ストーリー

日々、暮らしにくくなっている昨今、何によりどころを求めればよいのか。何もしなければ時間だけが過ぎてゆく。かといって、自分にノルマを与えすぎるとメンタルに来てしまう。そんな時の箸休めに「寝る前の5分間で読むチョイ恐ミステリー」でものぞいてみて。

1907年にアメリカのダンカン・マクドゥーガル医師が魂の重さは21gと主張している。彼は死ぬ瞬間の体重差を精密に測定していてこの数値を導き出した。人は死ぬと21g体重が減るそうだ。(映画にもなっている)
しかし、残念ながらこの説は科学的に証明されていない。人間の「死」をどの段階で定義するのか・・・あいまいだ。もし、人間の体に「魂=意識」が存在する。と仮定するとそれは「死」によって解放され、空中に漂う。
解放された「魂=意識」は何処に行くのだろうか・・・。空気中で蒸発してゆくのか、或いは「幽霊」のような物体となって彷徨うのか・・・分からない。
人間のように高等な生物は肉体と分離された「意識」を持っていてもおかしくない。そして人間の「脳」は単に受信機であって、「意識」は外部に存在するという「外部意識説」なるものもある。しかし、ここでは「魂=意識」は肉体の中に存在することになっている。

では本題に戻る。この話は僕が投資家として世間に知られ始めた頃の出来事だ。いつもながら超常現象(幽霊、宇宙人、UFO、都市伝説など)に関する解明を今回も依頼された。僕は暇ではない、しかもほとんどがボランティアだ。
今回の依頼人はとりあえずハナさんとしておく。彼女は謝礼5万円を払うと言ってくれているが、実際には10倍以上の経費がかかる。今回も謝礼は受け取らず、ボランティアでやることにした。
ハナさんは少し前に母親を亡くしている。葬式が終わって暫くしてから不思議な夢を見るようになった。母が夢の中に出てくるのだ。しかも、寂しい顔をして原っぱにたたずんでいる。時には涙を流す。
ハナさんは母の霊がまだ成仏していないのではないかと考える。この世の何処かに漂っている。この夢は一週間ほど続いた。いたたまれなくなった彼女は僕を頼ってきた。

僕はかつて「魂」の研究をしたことがある。「魂」とはどんな物質なのか? あらゆる文献を調査したところ興味ある研究がみつかった。
かなり古い研究であるがそれを紹介しよう。ある科学者が「魂」を閉じ込めてその物質を解明しようとした。実験室の中に金属の金網で丸く囲んだ空間を作る。網の空間の真ん中に死刑囚の遺体を置く手術台を設置する。
死刑囚が運び込まれてその台に乗せ結束バンドで固定する。死刑囚は毒物を注射され手術台に横たわる。研究者は金網に電気を流して磁場を作る。死刑囚が亡くなると同時に「魂」が金網で丸く囲んだ空間に閉じ込められたとしている。
そして、短時間ではあるが「魂」の閉じ込めに成功したと記されている。閉じ込められた「魂」はどんな物体なのか。しばらく研究した。「魂」は目に見えない。ある数値だけが「魂」が存在することを証明した。

「魂」の大きさは高さ1.5m 直径0.5mほどの円柱状であった。何故それが分かったのか。金網の中の空間の温度を測定してゆくと周囲の空間よりもかなり低い場所があり、それが円柱状の空間だったらしい。息を吹きかけるとその部分が白く浮かび上がる。
その後、実験を継続しようとしたが、トラブルで電源が落ちてしまった。そして金網の空間には何も検出できなくなったそうだ。結構、ウサンクサイ研究論文だが何故か僕はこれにはまった。
僕はサーモカメラを精度よく空間の温度が測定できるように改良した。また、「魂」が磁場によって閉じ込められるならある程度の電荷を持っている。僕は「魂=霊体」を空間においてはマイナスの電荷を持った負電荷物体であると推論した。
僕は親友のリュウをお供に日本各地の「心霊スポットめぐり」を実行した。約100か所近くをまわってみたがほとんどはガセネタだ。でも数か所は「ひょっとしたら」・・・と思わせる場所があった。

その一つは廃病院となった大きな建物の地下、かつての「死体置き場」だ。ここの一室にサーモカメラと電位計を持って入った。測定を始めた時、地下室の隅っこにサーモカメラが反応した。
カメラの先には外部よりー3℃ほど低い温度の円柱状の物体があった。その物体には電位計も反応した。僕は鳥膚が立った。その円柱状の物体は我々の所に向かってくる。ほんの1mの所までくると僕らに覆いかぶさろうとした。
僕はその時、確かに空間に光る二つの目を見た。幻ではない、何かを訴えているようにも見えた。僕とリュウを「守護霊あけみ」がバリアを張って守ってくれたのだ。前にも話したがリュウには強力な守護霊あけみが取り憑いている。(「守護霊と旅する男」を参照)
僕らは急いで地下室から逃げ出した。あのままあそこにいると邪悪な霊に乗り移られるかもしれない。こんなに恐ろしい体験は久々だ。僕はこういうことには慣れているつもりだが今回は危なかった。

話を戻すと、ハナさんのお母さんの霊をなんとしてでも見つけないといけない。僕は彼女の夢に着目した。夢の背景には場所を特定するものがあるはずだ。
ハナさんは夢の背景を覚えていた。牧場のような広い原っぱだ。彼女は母が父と出かけた最後の旅行を思い出す。母は北海道旅行で牧場で飲んだミルクがとても美味しかったと言っていた。
慌てて母のアルバムを探してみる。そこには両親が写った牧場の写真があった。「ここだ」とハナさんは叫んだ。そして僕と一緒に北海道へ飛んだ。
目的の牧場についてからサーモカメラと電位計を駆使し、「魂=霊体」を探した。3時間ぐらいは探し回ったと思う。やっと見つかった。

その場所は「折れ曲がった電気柵に囲まれたちょっとした空間」だった。電気柵が帯電した金網のような働きをして「魂=霊体」を閉じ込めていたのだ。
放牧した動物が逃げないように広場に電気柵を設ける牧場がある。最近はヒグマ避けとして高電圧の柵もあるようだ。僕は牧場主に頼んで数分程度電気を落としてもらうこととした。
「折れ曲がった電気柵に囲まれたちょっとした空間」の中をサーモカメラで確認したところ、低温を示す空間は無くなっていた。僕らは「魂が解放された」と判断した。それ以来ハナさんは「母の夢」を見なくなったそうだ。
この話をリュウにしたところ、「私だったらすぐに解決できたよ」と鼻でせせら笑われた。僕は「ムカッ」ときたがまあその通りだと観念した。

実は親友のリュウはまったくもって生活力がない。今でも「拝み屋」と称して1回5000円で厄払いをしているが当然食えない。しょうがないから僕とリュウの名義で株式会社を立ち上げ給料として僕が毎月生活費をわたしている。本当に世話の焼ける奴だ。
ところで僕はハナさんに好かれたらしい。「また、御一緒に旅行に行きませんか」と電話が来た。どう、返事をして良いか頭が痛いことだ。
TATSUTATSU





















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