サマリー
★★★☆☆(お薦め)
2015年日本公開のアメリカ製作 心理サスペンスドラマ
監督 カリン・クサマ(イーオン・フラックス、ジェニファーズ・ボディ、インビテーション)
出演 ●ローガン・マーシャル=グリーン(プロメテウス、インビテーション、スノーデン、スパイダーマン:ホームカミング)
●マイケル・ユイスマン(ワールド・ウォーZ、アデライン、100年目の恋、インビテーション)
●タミー・ブランチャード(インビテーション)
日ごろ僕らが感じる「違和感」、これを上手くサスペンスドラマに盛り込んでいる。人間には自然に備わっている防御本能がある。時にはこの「違和感」を信じて行動することも重要だ。
僕らは現実世界に生きていて、少なからず「違和感」を感じることがある。一番分かり易いのが全く新しい環境(職場)に投げ込まれた時だ。その時、異様な「違和感」を感じ身構える。そしてその違和感の原因が何か探る。
対面する相手が何を考えているのか、この一種の「違和感」で判断できる。自分の周りはすべて敵なのか、それともその中に同じ考えを持つ味方はいるのか・・・。
幽霊、魔物、怪物が全く出て来ないのに、じわじわと恐怖を盛り上げるのに成功している。2015年シッチェス映画祭でグランプリを獲得し、アメリカ・レビューサイト満足度88%を獲得している。
低予算(100万ドル)で好き嫌いが分かれる作品だが、たまにはこんな心理サスペンスドラマを見て結末を予想してはどうだろうか?映画のキーは「人生とは旅のようなものだ、その旅を愛する人と共にしたい」・・・これがこのドラマのヒントだ。
話のスジを少し紹介すると。ウィル(ローガン・マーシャル=グリーン)は元妻イーデン(タミー・ブランチャード)から二年ぶりにホームパーティへの招待状が届く。彼は現在の恋人キーラ(エマヤツィ・コーリナルディ)と車で出かけるのだが、今になって何故イーデンからと不思議に思う。
イーデンはセレブだ。大豪邸に着くと既に多数の友人たちが集まっていた。招待客は8人だ。皆楽しそうに歓談している。元妻のイーデンと現在の夫デヴィッド(マイケル・ユイスマン)が歓迎してくれた。
ウィルは廊下の先の部屋で下半身裸の不思議な女性を見かける・・・何故こんなところに。セイディと言う女性らしい?イーデンはメキシコで彼女と知り合って3人で一緒に暮らしていると言う・・・ウィルは違和感を感じる。
ウィルと元妻イーデンはかつてこの家で暮らし、子供もいたが子供を失くす不幸に見舞われたようだ。イーデンは自殺未遂を起こしウィルが必死に止めた記憶が甦る。いたる窓に柵がついているのに彼は違和感を感じるが彼女は防犯のためだと言う。
イーデンは突然友人ベンの頬を叩く、彼の話が癪にさわったようだ、ウィルはびっくりしてイーデンを見る。過去にこんなことは無かったのに・・・違和感を感じる、ベンも二人(イーデンとデヴィッド)には違和感を感じているようだ。
ウィルの昔親しかったクレアがこのパーティの雰囲気に最も違和感を抱いていた。そんな時にデヴィッドの友人プルイットがやってくる。招待客が全員来たのか、デヴィッドは玄関にカギをかける。ウィルは何故、カギをかけるのかとデヴィッドに突っかかる。
ウィルは電話は通じない、窓に防犯柵、いかがわしい見知らぬデヴィッドの友人が2名紛れ込んでくる、さらに玄関にカギをかける・・・・何かをしようとしか考えられないと恐怖を感じる。
イーデンは子供を亡くしたトラウマを乗り越えたと考えていたが、精神安定剤を飲んでいることをウィルは知ってしまう。セイディがメキシコで裸で生活していた事を聞いて・・・冗談めかして「カルト」ではないかと彼女をからかう。
デヴィッドは「うさんくさい宗教のカルトではない」「大切な人を失くした者が助け合うところだ」と擁護する。皆はカルトの勧誘ではないかとホームパーティの目的を怪しむ。彼は会についてのビデオを見せる。
教祖ジョセフ博士がトラウマの解消方法について述べていた。ところが30代の女性が死んでゆく(自殺と思われる)場面を見せられて、招待客たちは興味から恐怖へと考え方が変わって行く。彼女はガンだと言う事だが自殺するには若すぎる。
4人を除いた他の招待客は皆おかしいと感じていたが害はないと思っていた。招待客は自分自身のことを告白するゲームを始める。そこでプルイットは酔って自分の妻を殺してしまった話をする。
クレアはこの場の雰囲気に耐えられず途中退席して家に帰ろうとする。デヴィッドが謝罪して思い止まるように説得するが彼女は帰ってしまった(実際に帰ったかどうかは不明)。
遅れてきたチョイを含めた7人は皆、違和感を感じるが害はないと思っていた。ところがこのあと大変な出来事が待っていた。それは何か、そしてデヴィッドをはじめとしたカルトの4人組は何を求めているのか・・・。
その後のストーリーとネタバレ
食後のあとみんなで乾杯しようとデヴィッドがお酒をグラスに注いで配る。最後の晩餐のようだ。乾杯し飲もうとしたところウィルが大声を上げて飲むのを止めさせる。彼の防衛本能が働いたのか?
ところが先に一口飲んでしまったジーナが泡を吹いて倒れ呼吸を停止してしまう。あわてて彼女を皆で蘇生させようと心臓マッサージをする。その時、銃を持ったデヴィッドが現われてミゲルの背中に向けて発砲する。デヴィッドは呆然と立ち尽くす。プルイットがデヴィッドから銃を受け取り、次々とその場の人たちを撃ち殺す。
慌てたウィル達は屋敷の中を逃げ回るが玄関にはカギがかかり逃げ出せない。携帯も通じない。プルイットとデヴィッドが招待客たちを殺しまわる惨劇の場面をウィルとキーラは見てしまう。
ウィルはプルイットに襲われるがキーラが金属の棒で彼の頭を何回も叩き、助ける。イーデンが現われウィルに発砲する。そして銃を自分向けて腹を撃つ。デヴィッドはトミーと格闘するが胸にナイフが刺さって死ぬ。
生還できたのはウィルとキーラ、トミーの3人だけだった。ウィルは庭にピンク色のランプがともっているのに気が付く。庭から住宅地を見下ろすと、点々とピンク色のランプがともっていた。そして銃声とけたたましいサイレンの音が聞こえていた・・・。
レビュー
結局、デヴィッド、イーデン、プルイット、セイディの4人は狂信的なカルト集団に入信している。そして自分たちの親しい友人を道連れにして集団自殺を図ったようだ。途中で帰ったクレアも殺されているかもしれない。
ヒント「人生とは旅のようなものだ、その旅を愛する人と共にしたい」は役立ちましたか。ここでの「旅」とは死後の世界へ旅立つことなのか?
カルト教団の教祖ジョセフ博士がインターネットを通じて、全カルトメンバーに集団自殺を呼びかけたと思う。ウィルが庭から教団のマーク、無数のピンクのランプが灯っているのを見てしまう。
世の中には多くのカルトメンバーがいる。つまり心に深い傷を負った者がこんな恐ろしいカルトに簡単に洗脳されて入信してしまう。そんな人間の弱さを感じるドラマだね。
外見からは正常な人間とカルトは見分けがつかない。しかし我々が持っている防衛本能は「違和感」として警鐘を鳴らしてくれる。
こんな恐ろしい出来事はドラマの中だけと思ってはいけない。我々の身近にもひょっとしたら、或いはあなたの隣にも・・・。
TATSUTATSU
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