ヒューマンドラマ

映画「ベイビー・ブローカー」感想・評価:乳児を横流しするのは善意なのか金儲けなのか

サマリー


★★★☆☆(お薦め)

2022年6月24日公開 韓国製作 赤ちゃんポストを描くヒューマンドラマ
監督・脚本 是枝裕和
出演 ●ソン・ガンホ
●カン・ドンウォン
●ペ・ドゥナ
●イ・ジウン
●イ・ジュヨン

是枝裕和監督最新作『ベイビー・ブローカー』本予告 6月24日(金)日本公開【公式】

 

日本にも「赤ちゃんポスト」はある(熊本の慈恵病院)が韓国にも「赤ちゃんポスト」はある。その場所はソウル市南部の冠岳区にある。キリスト教会の牧師が2009年に設置し、今まで2000人近くの幼い命を救ってきた。教会は赤ちゃんを保護し、捨てた親に会う。そしてあなたは子供を「捨てたんじゃない、守ったんだよ」と勇気づける。

もし、この施設が無ければ赤ちゃんはどうなっていただろうか?それを考えると心が痛む。この「赤ちゃんポスト」を批判する人も少なくない。理由は「捨て子が増える」とのことだ。

しかし、圧倒的多くの人々は支持している。未婚の母やシングルマザーがまだまだ多い世の中だ。子供が欲しくても、出来ない。子供が欲しくないのに出来てしまう。世の中は不公平だらけだ。

話のスジを少し紹介すると。クリーニング店を営むサンヒョン(ソン・ガンホ)は教会に勤めるドンス(カン・ドンウォン)と知り合いだ。二人は「赤ちゃんポスト」にあずけられた乳幼児を横取りし、子供を欲しがる夫婦に謝礼と引き換えに斡旋する闇ブローカーをやっている。

この日も「赤ちゃんポスト」に女性が乳幼児を置きに来る。子供には「いつか必ず迎えに来る」とメモがついていた。サンヒョンはこの子供をこっそり家に持ち帰る。ところが子供の母親ソヨン(イ・ジウン)は気が変わったのか教会に子供を取り返しに来る。

ドンスは慌ててソヨンをサンヒョンの自宅に連れてゆく。サンヒョンは子供を斡旋して謝礼を得るだけで、子供に危害を加えるわけではない。子供は裕福な夫婦のもとで幸せになれるとソヨンを説得する。

そして3人は目的の夫婦に会うのだが、子供が気に入らないそぶりを見せたため、ソヨンは切れる。そして斡旋は失敗に終わってしまった。

その様子をうかがう二人の刑事スジン(ペ・ドゥナ)とイ(イ・ジュヨン)はサンヒョンの車を尾行する。乳児斡旋の現場を押さえ、彼らを逮捕するつもりだ。果たして結末はどうなるか・・・。

重たいテーマのドラマだが、それをコミカルなロードムービーに仕立て上げたのは是枝裕和監督の才能だ。捨て子は乳児院で育てられる。しかしその子供を、夫婦に斡旋した方が、子供の将来を考えると幸せかもしれない。考えさせられる。

サンヒョン(ソン・ガンホ)は妻と娘に逃げられたダメ男だ。娘には時々会えるが、二人からもう関わりを持ちたくないと最後通告を受ける。

また、ドンス(カン・ドンウォン)は自分が「捨て子」であったことが明かされる。乳児ソヨンを見て、これは昔の俺であった。今まで相当苦しんできたが、捨てた母を既に許している・・・と心境を語る。

映画は劇的な最期を迎える。この映画が「赤ちゃんポスト」の存在を広く世に知らしめることになればいいと思う。僕も見ていて考えさせられた映画だ。でも見終わった後、深刻さより、清々しさが感じられた。誰しも重荷を背負って生きている。こんな映画もたまにはいいお薦めだ。

TATSUTATSU

ミステリー小説「未来から来た少年」50年先から戻ってきた彼は世界はもう無いと叫ぶ前のページ

ミステリー小説「タイムトンネル」トンネルの先には何が待っているのか次のページ

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

人気記事

アーカイブ

最近の記事

2024年11月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930  
  1. ミステリー小説

    ミステリー小説「オーブが乱舞する夕暮れの墓場」不吉な前触れかそれとも幸運が舞い込…
  2. ベストテン

    たまらなく美味しそうな料理映画ベスト20!ダイエット中の方は自己責任で
  3. ミステリー小説

    ミステリー小説「夏祭りの怪談」夏祭りの時期になると夢枕に立つ友人
  4. ヒューマンドラマ

    映画「ボブという名の猫 幸せのハイタッチ」感想・評価:薬物中毒から猫のおかげで更…
  5. 海外ドラマ

    海外ドラマ「スター・トレック:ディスカバリー」感想・評価:圧倒的な映像美で甦った…
PAGE TOP