によりどころを求めればよいのか。何もしなければ時間だけが過ぎてゆく。かといって、自分にノルマを与えすぎるとメンタルに来てしまう。そんな時の箸休めに「寝る前の5分間で読むチョイ恐ミステリー」でものぞいてみて。

 

この物語は2050年ごろの出来事だ。細胞融合の技術はここ数年飛躍的な進歩を遂げた。色々な動物を掛け合わして多くのハイブリット生物が作れるようになった。

肉も卵も美味しいニワトリ、毛皮と肉が取れる豚、チーターのように早い馬、ネコの様なイヌ・・・・きりがないほど作られた。でもこれらは生殖能力がほとんど無いので自然を壊す心配がない。

また、これらの技術を使ってマンモスを蘇らせることも出来た。実験的には大昔に滅んでしまった恐竜なども爬虫類や鳥類を上手く融合させて小型恐竜までは作ることが出来ている。あとはティラノサウルスのような巨大恐竜への適応が課題だ。

理論的には人間と何かの動物とを組み合わせてハイブリッド作ることは可能だ。が倫理上の問題からこれは世界中で禁止されている。(独裁国家では秘密裏に行われているかもしれない。)

でも、非合法ながら植物と人間の細胞ゃDNAを融合させた観葉植物は大目に見られた。植物には強固な細胞膜がある。これに穴を開け人間の細胞を上手く薬品を使って流し込むのだ。

最近お母さんを亡くされたミチコさんは寂しすぎて仕事も家事もやる気が起こらない。ある日、郵便受けにパンフレットが入っていた。そこには亡くなった親族の細胞を融合させた観葉植物を育ててみませんか。とあった。

半信半疑で詳しい話を聞いてみる。亡くなった方の血液や皮膚、毛髪があればハイブリットは可能ですとの返答を得た。家の中に母の遺伝子を持った観葉植物があれば気分がまぎれる。ミチコさんはこれに飛びついた。

「細胞融合会社A社」に母の髪の毛を送り、半年たった頃に観葉植物が送られてきた。ミチコさんはこれを大切に育てることにした。毎日水をやったり、時々、肥料を上げたりと可愛がった。ふさぎ込んだ精神が少しづつ解きほぐされてゆくのを感じた。

カーテン越しの光と肥料や水を与えることによって少しづつ大きくなってゆく。葉っぱの臭いを嗅ぐとなんとなく母の臭いがした。また、母の好きだった音楽を聞かせると葉っぱが光輝くような気がする。

寝る時も寝室の窓脇に置いておくととても良い香りがして眠りが深くなる。観葉植物は大事に育てれば枯れることは無い。何年でも楽しめる。

ところがある日、つぼみがついているのに気が付いた。つぼみはどんどん大きくなってやがて真っ赤な花が咲いた。おかしいな、観葉植物は一般にはこんな大きな花は咲かないのに・・・まあいいか。

花が散った後、実が一つ出来ているのに気づいた。その実は日々大きくなり7~8センチくらいになった。一見、ビワの実の大きいやつみたいだ。どんな種が取れるのか楽しみだった。

ある朝、実が割れているのに気づいた。中には、果肉とか種が入っている形跡はない。何だろう、ただ空間のみだ。しかし、実の中の香りだけは何とも言えない安らぎを与えてくれる。

次の朝、家ネコのタマが騒々しい。雨戸を開け、ガラス窓も空気入れ替えのため少し開けておいた。タマがうるさい、クモかゴキブリかなんかを部屋の隅に追い込んだようだ。

私はタマの鳴き声がする方に行ってみた。確かに部屋に隅に何かがいた。のぞき込んでみるとあまりの出来事に一瞬で目が覚めた。そこには5センチくらいの小人がいた。或いは妖精かも知れない。

その小人は窓の隙間から外へ逃げて行った。一瞬の出来事だった。あまりに不思議な出来事で気が動転した。しばらく部屋の隅を見つめた。

あの小人は現実なのか、それとも夢の続きを見ているのか・・・自分が混乱しているのが分かった。今、思い返してみるとその小人は母の面影があった。

私は「細胞融合会社A社」に問い合わせしてみた。担当者は「そんなことは絶対あり得ません」と一蹴された。そう言われると、あの出来事は夢かまぼろしだったのか・・・。しかし、間違えなくタマは騒いでいた。

観葉植物は実をならせたためにエネルギーを消耗させたのか一月後に枯れてしまった。なんとも不思議な出来事だった。でもおかげさまで「母の死」は乗り越えることが出来た。

私はあの妖精を思い返す。やはり、何処か母の面影があった。そして幻影かも知れないがもう一度会いたいと願った。だから寝る時にはガラス窓を少し開けておく。朝起きた時に妖精が戻っていてくれることを願いながら・・・。

 

TATSUTATSU

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