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アニメ映画「ジョゼと虎と魚たち」感想・評価:「純愛」ドラマに生まれ変わった田辺聖子の傑作短編小説

サマリー


★★★★☆(見るべき名作)

2020年12月25日公開の純愛ファンタジー・アニメ
監督 タムラコータロー
原作 田辺聖子「ジョゼと虎と魚たち」
出演 ●中川大志(鈴川恒夫役)
●清原果耶(ジョゼ役)
●宮本侑芽(二ノ宮舞役)
●興津和幸(松浦隼人役)
●松寺千恵美(山村チヅ役)

アニメ映画『ジョゼと虎と魚たち』ロングPV

 

田辺聖子の傑作短編小説「ジョゼと虎と魚たち」がアニメになるとは予想もしなかった。この小説は2003年犬童一心監督によって映画化されている。恒夫を妻夫木聡、ジョゼを池脇千鶴が熱演し、ベッドシーンが話題になった。愛しているのに障がい者のジョゼを支えきれない恒夫の葛藤が涙を誘う。

劇場予告編

『ジョゼと虎と魚たち』劇場予告編

 

今回のアニメ化は「純愛ドラマ」となっている。実写版とは異なり、ファンタジーの世界を漂う二人が愛を見つけるまでが描かれ、清々しい結末を迎える。ジョゼは歩けないことから祖母の山村チヅと二人暮らし、生活保護を受けながらつつましく暮らしている。時々、野良猫の諭吉がやってきてはエサをねだる。

チヅは外は危険で虎がいっぱいいるからとジョゼを家に閉じ込める。ジョゼことくみ子は海を見たことが無い。チヅが外で拾ってくる小説を読むのが日課だ。特にフランソワーズ・サガンの小説がお気に入りでその主人公ジョゼを名乗っている。

たまたまチヅと外出した時、坂道でジョゼの車いすが暴走する。そして鈴川恒夫に助けられたことから二人の関係が始まる。世間知らずのジョゼは外見は可愛らしいが性格はきつく、恒夫を「管理人」と呼び捨てにして注文ばかり出す。恒夫はアルバイトに明け暮れる苦学生だ。

恒夫はお金を貯めてメキシコの大学に留学し海洋生物学者を目指したいと考えている。彼はメキシコにしか生息しない幻の魚の群れを発見するのが夢だ。そんな恒夫にチヅはバイト代を払うからジョゼの面倒を見ろと誘われる。

ジョゼはチヅの目を盗んで恒夫と外出する。ジョゼは海に連れて行けと恒夫に命令する。仕方なく電車に乗って海へ行く。海岸に出たジョゼは大喜びだ。恒夫は彼女を抱きかかえ波打ち際を沖に進む、しぶきがかかったジョゼは海の水は本当にしょっぱいんだと感動する。

彼女は恒夫との外出を心待ちにする。動物園に虎を、水族館に魚を見に行ったり、図書館に行ったり、クレープを食べるのも初めてだ、何でもかんでもが初めてかもしれない。彼女は実は恒夫より年上の24歳なのだ。でも子供のように何も知らない。彼女は家にこもり絵を描いたり、本を読むことしか出来ない。大きな子供だ。

恒夫がジョゼの前に現れたことによって彼女は生きがいを見出してゆくが、そんな時祖母のチヅが心臓病で亡くなってしまう。ジョゼは本当に一人取り残される・・・彼女は生きて行くことが出来るのか。

その後のストーリーとネタバレ

恒夫には友人の松浦隼人と後輩の二ノ宮舞がいる。舞は恒夫に思いを寄せている。そんな恒夫はあと少しでメキシコに行ってしまう。ジョゼは悲しみのあまり、恒夫に冷たい態度をとる。

ジョゼは恒夫と出かけた時、ケンカして一人で帰ろうとする。道路を横断しようしたが車輪が窪みにはまって動けない。そこに車が猛スピードで突っ込んでくる。助けようと慌てた恒夫は車にはねられる。

恒夫は救急車で病院に運ばれたが足を複雑骨折していた。医者からは治っても走ることが出来ないかもしれないと言われる。恒夫は絶望のどん底に落とされる。決まっていた留学もキャンセル、つらい入院生活が始まる。ジョゼはそばで見守る。

暫くして傷がいえた恒夫には苦しいリハビリが待っていた。ジョゼも自分一人で生きて行かねばならない。ある日、図書館でジョゼは子供相手に自分が作った絵本を朗読する。

ジョゼは恒夫に見せたい一心で必死に作った絵本だ。人魚と天使の悲しい物語だ。当然、人魚はジョゼ、天使は恒夫を現している。それを見た恒夫はジョゼを愛していることを知る。

ある日、ジョゼを訪ねた恒夫は彼女が部屋いないことに気づく、部屋の中はきれいに片づけられていた。慌てた恒夫は雪の降る街を探し回る。頼りは車いすの轍だ。必死になって探し回ったその時、坂道からジョゼの車いすが暴走してくる。とっさに恒夫は走り出していた。

恒夫はジョゼを受け止めると抱き寄せて口づけをする。彼女は「キスはこんな感じなんか」とつぶやいて、彼女の方から恒夫にキスをする。

レビュー

恒夫は一年遅れでメキシコに留学し自分の夢を叶えてゆく。ジョゼも車いすを電動化して自立を目指す。彼女は住んでいた家を取り壊し、新たな旅立ちを果たす。

僕は実写版もアニメ版も両方とも好きだ。実写版はハッピーエンドではないがジョゼを支えきれない恒夫が現実を目の前に、涙を流して去ってゆく。

アニメ版がハッピーエンドになっているのは監督の要望とのことだ。ファンタジードラマはファンタジーのままで終わった方がいい。あくまで夢の世界なのだ。

街でも電動車いすをしばしば見る。駅にはエレベーター設置や身障者に対する配慮が増えている。でも彼らが電車を使って一人で外出するのは勇気がいることだと思う。このアニメを見て、今まで見えてこなかったものが見える気がする。

TATSUTATSU

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