邦画

映画「凪待ち」感想・評価:スーパースター香取信吾がギャンブル依存症の最低な男を演じる

サマリー


★★☆☆(そこそこ面白い)

2019年6月公開のサスペンスヒューマンドラマ
監督 白石和彌(凶悪。日本で一番悪い奴ら、孤狼の血凪待ち
出演 ●香取信吾(西遊記、座頭市THE LAST、ギャラクシー街道、凪待ち
●恒松祐理(凪待ち)
●西田尚美(OUT、図書館戦争、凪待ち
●吉澤健(残穢凪待ち
●音尾琢真(孤狼の血凪待ち
●リリー・フランキー(凶悪、海街diary、美しい星、ラプラスの魔女、万引き家族

香取慎吾主演!映画『凪待ち』予告編

 

香取信吾がバイオレンスの巨匠、白石和彌と組んだ話題作だ。信吾は歌って踊れて演技も出来るスーパースターだ。その彼がギャンブル依存症の最低の男を演じる。このギャップがたまらない魅力を生む。

人生のどん底まで落ち込んだ人間の「喪失と再生」の物語だ。舞台は震災からの再生が続く石巻、監督も言っているように主人公の再生と石巻の再生がシンクロする。

ただ、白石和彌監督が「香取信吾と言うブランド」を迎えてやや浮足立っている印象を受けた。彼以外の登場人物の描写が薄っぺらいのだ。それにサスペンス要素が思う程多くない。

そこにいるだけで周りの者を傷つけてゆく主人公。彼は疫病神なのか?そして凶悪事件が起きる。彼は自分のせいだと酒とギャンブルにのめりこむ。こんなつまらない男でも助けようとしてくれる人たちがいる。

賛否の別れるドラマだ。香取信吾ファンにはお薦めだが、彼が笑うシーンが無い。気の重くなるシーンを見続けさせられると主演に香取信吾を選んだ理由が分からない。もっと信吾の魅力を前面に出しても良かったのでは・・・。

話しのスジを少し紹介すると。亜弓(西田尚美)は恋人の郁男(香取信吾)と故郷の石巻に帰って生活を一からやり直そうと考える。亜弓には前夫との娘、美波(恒松祐理)がいた。美波は郁男になついていた。

郁男はギャンブル依存症だ。競輪には目が無い、でもそれから足を洗って真っ当な暮らしをしようと決心する。石巻には亜弓の父、勝美(吉澤健)が一人で住んでいた。勝美は漁師だが末期ガンを患っていた。

近所には小野寺(リリー・フランキー)と言う男がいて、郁男の就職先を世話し色々と面倒をみてくれた。街で学校の教師をしている亜弓の前夫、村上(音尾琢真)と偶然あう。酔っぱらった村上は郁男に嫌味を言う。

真面目に働き始めた郁男だが会社の同僚とノミ屋の競輪レースに久しぶりに興奮する。美波が亜弓と言い争いをして家を出て行ってしまう。帰りが遅い娘を心配して亜弓と郁男は車で探しにゆく。

ところが車中で郁男は亜弓とケンカし、彼女を車から道路におろしてしまう。その後、郁男は美波を見つける。母に電話しようとしたところ知らない男が出る。警察らしい、亜弓が死体で見つかったとのことだった。

郁男と美波は気が動転し現場に駆けつける。一体誰が亜弓を殺したのか、郁男は自分のせいだと責める、そして・・・。

その後のストーリーとネタバレ

郁男は自暴自棄になり石巻のお祭りで酒を飲みケンカする。そしてノミ屋の競輪レースに我を忘れてお金をかける。彼の借金は200万円を超す。ノミ屋の金貸しは払えないなら福島(原発)に行って返せと引導を渡す。また、娘の美波は元の父親の所に行くと言い出す。

そんな時に、亜弓の父、勝美が300万円入りの紙包みを持って現われる。そして郁男に「この金で身辺をきれいにして来い」と手渡す。勝美は自分の船を売ったのだ。郁男は涙を流す。

郁男はノミ屋に借金を返し、残ったお金を全額最後の競輪レースにつぎ込む。そして郁男のもくろみ通りレースに勝つ。今までの借金が全部戻ってくる。郁男は大喜びだ。ところがノミ屋は金庫を持ってトンずらしようとする。

郁男はノミ屋を追いかけるが返り討ちにあい、殴られ地面に這いつくばる。怒った郁男は次の日、ノミ屋の経営する店に現れ、テレビやらモニターやらを徹底的に破壊する。そしてノミ屋の若い連中に殴られ拘束される。

勝美は暴力団の組長、軍司(麿赤児)の所に行って郁男を貰い受ける。実は、勝美は元暴力団だった、組長、軍司の命を救ったこともある。軍司には借りがあるのだ。軍司は「これで貸し借り無しだ」と若い者を抑える。

暫くして、軍司の若い者が郁男の前に金を返しに現れる。郁男はその金で船を買い戻す。そんな時、亜弓を殺した犯人が分かった、近所の小野寺だったのだ。警察に連れて行かれる小野寺を呆然と郁夫は見つめる。小野寺は郁男に就職先を見つけ世話してくれた恩人なのだ。

勝美は郁男と美波を船に乗せ漁に出かける。勝美は郁男に漁を教えるつもりだ。勝美にはもう残り時間があまりない。海は久しぶりに穏やかな凪だ。

レビュー

ブラブラ仕事もせず競輪狂いの郁男の何処に亜弓が惚れたのか。また、亜弓は村上と何故別れたのか、小野寺は何故亜弓を殺したのか、郁男の周りの重要人物の描き方をもう少し深くしてほしかった。

そして、郁男が亜弓を殺した犯人を追いつめるようなサスペンス要素も必要だったのでは・・・。香取信吾をこの映画で脱皮させるためにはもっと冒険が必要だ。

悪い映画ではないのだが香取信吾の汚れ役に焦点を当てすぎる。それが返って単調な映画になってしまったような気がする。「孤狼の血」が良すぎたのでかなり期待してしまったが残念な映画になってしまったね。

TATSUTATSU

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