ヒューマンドラマ

映画「パウロ愛と赦しの物語」感想・評価:暗い宗教映画に陥った残念な作品だ

サマリー


★★☆☆(そこそこ面白い)

2018年12月日本公開のアメリカ製作使徒パウロを描いたヒューマンドラマ
監督・脚本・原案 アンドリュー・ハイアット(パウロ 愛と赦しの物語)
出演 ●ジム・カヴィーゼル(シン・レッド・ライン、パッション、パウロ 愛と赦しの物語)
●ジェームズ・フォークナー(パウロ 愛と赦しの物語)
●オリヴィエ・マルティネス(パウロ 愛と赦しの物語)
●ジョアンヌ・ウォーリー(パウロ 愛と赦しの物語)

映画『パウロ 愛と赦しの物語』予告(11月3日公開)

 

僕はキリスト教徒ではないし「神」もあまり信じてはいない。ただパウロとかルカの名前は良く知っている。この二人はどんな人物だったのか興味があり劇場に駆け付けてみた。

しかし、残念ながら暗く抑揚の少ない宗教映画だった。エンタメや感動を期待している人にはあまりお勧めできないかもしれない。物語は淡々と続く。監督のアンドリュー・ハイアットは出来るだけ史実に近い形で作品を作りたかったようだ。

但しこれは僕の感想で、キリスト教を信仰されている方には、別の違った感じ方をされているかもしれない。パウロにはジェームズ・フォークナー、ルカにはジム・カヴィーゼルが扮している。ジム・カヴィーゼルはメル・ギブソン監督の「パッション」でキリストを演じている。

「パッション」ではキリストがいばらの冠をかぶせられ、鞭で皮膚が破れ血がしたたり落ちるまで痛めつけられる。そして最後は手足を十字架に打ち付けられ死んでゆく。残酷な場面がこれでもか、これでもかと描かれ、見るに堪えなかった。

今回もローマ皇帝ネロによるキリスト教徒迫害が描かれる。キリスト教徒はまるで街を照らす街灯のように、杭に縛り付けられ、油を浴びせられ、生きたまま焼かれる。そして女・子供たちをも公開処刑場で飢えたライオンに食わせる。犠牲者たちは「殉教」の名の元、命を落としてもあの世でキリストとともに生きることを望む。

使徒とはイエスキリストが選んだ弟子12人のことだ。イエス復活の証人であり、またイエスと生前を共にした人々となっている。最も有名な者はペテロ、ヨハネ、ヤコブだ。パウロは13人目の使徒とも言われる。

パウロは新約聖書の著者の一人で、キリスト教の布教に大きく寄与した人物である。彼の経歴は変わっている。かつてはキリスト教徒を迫害していたが回心し、熱心にキリスト教を広めた。

ルカは医者及び画家と言われている。彼は新約聖書「ルカによる福音書」「使徒行伝」の著者とされる人物だ。このドラマで、ローマ皇帝ネロはローマ大火の犯人としてキリスト教徒を徹底的に迫害する。

そしてパウロを捕え牢獄に押し込める。彼は鞭うたれ、斬首の刑を宣告される。ルカは牢の看守に賄賂を贈り、パウロの牢獄にもぐりこんで、彼の言葉を書き写し後世に残そうとする。

ルカはパウロの言葉で世界に希望を与え、キリスト教徒たちを励まそうとするのだが・・・パウロの処刑の日が近づいて来る。

ネタバレとレビュー

パウロを閉じ込めている獄舎の長官マウリティウス(オリヴィエ・マルティネス)はルカを捕まえる。そして彼が書き写したパウロの言葉を読むが、これが何故キリスト教徒たちの心の支えになるのか理解できなかった。

パウロはかつて迫害し殺めたキリスト教徒たちが夢に出て来てうなされる。しかし彼らは夢の中でパウロを許していた。これは尊いキリストの愛の力なのか・・・。

パウロは天からの光とともにイエスキリストの声を聴いた。その後目が見えなくなったがアナニアと言うキリスト教徒の祈りによって、目からうろこのようなものが落ち、視力を回復した。そして回心し、キリスト教徒となった。

長官マウリティウスの娘が病によって苦しんでいた。ローマの神々に祈るがいっこうに効き目が無い。パウロは「ルカは医者だ、彼に見せなさい」と助言する。

マウリティウスはなすべきことはすべてやったが娘を死の淵から救うことが出来ない。彼はワラにもすがるおもいでルカに娘を託す。彼は娘の肺を圧迫している血を抜くと、適切な処置を施した。娘は見る見る回復する。

パウロの処刑の日が来た。マウリティウスは最後に「すまない」とパウロの手を取る。そして斬首の刑は執行された。ルカが書き写したパウロの言葉は多くの人々によって複写され広がる。そしてパウロの弟子テモテにも届く。

パウロは言う「彼ら(キリスト教徒)を救うことは出来ないが彼らを励ますことは出来る」「愛こそが手段だ」・・・彼は死ぬまで非暴力を貫いた。

紀元67年ネロはキリスト教徒迫害に手を染め、彼の死後も250年間迫害は続いた。313年ローマ帝国はキリスト教を公認することになる。現在ローマ帝国は滅んでしまったがキリスト教は全世界に広まっている。

長官マウリティウスの娘のエピソードは創作らしい。かなり昔の出来事であるから色々な解釈があると思う。パウロが回心する場面も描かれている。

キリスト教徒たちへの迫害は残酷でむごたらしい。しかしパウロは斬首の刑で亡くなっている、この理由として彼はローマの市民権を持っていたからだと言われている。

パウロは天国で自分に近づいて来るイエスを尊敬と畏敬の念をもって見るところで物語は終わる。

 

TATSUTATSU

映画「沈黙‐サイレンス-」感想・評価-キリシタン弾圧を淡々と描き心に残る秀作だ

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