サマリー
★★★☆☆(お薦め)
2005年からフジテレビ他で放映された異世界ファンタジーアニメ
監督 長濱博史
原作 漆原友紀「蟲師」
出演 ●中野裕斗(ギンコ役)
●土井美加(かたり、ぬい役)
●うえだゆうじ(化野役)
●小林愛(探幽役)
特別編 「日蝕む翳」
ノスタルルジーをかき立てるドラマだ。人間は一人で生きられないのに一人になりたがる。それに過去に決別したいのに過去に戻りたがる。そしてこのドラマの主人公ギンコの飄々とした生き方にあこがれる。でも彼はほとんどの記憶を失っているだけで壮絶な過去を持っている。
彼の本当の名前はヨキ、行商の母と死に別れ、女蟲師のぬいに助けられる。彼女も白髪・緑眼、片目が無い。彼女はヨキに蟲師としての基本を教え込む。ところが常闇(とこやみ)に潜む巨大な蟲・銀蟲(ぎんこ)に飲み込まれ消えてしまう。
ぬいは消える寸前、ヨキの左目を犠牲にさせて常闇から逃がす。白髪・緑眼となり左目を失ったヨキは村人に助けられる。その時の記憶として残っていた「ギンコ」が自分の名となる。彼には「蟲」が見え、「蟲」を呼び寄せる体質を持っている。そして蟲師を生業として旅を続ける。
ここで言う「蟲」とは昆虫や小動物のことではない。「すべての生命よりも命の源流に近いもの」「普通の人には見えない生命体の営みから起こる現象」を言う。わかり易く言えば「精霊・幽霊・妖怪」と言ったようなものだ。
そして「蟲師」とは「蟲」に関するあらゆる現象を取り扱う医者・研究者のことだ。「蟲」に取りつかれた人々から「蟲」を取り祓ったり、「蟲」に取りつかれた土地や物からも「蟲」を除霊する。しかし、「蟲」には種類が多く、一生に一度出会えるかどうか分からないモノも多い。従って文献を頼りに「蟲」の処し方を研究することも同時に行ってゆく。
物語の舞台は江戸時代と明治時代の間にある架空の時代だ。登場人物はギンコを除いて皆、和服だ。何故なのかギンコだけが洋服を着ている。背中に商売道具を背負い、常に蟲煙草をくゆらしている。この煙は蟲を寄せ付けない。
漆原友紀の傑作漫画がもとになってアニメが作られている。原作に忠実にアニメで再現させている点は監督の長濱博史の手腕によるところが大きい。2005年10月からフジテレビ他で放映され2006年末まで続いた。
2007年に大友克洋監督、オダギリジョー主演で実写化されている。僕は当時、映画館に駆けつけたが残念ながら今一だった。「蟲師」の持っている独特の雰囲気「叙情的な世界」「はかなく切ない世界」が大きく抜け落ちている。
仕事に行き詰まったり、人生に疲れたらこのアニメをじっくりと繰り返し見ることをお勧めする。人間なんて生まれて死ぬだけのちっぽけなものであることを痛感する。いっそのこと山に籠るのもいいかもしれない。自然と一体化すれば見えないものが見えてくる。それにひょっとしたらギンコに逢えるかも。
いくつかストーリーを紹介しておく
〇緑の座(みどりのざ)
山奥の広い家に少年が一人住んでいる。その少年は「神の筆(かみのひだりて)」を持つと言う。彼が描いたものには命が宿り、紙から抜け出て空中を彷徨う。この少年を訪ねたギンコは屋敷の中に不思議なものを見る。その不思議な物とは人間なのかそれとも蟲なのか・・・。
〇柔らかい角(やわらかいつの)
山奥の雪深い里に治療に訪れたギンコ。耳に寄生する蟲を退治したがそこには頭に角の生えた子供がいた。その角は何が原因なのか、そして治療は出来るのか。
〇筆の海(ふでのうみ)
「代々その身の内に禁種の蟲を封じてきた狩房家」その4第目筆記者として過酷な運命を送る「淡幽(たんゆう)」。彼女は動かぬ足を引きずって蟲封じの呪文を書き続ける。
〇綿胞子(わたぼうし)
婚礼の最中に森を通ったことから「綿帽子にポツリと付いた緑のシミ」。一年後妻が緑の塊を産む。そしてこの塊は床下に消える。ところがその一年後床下から赤子が生まれる。さらに半年ごとに子供が増え続ける。ギンコはこれは蟲によるものだと非情な対策を講じる・・・。
〇眇の魚(すがめのうお)
ギンコの生い立ちが描かれる。行商の母を失ったヨキは女蟲師ぬいに助けられ、蟲師の基本を叩き込まれる。ところが恐ろしい常闇が二人を襲う。果たして二人の運命は・・・。
TATSUTATSU
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