サマリー
2013年公開のイギリス映画、心温まるヒューマンドラマで監督はスティーブン・フリアーズ、主演は「007」M役で有名なジュディ・デンチです。
原作は、マーティン・シックススミスのノンフィクションで、第86回アカデミー賞に4部門ノミネートされています。しかし残念ながら惜しくも賞を逃しています。
舞台はアイルランド、話の内容は18才の時、若い男と過ちを犯し妊娠してしまったフィロミナ・リー(ジュディ・デンチ)は、未婚の母として修道院に入れられ、男の子を出産します。
そして息子アンソニーが3才の時、アメリカの裕福な家庭の里子に出されます。それから50年の間息子のことが頭から片時も離れず、死ぬまでに会いたいと願います。
フィロミナの娘ジェーンは知り合いのジャーナリスト、マーティン・シックススミス(スティーヴ・クーガン)に、話を打ち明け、協力を要請します。
彼は、話を記事にすることを条件に承諾します。そして彼とフィロミナのアメリカでの息子探しの旅が始まります。
この映画はジュディ・デンチの演技に支えられています、芯のしっかりした真面目で敬虔なクリスチャンの老女を控えめで落ち着いた演技で感動させます。
また、スティーヴ・クーガンはコメディ出身ではありますが、頭が良くて物腰の柔らかいジャーナリストをみごとに演じ、このコンビはぴったりで見ていて楽しくなります。
実話であり非常に重いテーマですが、観終わった後にそんなに落ち込まなくてすむのはこの二人の演技のおかげだと思います。
フィロミナの若い時のエピソードや、生前の息子のビデオが挿入され、胸にジーンと来ます。是非この秀作をじっくり観ることをおすすめします。
ネタバレ
アメリカに来てマーティンはフィロミナの息子をすぐに発見してしまいます。彼女の息子はマイケル・A・ヘスと名乗り、レーガン、ブッシュ両大統領の政治顧問まで出世していましたが、8年前に亡くなっていました。
また息子がゲイであることが分かり、死因はエイズでした。(彼女は息子が繊細で感受性の強い子供であったことから、やはりそうかと納得します。)ところがさらに色々なことが分かってきます。
修道院が何故里子の消息を話したがらないのか、実は里子をお金で売っていたことが判明します。その証拠は既に焼却された後でした。
また、未婚の母たちは修道院で休みなく4年間働かされるのが義務でした、さらにセクハラやレイプなど悲惨な出来事もあったようです。
また、息子が死ぬ間際、修道院に母親を探しに来ていたことも分ります。・・・修道院の対応があまりにもひどくマーティンは激怒します。
シスター・ヒルデガードはセックスは悪だと言います、そして罪を犯した彼女たちは永遠のむくいをうけるべきだと言っています。
修道院の庭の片隅にはお産で亡くなった多くの女性の墓が打ち捨てられており、マーティンはショックをうけます。
しかし、フィロミナは息子のことを何故か許します。そして息子の墓が母がいた修道院にあることも分ります。(息子を自分がもし育てていたら、あんなに立派になることはなかっただろうとも思っています。)
彼女はこれらの出来事を一旦は公表したくないと言いましたが、彼女の様なつらい思いを同じ境遇の人にあじあわせたくなくて、実名での公表にふみきります。
勇気のある行動ですね、彼女と息子は長い間お互いを探しあっていたことが分かります、それを阻んだ修道院の対応を大変疑問に思います。・・・・・・いったい宗教とは何でしょう、考えさせる映画ですね。
辰々
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