サマリー
★★☆☆☆(そこそこ面白い)
2020年12月4日公開のミステリー・サスペンスドラマ
監督 波多野貴文(サイレント・トーキョー)
原作 秦建日子「サイレント・トーキョー And so this is Xmas」
出演 ●佐藤浩市
●石田ゆり子
●西島秀俊
●中村倫也
●広瀬アリス
99分のノンストップ・ドラマとの触れ込みに惹かれて出かけてみたがハズレだった。「12月24日クリスマス・イヴ、渋谷のハチ公前広場に爆弾を仕掛けた」との予告がマスコミに届く。要求は首相との生対談、期限は午後6時だ。
犯人らしい登場人物が数人画面に現れる。その中のいったい誰がテロリストなのか、この謎ときがこの映画のキモだ。だから結末が分かってしまったら面白さが半減する。
当初僕は「ジェイソン・ボーン」のように展開が早すぎてついてゆけないストーリー。そしてテロリストを敏腕刑事が少しの手がかりをもとに追い詰めてゆくドラマを予想した。僕らは敏腕刑事に感情移入して画面を見ているだけでオーケーだと。
ところが、残念ながら僕の推理は外れた。主人公たちに感情移入できないばかりか無理過ぎるストーリー展開に違和感を感じた。現代社会において特に繁華街は監視カメラの海だ。そんなところに大掛かりな爆弾を仕掛ければ直ぐに見つかってしまう。
「パトリオット・デイ」のように大群衆がひしめくボストンマラソン時の無差別テロ事件も監視カメラでテロリストがすぐに特定されている。だからもっと緻密なドラマを作り出さないと観客からはそっぽを向かれる・・・邦画の弱いところだ。
テロリストの目的は金銭ではなく、平和ボケしている日本にカツを入れるためなのだ。ただ、渋谷のハチ公前広場の爆弾破裂シーンは迫力があった。このシーンは栃木県・足利市に3億円をかけ巨大なセットを組み立て撮影している。さらにエキストラの総数は1万人とのことだ。
スタッフ達の意気込みは買ってあげたいがこれだけでは観客をひきつけることは出来ない。出てくる主人公たちを血の通った人物として描いてほしかった。
話のスジを少し紹介すると。12月24日KXテレビにテロ予告の電話が入る。恵比寿に爆弾を仕掛けたと。テレビ局員の・来栖公太(井之脇海)と高沢は現場に駆け付ける。現場には爆弾が設置されたベンチに身動きの取れない山口アイコ(石田ゆり子)がいた。
ベンチに高沢を座らせるとアイコはブレスレット式の爆弾を公太と自分にはめ、ある場所へと急ぐ・・・テロリストから強要されたのか二人は指示に従う。
公太はネットを使って自分自身の顔をあかし、犯人の要求を流す。これでは自分がテロリストに間違われても仕方がない。犯人の要求は「首相との生対談、期限は午後6時だ。」もし要求通りにしないと渋谷のハチ公前広場に仕掛けた爆弾を破裂させると言う。
総理大臣の磯山(鶴見辰吾)はテロリストとは交渉しないと頑なな姿勢を堅持する。こんな状況の中、不審者が現場近くに現れる。一人はIT企業家として世間に名が知れ渡っている須永基樹(中村倫也)。もう一人は大きなバッグを持って周りに、ニラミを利かす初老の男、朝比奈仁(佐藤浩市)だ。
そしてこの一連の犯罪捜査に参加する警部補の世田志乃夫(西島秀俊)と新人刑事の泉大輝(勝地涼)。二人はテロリストの足取りを追う。残り少ない時間は過ぎてゆく。渋谷交差点に多くの警官が配置され、爆弾の発見と野次馬の整理に忙殺される。
果たして、テロリストの予告通りに仕掛けられた爆弾は大爆発を起こすのか・・・。
その後のストーリーとネタバレ
ガセネタだと思われていた爆破予告が現実のものになってしまう。仕掛けられた爆弾が大規模な爆発を起こし、渋谷に集まった野次馬たちを飲み込む。これによって多くの群衆が死傷する。次は東京タワーを爆破するとテロリストはたたみ掛ける。
ビルの屋上に現れた来栖公太を世田は確保するも彼はテロリストではないことが判明する。そんな時、世田の前に高梨真奈美(広瀬アリス)が現れる。テロリストを知っていると言う。
高梨真奈美は須永基樹が犯人だと言う。世田は須永を逮捕するも彼もテロリストではなかった。そして彼の父・朝比奈が真犯人として浮かび上がる。
警察は朝比奈とアイコがいるレストランを包囲、世田は二人と対峙する。その頃、爆弾処理班が東京タワーに取り付けられた爆弾を見つけるが、これを解除するためには「解除コード」が必要であることが分かる。
朝比奈は交換条件を出す。「解除コード」をしゃべる前に、朝比奈はアイコと二人だけででレインボーブリッジまで車を走らせたいと言う。世田は条件を飲み、彼らの車の後を追走する。
朝比奈は車の中でアイコを諭す。テロリストはアイコだったのだ。アイコは「War is Over」とつぶやく。それを聞き取った朝比奈は世田に連絡する。
その時突然、朝比奈は橋のど真ん中で車を右折させ、橋を飛び越え海面に落下・持っていた爆弾を破裂させ海の中に消えてゆく。
アイコの夫は元自衛隊員・里中であった。彼はPKO活動で海外に派遣され地雷処理の任務を負わされる。そこでのつらい体験から帰国後PTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症し日本を恨むようになる。
彼は妻に爆弾の作り方・扱い方を徹底的に教え込み、テロを計画させる。その後首をくくって自殺する。そして里中の上官が朝比奈だったのだ。朝比奈・里中・アイコは繋がっていた。アイコは夫の自殺のショックからテロを実行してしまう。
レビュー
アイコがテロリストとは予想がつかなかった。大ドンデン返し系ではあるものの、あまりに突飛なプロットにあきれてしまう。更にこれだけいい俳優を使いながら彼らが生かされていない。
特に朝比奈役の佐藤浩市と世田役の西島秀俊、彼らは過去を引きずっているのに、その過去があまり描かれていない。だから役に血が通っていないように思う。
もし、東京で無差別テロが起こるのであれば爆弾より、化学・生物兵器の方が可能性が高いような気がする。今、日本はコロナ禍、医療体制の弱さが浮き彫りになっている。
日本がコロナに打ち勝ってもまた、新種の感染症が現れるかもしれない。人類と感染症との戦いは永遠だ。また、テロとの戦いも永遠かもしれない。
TATSUTATSU
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