ホラー

「ジェーン・ドウの解剖」映画の感想・評価‐解剖した美しい女性の恐るべき正体


サマリー

2017年日本公開のアメリカ製作 モルグ ネクロテラー映画
監督 アンドレ・ウーヴレダル(トロール・ハンター、ジェーン・ドウの解剖)
出演 ●エミール・ハーシュ(ローン・サバイバー、ジェーン・ドウの解剖)
●ブライアン・コックス(ボーン・アイデンティティーザ・リング記憶探偵と鍵のかかった少女、ジェーン・ドウの解剖)

映画『ジェーン・ドウの解剖』予告編

 

結末が予想できない、新感覚ホラーだ。次に何が起こるのかとドキドキしながら最後まで一気に見てしまう。難を言えば86分と短いことと、結末がややあっけなかった。

死体安置所(モルグ)における若くて美しい女性のドロドロとした死体解剖。そして密閉された死体安置所と解剖室。ここからは誰も逃げられない。皮膚を切り裂き、ろっ骨を取り除き、内臓を切り取る・・・これだけでも気持ち悪い。

ところが彼女の内臓には考えもつかない秘密が見つかる。その秘密とは、何なのか?そして彼女のおぞましい正体が徐々に明らかになってゆく。それが分かったときにはもう手遅れなのか・・・。

ストーリー

バージニア州の田舎町で惨劇が起こる。ある家で3人の一家惨殺死体が発見される。部屋には誰かが外部から侵入してきた形跡が全く見られない。

ところがこの家の地下室から土に半分埋まった形で若い女性の死体(オルウェン・ケリー)が見つかる。バーク保安官はまず、身元不明女性の検視をトミー・ティルデン(ブライアン・コックス)に依頼する。

彼と息子のオースティン(エミール・ハーシュ)は身元不明の女性死体、通称「ジェーン・ドウ」の検視を始める。まず彼女の体の外側を細かく調べる。

外側からは傷跡らしいものは見られない。ところが舌がちぎり取られ、奥歯が一本引き抜かれ、両手両足首が折れていた。また、極端にウエストが細く、コルセットを巻いていた形跡が考えられる(何百年も前ならありうるが)。瞳は驚くことに灰色だ。

膣は切り傷だらけだ。爪の中から泥炭(北の地区に多く見られる)が見つかる・・・全く合理的な説明がつかない。

次に胸を切り開くと死体なのに多量の出血が見られる。ろっ骨を切断して取り除き、内臓を観察する。肺が黒く焼け焦げているようにみられる。内臓には切られた跡があちこちから見られた。こんな殺し方は拷問したとしか考えられない。

胃の中には「朝鮮朝顔の花」と奥歯がくるまれた布が見つかる。「朝鮮朝顔の花」は北部で繁殖し大昔、麻酔に使われた。彼女は北部から来たと思われる。

布には変わった模様が描かれていた、埋葬布なのか。抜いた歯を布にくるみ飲み込ませたのだ。宗教儀式の可能性がある。さらに皮膚の下には何かの模様が描かれてあった。

その時、解剖室の扉がひとりでに閉まり、天井の蛍光灯が破裂する。部屋は真っ暗だ。そして安置してあった他の死体が消えていた。部屋から出てこの建物の非常口から出ようとしたが出られない。携帯も使えない、固定電話からも何故かつながらない・・・助けが呼べないことに二人は愕然とする。

廊下には死人が歩いてこちらに向かってくる・・・死人の足に結びつけたベルが鳴っているからだ。そして突然ドアを開けようと激しく揺さぶる。親子は必死にドアを押さえる。果たして二人は死人に襲われるのか、そして「ジェーン・ドウ」はいったい何者なのか・・・。

ネタバレ

二人は死体つまり「ジェーン・ドウ」が原因ではないかと思い始める。トミーは解剖中に手首にケガをしていた、その傷を洗面所で洗っていたところ「灰色の目をした何か」に襲われ腹部に打撲を受ける。

彼らは仕方なく原因がつかめるかと「ジェーン・ドウ」を解剖していた部屋に戻る。彼女の体は手術台の上にあり、摘出した内臓は腐敗が進んでいた。彼女の体の中では内臓が保存されていたのだ。

彼女を火葬にしようと部屋からの搬出を試みたが扉が開かない。近くの斧で扉を壊そうと叩き付けたところ隙間から解剖が終わった後の死体が外からこちらを見ていた。

オースティンはとっさに消毒用のアルコールを彼女にかけ火をつける。火は部屋を焼き尽くすほど広がり慌てて消火器で消す。ところが彼女の体は焼けるどころかなんの変化も無い。

その時、扉が何故か開く二人は急いで地上へのエレベーターに向かうが、なかなか降りてこない。死体は鈴を鳴らしながら近づいて来る。エレベーターが開き中に急いで乗り込む、しかし今度はドアが閉まらない。

電源が落ち、ドアは半分開いたままだ、そこに現れた動く死体に斧を振り下ろす。ところが死体に見えと思った者はオースティンの恋人エマ(オフィリア・ラヴィボンド)だった。

エマを抱きかかえ泣き叫ぶオースティン。エレベーターが動きはじめ父は息子を強引に中に入れるがやはり途中で止まってしまう。オースティンは解剖室に戻って彼女の死体をもう一度調べ死因を特定出来れば助かるチャンスがあると考えた。

一か八か二人は、解剖室に戻る。途中、廊下は煙が立ち込めその中でトミーは何者かに襲われ体中に傷を負う。やっとたどり着いた二人は彼女の死体の頭部を切開し脳の状態を見る。

ところが脳サンプルを顕微鏡で見たオースティンは驚きの声を上げる。脳は生きて活動しているのだ、つまり彼女はまだ生きている。

内臓から出てきた布を折り曲げ調べるとそこに書いてある文字はレビ記20章27節と読める。レビ記を調べると「霊媒や口寄せをする男や女がいたら必ず殺さねばならない」と書かれてあった。

1693年、つまり17世紀のアメリカ北東部ニューイングランドだ。レビ記の続きは「その者たちは魔女だ自身の血の責任を負わせよ」と書かれてあった。

二人の推論では、セーラムの魔女裁判によって無実の女性が告発された。普通は絞首刑や火刑にされるが、彼女の場合は残酷な方法で拷問された。そして儀式で魔女を葬り去ろうとした結果、逆に無実の女性を本当の魔女にしてしまった。

彼女は痛みを未だに感じており、周りにいる人間に痛みを感じさせようとしている。相手は誰でもいい、彼女が行う儀式によって近くにいる人間に復讐しようとしているのではないか・・・。この秘密を暴いたのは我々だけだ。

トミーは彼女に向かって、息子を助けてくれお願いだと懇願する・・・自分の体を犠牲にする覚悟だ。その時トミーの体は彼女が受けた痛みを感じて苦痛に顔がゆがむ。両手足は骨折し、内臓もえぐられる痛みだ。あまりの痛さにトミーは殺してくれと息子に何度も頼む。

オースティンは涙を流しながら父の胸をナイフで突き刺し、楽にする。その時電燈が付きはじめ、外からバーク保安官の声が聞こえる。彼は非常階段を上り地下から外部への続く扉を開けようとするが開かない。

この声はバーク保安官のものではないと気付く、階段の下を確認し振り返ると父の亡霊がそこに立っていた。オースティンは驚いて階段から床に落下して絶命する。

次の朝、バーク保安官がやってきて惨劇を見ることになる。何が起きたのかさっぱりわからない。保安官は「ジェーン・ドウ」の遺体をバージニア・コモンウェルス大学へ運べと指示を出す。

レビュー

結局、結末はみんなあっけなく死んでしまった。「ジェーン・ドウ」は体こそ動かせないが魔女だったんだ。オースティンを生還させると、魔女であることがバレてしまう。魔女としては全員殺すことが鉄則だ、しかも痛めつけて殺す。

なんともやりきれないドラマだ。彼女の周りにいる生きた人間は幻覚を見せられたようだ。彼女が起き上がって動かないことが返って恐怖を盛り上げる。

まあ、ホラーとしては成功したように思う。大昔の魔女裁判は本当に残酷なことをしたものだと思う。多くの無実の女性が犠牲になっている。

実際にあった出来事としてセーラムの魔女裁判が有名だ。200人近い女性が魔女として告発され。19名が縛り首、1名が拷問によって圧死、5名が獄死したらしい。この1名の拷問が映画の題材として使われたのか?

この裁判はその異常性が指摘され、州知事によってすぐに収束させられたが、群集心理や集団ヒステリーの怖さが浮き彫りとなった。実際に史実として残っているからチビルほど怖いし、眠れなくなるね。

TATSUTATSU

 

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