邦画

映画「とんび」感想・評価:父と息子の感動のヒューマンドラマ

サマリー

 

 


★★★★☆(見るべき名作)

2022年4月8日 公開のヒューマンドラマ
監督 瀬々敬久
脚本 港岳彦
出演●阿部寛(市川安男)
●北村匠海(市川旭)
●麻生久美子(市川美佐子)
●照雲(安田顕)
●由美(杏)

映画『とんび』本予告(60秒)

 

さあ、ハンカチをもってこの映画を見てください。昨今涙を流すことが少なくなって、涙腺が退化したと思っている「あなた」向けだ。昭和の武骨男の一代記・・・見てみたらどうでしょうか。

「とんびが鷹を産む」とは「平凡な親が優れた子を産む」のたとえだ。この映画のタイトル「とんび」はそこから取られているが「鷹」の物語ではなくあくまでダメ親父「とんび」の物語だ。でも見終わった後は「タカが鷹を産んだ」映画だと思うでしょう。

昭和一桁生まれは、武骨者が多い。終戦後の混沌とした何もない時代だが今より活気があったと思う。僕の両親も昭和一桁生まれで、一生懸命僕を育ててくれた。この映画を見るとそんなことを思い出す。遠い昔の記憶に胸が締め付けられる。

ストーリーを紹介すると。昭和9年(1934年)に市川安男(阿部寛)は広島県備後市に生まれる。実母は出産後亡くなってしまう。父は安男を捨て、実母の兄・市川夫妻に育てられる。工業高校卒業後に運送会社に就職する。

彼(通称ヤス)は喧嘩っ早くて、いい加減で不器用・照れ屋の酒好き男だ。でもヤスは美人で気立てのいい妻、美佐子(麻生久美子)と結婚し、昭和34年に長男 旭(北村匠海)が生まれる。幸せの絶頂だった。

ところが4年後、事故で幼い旭をかばって美佐子は亡くなる。原因は旭が積み荷から垂れているひもを引っ張ったため上から重量物が落下したものだった。美佐子の死亡の原因は自分(ヤス)のせいだと伝えるしかなかった。

それからヤスは男で一人で旭(アキラ)を育てる。アキラは頭が良く素直で優秀だ。町の皆は「とんびが鷹を産んだ」と陰口をたたく。全く正反対の親子だがヤスはアキラを愛情をもって育てた。

近くのお寺の住職、照雲(安田顕)と妻 幸恵(大島優子)はアキラの第二の両親だ。子供のない照雲はアキラを我が子のように面倒を見た。アキラは町ぐるみで育てられた幸せ者だ。

ヤスはアキラの反抗期に苦労するが、安月給の一部を少しずつ貯金し、アキラのために小さな家を建てた。でも彼は東京の早稲田大学に進学してしまう。そしてヤスと離れ離れになる・・・。

このドラマは他に2回映像化されている。2012年NHK版ではヤス:堤真一、旭:池松壮亮、2013年のTBS版ではヤス:内野聖陽、旭:佐藤健だ。僕は見ていないが、両方とも面白そうだ。時間があれば見ときたいね。

映画を見ていると親は何のために子供を育てるのかなって思ってしまう。子供も一人の個人だ、親の思いのままにならない。でも、離れていても心は繋がっている。

アキラが東京に旅立つ日、ヤスは見送りに行かない。でもアキラの置手紙を見つけたヤスは、急いで駅へ駆けつける。手紙の中には「父への感謝の言葉」がつづられていた。・・・このシーンは目頭が熱くなる。

アキラの親離れ、ヤスの子離れ・・・ヤスもいつかは来ると思っていたが、こんなに早くとは思っていなかったのではないか。分かれとはそんなものかもしれないね。

TATSUTATSU

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