サマリー
★★☆☆☆(そこそこ面白い)
2018年日本公開のアメリカ制作ホラードラマ
監督・脚本 トレイ・エドワード・シュルツ(イット・カムズ・アット・ナイト)
出演 ●ジョエル・エドガートン(エクソダス:神と王、レッド・スパロー、イット・カムズ・アット・ナイト)
●クリストファー・アボット(イット・カムズ・アット・ナイト)
●カルメン・イジョゴ(イット・カムズ・アット・ナイト)
未知のウイルスによる感染がホラー仕立てになったドラマだ。賛否両論ある。批評家からは絶賛されているが一般的な観客には受けなかったようだ。
結末があっけなく終わり、森の奥から恐ろしい何かが現れるのかと期待したが尻切れトンボだった。恐怖の盛り上げ方は前半申し分ないが後半からは残念ながら下降気味だ。心理サスペンスドラマの王道をとらえてはいるもののある意味惜しい作品かもしれない。
このドラマを見ていると「エボラ出血熱」を思い起こされる。アフリカ中央部のコンゴ共和国、スーダン、ウガンダ、ガボンなどで大発生している恐ろしい病気だ。
エボラウイルスによる感染症は実に致死率が50%を超える(90%を超えることもある)。感染源は森の中の野生動物(チンパンジー、ゴリラ、オオコウモリ、サルなど)との接触だ。感染者の血液や体液との接触でどんどん広がってゆく。
森は怖い、何が潜んでいるのか分からない。このドラマのコピーは「それ」は夜にやってくるだ。「それ」とは何なのか、果たして1家は生き延びることが出来るのか。
話の筋を少し紹介すると。謎の「感染」から森に逃れてひっそりと暮らすある1家。しかし妻サラ(カルメン・イジョゴ)の父バド(デヴィット・ペンドルトン)が謎の感染症に罹ってしまう。
夫のポール(ジョエル・エドガートン)はやもなく義父を射殺し遺体を燃やす。この厳しい現実を息子トラヴィス(ケルヴィン・ハリソン・Jr)に見せる。トラヴィスは大きなショックを受け精神的ダメージを負う。
ある日、男が夜に家に入り込もうとする。ポールはその男ウィル(クリストファー・アボット)を捕まえる。ウィルには妻のキム(ライリー・キーオ)と息子アンドリュー(グリフィン・ロバート・フォークナー)がいた。
ウィルはポールに一緒に協力して暮らそうと提案する。ポールは了解し、2家族は順調に暮らし始める。順調にゆきかけた共同生活がある日、愛犬が行方不明になってしまう。次の夜戻ってくるが何者かに傷つけられ瀕死の状態で見つかる。
さらに「それ」に感染しないために「夜になったら入り口の赤いドアは常にロックすることが」が取り決められていた。しかし、そのドアが開いていた。果たして誰が開けたのか、そしてそれによって誰が「感染」したのか。
その後のストーリーとネタバレ
トラヴィスは悪夢を見る。おじいさんが口から血を流し自分の前に現れる。ウィルの妻キムが夜中にベッドに現れ、口からどす黒い血を流し、トラヴィスの口に流し込む。彼はあまりの恐怖で飛び起きる。
トラヴィスは極限状態で精神がもう耐えられない。夜はよく眠れない・・・日々何かに襲われそうな恐怖が常に付きまとう。彼はウィル1家の様子がおかしいのに気づく・・・誰かが感染したかも知れない。
父のポールを起こし、ウィルのところに行く。ウィルは「食料を半分もらってここから出てゆく」という。アンドリューが感染したようだ。
ところがウィルとポールは成り行きから取っ組み合いのケンカが始まる。慌てたトラヴィスはウィルを撃ち殺す。そしてポールはキムとアンドリューを射殺する。
しかし、感染したのはトラヴィスだった。遺体を火葬し、ポールとサラは気が抜けたようにテーブルを挟んで見つめあう。
レビュー
「それは夜にやってる」「森に潜む何かがやってくる」とさんざん怖がらせておいて結局何も現れなかった。「それ」の正体は極限に置かれた人間の「狂気」ではないのか。
愛犬を殺害したのも赤いドアを開けたのも狂気に駆られたトラヴィスの仕業だと思う。トラヴィスの神経状態は極限を超え夢か現実か判断できなくなっていた。さらに彼は夢遊病の気もあったのか。
人間の狂気がウィル1家を皆殺しにした。後味の悪いドラマだ。ポールは家族を守ろうと必死にふるまうがそれがことごとく裏目に出る。結局トラヴィスは病気に侵され死んでゆく。
トラヴィスは何から感染したのか。森から戻ってきた愛犬か、それともアンドリューなのか(アンドリューが感染したかどうかは映像には出てこない)?もうすでに祖父から感染していたのか・・・答えはない。
心理スリラードラマとしてはあまりにも謎が多い、視聴者はフラストレーションを抱えこんで終わってしまう。何らかのヒントか伏線を残しておけば面白かったのに・・・。
TATSUTATSU
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