ストーリー

日々、暮らしにくくなっている昨今、何によりどころを求めればよいのか。何もしなければ時間だけが過ぎてゆく。かといって、自分にノルマを与えすぎるとメンタルに来てしまう。そんな時の箸休めに「寝る前の5分間で読むチョイ恐ミステリー」でものぞいてみて。

世の中には変わった人間がいるようだ。僕はコンサルタント業や作家業、株の取引き業などで生計を立てている。ところがどこから聞きつけてきたのか、超常現象(幽霊、宇宙人、UFO、都市伝説など)に関する解明を依頼されることがある。
今回も「幽霊が見える少女」の原因究明に駆り出された。病気によって一週間、高熱に悩まされ一時昏睡状態に陥った。やっとのことで回復した少女が「幽霊が見える」と言い始めた。
これがSNSで有名となりテレビなんかで取り上げられた。彼女の視野に現れる物体は果たして何なのか究明が行われた。彼女はもともと感受性が高く、どちらか言うと人づきあいが悪い。孤独を好む性格だ。
彼女は人間に覆いかぶさった物体が見える。しかし、誰しも彼女の目を通して物を見ることは出来ない。テレビでは心霊研究家・超能力者・霊媒師などが出演し各人のコメントを出すに至った。

更に今回「科学的分析」と称して。彼女が見て「幽霊だと思われる物体」のスキャンが行われた。赤外線や紫外線、可視光線による画像を詳細に撮影。そこに写っているものの判定を行った。さらに温度変化や電位の変化など考えられる方法を駆使した。
彼女が見ている人間に覆いかぶさった幽霊を自身で絵にかいて見せてくれる。覆いかぶさった幽霊と思われる物体には「色」があるのが今回の特徴だ。色は多岐に及ぶ、白系統・赤系統・緑・黄色・黒・・・など人によってかなりの色のばらつきがあった。
詳細分析の結果、彼女が見ているモノには実態がない。何らかの霊体エネルギーがあれば検出できるはずだ。ところがどんな分析方法を試みても何も見つからなかった。結論として彼女の頭の中に浮かぶ画像を目で見ているように錯覚しているかもしれない。
中には彼女が嘘をついているのではないかと疑う人まで現れた。あれだけ広がっていたSNS上での話題もしぼんでしまった。しかし、彼女はいまだに見えると主張し続けた。原因が知りたいと・・・結局、この件は僕らの所に来た。彼女を仮にマリさんと呼ぶ。

僕は推論を立てる。「幽霊だと思われる物体」は彼女の「脳」が作り出している幻覚だ。しかし、その幻覚が「対面する人によって異なる」・・・僕は「色」に注目した。
僕はあらかじめ繁華街を歩きながら道行く人々の動画をこっそりとスマホで撮影した。その動画のの中から色々な人々をピックアップして100人程度にまとめた。男・女・子供・若人・老人・人相の悪い人・誠実そうな人・・・僕が考えうる個性的な人々をまとめた。
僕は親友のリュウを呼んで事前打ち合わせをする。リュウには特殊能力はないが、彼には強力な守護霊「あけみ」が取り憑いている。「あけみ」は女性の姿で現れ、リュウの手を握る。そうすることによって、「あけみ」が見ているものがリュウにも見えるようになる。
マリさんを呼んで僕がピックアップしてきた100人の人間を大きなモニターに映し出す。リュウはマリさんの手を握る。そして僕はもう片方のリュウの手を繋ぐ。

モニターに映し出された人々が次々と現れる。僕らはマリさんが見た人々に「幽霊だと思われる物体」が覆いかぶさるのを確認できた。つまりマリさん見ている映像を「あけみの力を借りて」我々も見ることが出来たのだ。(「守護霊と旅する男」を参照)
ただ残念なことに僕は霊力が弱いのか、かすかに色が判別できる程度だ。僕が見た映像には「写っている人の輪郭に5cmくらいの薄い色」かぶさって見えた。たぶんリュウにはもっと鮮明に見えてるはずだ。
僕はリュウが見た色の報告をパソコンに入力してゆく。100人の人間を見終えた時には「どっと」疲れた。これらのデーターをAIに分析させよう。分析には数日かかったがある程度僕にはわかったような気がする。
再度マリさんを呼んで結果を伝えた。「あなたが見ている人に覆いかぶさる幽霊のような物体」は「幽霊」ではない。マリさんは目で見ている人々の性格を「色」で認知している。つまり「共感覚(シナスタジア)」の一種と考えている。

「共感覚(シナスタジア)」とは「文字に色を感じる」とか「音に色や形を感じる」など「ある一つの感覚や認知に対して、別の種類の感覚が自動的に引き起こされる知覚現象」のことである。
マリさんは見る人の性格を「色」で判断している。嫌いな人は「どす黒い赤や黒」・・・つまり見るに堪えない「色」を感じる。わりと付き合いやすい人は「白系統や緑系統などさわやかでソフトな色合い」だ。
人間は単純ではないので微妙に「色のバリエーション」が人それぞれに異なっている。全く同じ色の人物は少ない。但し、よく分からなかったのは「黄色系統の人物」だ。
僕が見てもさわやかな好人物に見える。何故、ちょっとドキッとする「黄色」なのだ。マリさんは「彼は二重人格者です」と答える。つまり羊の皮を被った狼のことですか?

「そうです。私には分かるんです」「どんなに表面を繕っても中身が見えてしまう」。私たちのやり取りの中でマリさんは「色のついた幽霊はその人物の中身」であることを再認識させたようだ。彼女は薄々感じていたが第三者の意見が聞きたかったようだ。彼女は晴れ晴れとした様子で帰って行った。
暫くして、僕はリュウに次の話をした。マリさんがリュウの手を握った時、目が潤んでいると感じた。そしてリュウの姿の縁取りは「水色」になっているのを僕は間違いなく見た。
つまり「恋は水色」と言うことだ。ところでマリさんがここに遊びに来たいと言っている。どうするリュウ・・・。
TATSUTATSU





















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