サマリー
2016年公開のサスペンス・ホラー日本映画
監督 大友啓史(ハゲタカ、龍馬伝、るろうに剣心、プラチナデータ、秘密THE TOP SECRET)
原作者 清水玲子「秘密-トップ・シークレット-」
出演 ●生田斗真(人間失格、源氏物語 千年の謎、脳男)
●岡田将生(天然コケッコー、告白、悪人)
●吉川晃司(必死剣 鳥刺し、るろうに剣心)
●松坂桃李(ツナグ、アントキノイノチ)
●織田梨沙(秘密THE TOP SECRET)
●栗山千明(死国、ハゲタカ、鴨川ホルモー)
●椎名桔平(化粧師KEWAISHI、SHINOBI)
●リリー・フランキー(海街diary)
●大森南朋(ヴァイブレータ、ハゲタカ、ミュージアム)
https://youtu.be/imnxAV9O_y8
僕は原作マンガを読んでいないので、申し訳ないけど映画を見ただけの感想になっちゃう。
誰しも脳の中はのぞいてみたい、特にサイコパスの頭の中には興味がある。この映画では網膜に映った記憶が映像化出来ちゃうんだ。これを犯罪捜査に活用しようと言うことなんだ。
でも色々な問題があってなかなか映像を証拠として使えない・・・でも従来の足・聞き取り・勘 捜査と組み合わせれば凄い威力を発揮する。
主役は生田斗真君だけど、岡田将生君の方が目立った、彼らのファンは必見だけど、新しい感覚映画として彼らのファン以外にもお薦めだ。
実在の殺人鬼ジョン・ゲイシー(33人殺害したアメリカの殺人鬼)をモデルにした貝沼清孝と言う男が出て来る。この男を吉川晃司がやっているけどその存在感は凄い、鬼気迫るものがある、必見だ。
舞台は2060年、技術の進んだ未来が根底にある。警察の犯罪捜査も進歩し「科学警察研究所 法医第九研究室」通称「第九」において「MRI(記憶再現映像化)捜査」の研究が行われている。
この「MRI捜査」とは、死者の脳にマイクロマシンを注入し、生前の記憶を再生して犯罪捜査に役立てようとする試みなんだね・・・5年前の記憶にまでさかのぼることが出来る。
しかし死人の脳と捜査員の脳を同期させなければならないことから、捜査員はむごい映像を自分のことのように体験せざるを得ない。
さらに、問題点が二つあって、一つ目は死人が見た映像には主観が入り、相手(殺人者)の顔が悪魔のように見えることがある。つまり脳の中で映像のデフォルメが行われている、当然証拠としては使えない。
二つ目は、殺人者として法廷で裁かれ死刑が執行された後、殺人者の脳から新事実(例えば冤罪)が発見された場合、これも公表することが出来ない。
しかし膨大な捜査員の投入によるコストを削減出来ることと捜査時間の大幅短縮が「MRI捜査」のメリットだ。
この映画では、殺人者として罪が確定し、死刑になったある男の脳から新事実(冤罪)が発見されてしまう。その新事実をめぐって「第九」と現場刑事との確執そして真犯人捜査が描かれる。
さらに究極の殺人鬼 貝沼清孝と言う男が出て来る。彼は28名もの若者を残忍な方法で殺害している。この殺人鬼の脳を「MRI捜査」した捜査員5名の内3名は、あまりのむごさに自殺してしまう・・・これが「MRI捜査」のリスクとして存在している。
果たして殺人鬼の脳の中にはどんな映像があったのか。そしてその殺人鬼と真犯人(冤罪として死刑執行された男の娘)との間には接点があったのか・・・その接点とは。
全体的にまあまあ面白く見せてもらったけど、真犯人が予想もつかない死刑にされた男の娘とは・・・最近多いね意表をついた展開が、でも無理があるように僕には見える。
少女と殺人鬼との接点は何なのか、この接点からどのように少女は殺人鬼に洗脳されていったのか或いは殺人鬼として覚醒していったのか、貝沼清孝とは何者なのか・生い立ちは・・・この辺ををもう少し掘り下げればさらに面白くなったように思う。
でも全体的に面白かったし大友啓史監督の才能は充分感じることが出来た。最後の終わり方が実によかった、心に訴えるものがある。
グッドエンディングだ・・・グロい物を見た後だから爽やかな終わり方は成功したように思う。
ストーリー
青木(岡田将生)は東大を卒業し、犯罪に関する学問をほとんどマスターした秀才だ。
第九の室長 薪警視正(生田斗真)は彼を引き抜く。薪が青木を選んだ理由は、彼の優れた能力だけではない、彼は家族を殺人者に殺され、父親を植物人間にさせられている。
「第九」に青木が来ることによって、いつかは真犯人を特定することが出来る・・・薪の親心である。
家族4人を包丁で惨殺した露口浩一(椎名桔平)の脳をスキャンし、今だに見つからない長女 絹子(織田梨沙)の遺体を見つけることが最終試験になる。
この最終試験に合格すれば「第九」は正式機関に昇格する。薪はこの最終テストを新任の青木に担当させる。
露口浩一は薬物によって死刑を執行された後、死体をヘリコプターで「第九」に移送される。
そして法医第一研究所(通称「第一」)の監察医 三好雪子(栗山千明)の手によって、露口浩一の頸動脈にマイクロマシンを注入し、脳は露出させられる。そして脳におびただしい数の電極を取り付ける。
この電極がつながったヘッドギアをMRIに接続する。MRIでは青木も同様なヘッドギアを装着し頭に浮かんだ映像をモニターで見ることになる。
薪室長から「モニターを客観的に見ろ」と3回念押しされる。青木の脳に同期させられた露口浩一の記憶はモニターにも映され、多くのスタッフが見ることになる。
青木は悪魔のように真っ黒な顔をした絹子の幻覚を見る。そして事件当日の記憶に行き当たる。露口浩一が見たのは絹子が包丁を振りかざして家族を刺殺している映像だ・・・浩一は冤罪だったのだ。
絹子は浩一に包丁を握らせ去って行く。浩一は大理石製の電気スタンドで3名の殺された家族の脳を潰す(MRIによる脳のスキャンを恐れたため)。彼は娘をかばったことが明らかとなる。
この事実を警察署内の諮問委員会に答申したが、無実の罪であった露口浩一を死刑にしてしまったことが公になるのを恐れ、事件の再調査を却下された。
薪は「第九」では捜査は出来ないが、別機関で絹子の犯罪の証拠が出てくれば、逮捕に踏み切ることが出来るかもしれないと青木に説明する。
青木は露口浩一を捕まえた眞鍋俊介(大森南朋)にモニターを見せる。
露口浩一は長女の絹子を溺愛していた。しかしある時から絹子にサイコパス(反社会性人格障害)が現れるようになり、同時に発情し男たちを家に引っ張り込むようになってしまう・・・何が原因なのか。
絹子は父親の浩一に他の男との情事を見せ、挑発的な態度を取る。彼女は結局 浩一とセックスをして父親をマインドコントロール(自分の支配下に置く)してしまう。
この事実が家族に知れたため、絹子は浩一以外の家族にモルヒネを飲ませ皆殺しにしてしまう。絹子を一刻も早く確保しないと次の殺人が行われてしまう。
まず彼女と接触のあった7人の男の調査から始める。そんな時に突然 絹子が記憶喪失を装って彼らの前に現れる。彼女は悪態をつき薪達を苦しめる。
海外にいる精神科医の斉藤医師(リリー・フランキー)から絹子経由で連続殺人犯 貝沼清孝の新聞の切り抜きと精神鑑定書が届く。
斉藤医師の陰謀なのかそれとも絹子の仕業なのか、薪が忘れようとしていた悪夢が頭を持ち上げる。貝沼清孝は獄中で自殺していた。
青木は三好雪子から貝沼事件にからみ4年前に自殺した鈴木克洋(松坂桃李)の話を聞く。でも実際には彼は自殺ではなく、貝沼清孝の脳内映像を見たために発狂し、薪が正当防衛で撃ち殺している。
そんな時全国各地で同時刻に9人の自殺者が出た。共通点は9人全員が同じ少年院にいたことだ。損傷していない彼らの脳をスキャンすると次のことが分かった。
彼らは全員少年院にいて、睡眠薬を飲まされ貝沼から暗示をかけられていた。貝沼は「金環日食を見たらカギが開いた(自殺しろ)サインだ」と彼らの深層心理に細工する。
眞鍋刑事は絹子をしょっ引き取調室で尋問する。しかし絹子は眞鍋や薪たちを挑発するだけで事件については何も語らない・・・すぐに釈放される。
青木は鈴木の脳データーを見たいと言う。薪が貝沼の脳データーを全て見る前に、鈴木が彼の脳を破壊していた・・・何故なのか鈴木は薪を何からかばおうとしたのか。
絹子の幼なじみ平井学が亡くなった、殺人か・事故か。彼は全盲の少年で盲導犬ZIP(ジップ)もろともトラックに轢かれていた・・・絹子が関与していたのか。
薪は貝沼のデーターが記憶された鈴木の脳(冷凍保存された)を見る決心をする。貝沼は28人の青年を28通りの殺害方法で殺して行く、薪には耐えられない映像ばかりだ。
映像の中に絹子が出て来る。貝沼と絹子は「学び舎」と言う場所で接触していたことが映像から分かった。ところが更に恐ろしい事実が判明する・・・それは何なのか。
そして眞鍋刑事は絹子に自白を強要させるために、露口浩一の家に向かう・・・最悪 眞鍋はこれ以上犠牲者を出さないために絹子を打ち殺すかもしれない・・・さてどうなるか。
ネタバレとレビュー
眞鍋刑事は絹子に拳銃を突きつけて自白しろと乱暴を振るう。そこに現れた青木は仲裁に入るのだが、眞鍋は我を忘れていた。
眞鍋は青木に向かって威嚇射撃をする。そして絹子を打ち殺そうとした時、青木は眞鍋に向かって引き金を引く、眞鍋は床に倒れ、青木も眞鍋の銃で重傷を負う。眞鍋は自分が助からないと悟ると頭をぶち抜いて絶命する。
そばで絹子の笑い声が聞こえる。
薪は貝沼の映像をもう5時間も一人で見続けている。このままでは薪が狂ってしまうかもしれない・・・雪子はモニターをオンにして薪の様子を確かめる。
その時、貝沼の薪に対する挑発とも受け取れる不気味な映像がモニターされる。貝沼は独房の床に顔を写し、薪に語りかける。
貝沼は教会で財布を盗もうとしたところを薪に止められたことをささやく。そして「罪を見逃してくれたばかりか、現金の施しもしてくれた・・・俺が哀れに見えたようだ、あんたは優しいね」と。
貝沼はそれから薪のことが頭から離れなくなった。「善意と悪意は紙一重」と言いながら歯に糸で結んで胃の中に隠した小型ナイフを取り出す。
「殺した28人はあんたへのプレゼントだ」、「神の領域を犯したあんたへの捧げものだ」「まだ終わっちゃあいないよ薪さん」と言って頸動脈を切断して自殺する。
この最後の映像は鈴木が薪に見せたくないものだった・・・鈴木は命を懸けて薪をかばったのだ。
鈴木は死ぬ間際に脳内麻薬が分泌され、自分の人生を振り返る映像が流れる。自分自身が作り出した一番幸せな世界が広がる。
青木は一命を取り留める。青木の病室に絹子が現われ、別れの挨拶をして何処かに行ってしまう。
青木は薪に連絡し平井学の盲導犬ZIPの脳をスキャンすることを提案する。案の定、絹子が平井学とZIPを車にひき殺されるよう道路に誘導していた。
平井学が殺されたのは絹子が殺したおびただしい白骨死体をうっかり転んで手で触ってしまったことが原因らしい。薪たちはその場所へ急いで急行する。
絹子はその場所にいた、彼女は自分に後が無いのを悟ったように周りに火を放ち焼け死んでゆく。
暫くして、青木は退院して、薪に逢いに来る。薪から眞鍋刑事が二階級特進したことと、第九が正式な機関に昇格したことを聞く。
しかし青木は薪に辞表を提出する。薪はそれを机に放り投げると、USBメモリを渡し、時間がある時に見ろと勧める。
メモリには温かく美しい映像が流れていた・・・青木は思わず涙を流す。
「忘れるな美しい世界はきっと直ぐそこにある」メモリには盲導犬ZIPが見ていた世界が永遠と続いていた。人々はZIPに微笑み、頭を撫でてくれる、ZIPは人間社会でこんなにも可愛がられていた。
貝沼清孝は自分の後継者として絹子を選んだんだ。絹子はモルヒネと色仕掛けで次々と人殺しをしてゆく・・・山中のおびただしい白骨死体はそれを物語っている。
だけど残念ながら絹子の怖さがあまり伝わってこなかった・・・難しい役柄だ。織田梨沙さんにはやや荷が重かったのかな。
現場たたき上げの眞鍋刑事と東大卒のエリート青木警部との対比が良かった・・・「第九」の実験室だけではエリートばかりで面白くないから。
今回、薪役の生田斗真君が冷静過ぎた、感情を外に表した岡田将生君に食われちゃった。ところで結構ヒットしたみたいだから続編は作られるのかな、次回あるなら楽しみに待ってたいね。
「血も凍る日本のサイコパス映画ベストテン」も見てね。
TATSUTATSU
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