サマリー
2015年日本公開のアメリカ製作ヒューマンドラマ、監督フィリップ・ファラルドー、脚本マーガレット・ネイグル、主演リース・ウィザースプーン(ウォーク・ザ・ライン)、そして南スーダン難民の若者たちが出演している。製作者の一人としてロン・ハワード(ビューティフル・マインド、ダ・ヴィンチ・コード)も参加している。
1983年アフリカのスーダンで内戦が勃発し、家族や家を失った何万人にも及ぶ子供達が難民キャンプに収容される。そしてそれから十数年後「ロストボーイズ」と呼ばれる彼らをアメリカに移住させる計画が始まる。
難民映画と言うと、悲惨な光景ばかりを予想するが、もちろんそれらのエピソードも映画の中にはあるが、この映画では難民の青年たちがアメリカ社会とのカルチャーギャップに悩みながら生活をしていく姿をコミカルでウィットに富んだ物語にしている。
もと難民であった彼らが真面目で朴訥な演技をするのが微笑ましい、そして主演のリース・ウィザースプーンが明るく行動的なキャリアウーマンを演じこの映画に彩りを添えてくれる。
南スーダンで育った彼らは内戦で両親を失い、歩いてケニアの難民キャンプに向かう。途中仲間が病気で死んだり、北の兵士達に兄が犠牲になって連れ去られたり、必死の思いでたどり着く。
それからキャンプでの生活が十数年続く、そしてアメリカが受け入れを表明し、彼らは故郷を後にする。苦楽を共にした4人の兄弟達の内でただ一人の女性は、受け入れ先が異なり、家族は遠く離れて暮さなければならない。
職業紹介所のキャリーは受け入れた彼らに就職先を斡旋するために奮闘する。そして家族を同じ地区で暮らせるように、彼女は彼らの姉を引き取る決心をする。
彼らは少しずつアメリカの生活になじみ始めた時、行方不明の兄テオの消息がわかる。弟のマメールは難民キャンプに飛び、やっとの思いで兄と再会する。
そして兄を兄弟の待っているアメリカに呼び戻そうと手を尽くす。ところがどうしても受け入れ申請の許可が下りない、空港で彼は一計を案じる。
果たしてその方法とは、結末はほろりとさせる秀作です、是非観て頂きたい。
ストーリー
1983年スーダンで内戦が勃発する。北軍が南部の村を焼き払い、数千人の孤児が歩いてエチオピアやケニアにたどり着いた。
そして13年後にアメリカが3600人の難民受け入れを表明する。彼ら難民は「ロストボーイズ」「ロストガールズ」と呼ばれ、飛行機でアメリカに向かう。
マメール(アーノルド・オーチェン)はスーダン南部の出来事を回想する。ある日突然村を北軍の兵士達が機関銃を持って襲う。家は破壊され両親も殺される。
彼は兄弟達と命からがら逃げ回り、徒歩で416キロ先のエチオピアに向かったが、そちらには兵隊がいるとのことで、今度は912キロ先のケニア向かう。
結局ケニアの国境まで1256キロを歩いたが、途中兵士達に遭遇し兄のテオが犠牲となって奴らに連れ去られてしまう。そしてマメール達はケニアのカクマ難民キャンプに死ぬ思いでたどり着く。
難民キャンプで十数年の月日が経つ、そして彼らはアメリカへの移民が認められJFK空港に降り立つ。空港では迎えの女性が来ていたが、姉のアビタルだけ行き先が異なっていた。
マメール、ポール(エマニュエル・ジャル)、ジェレマイア(ゲール・ドゥエイニー)の男3名はカンザスシティー(ミズーリ州)に姉のアビタルはボストン(マサチューセッツ州)に行くことになった。
カンザスシティーでは職業紹介所のキャリー(リース・ウィザースプーン)が迎えに来てくれた。
彼女はジャック(コリー・ストール:ストレイン)と彼らの就職先を探す。そしてマメール、ジェレマイアはスーパーマーケット、ポールは機械組み立て工場に就職が決まった。
毎日の生活ではまごつくことばかりだが、少しずつアメリカの生活になじんで行く。でも彼らはどうしても姉のアビタルと一緒に住みたいとの思いが強い。
キャリーはあちらこちらと足を運んで、兄弟達の願いを叶えようと奮闘するも空回りしてしまう。結局彼女は自分がアビタルを引き取る決心をする。
純真だった彼らの心はアメリカと言う国にむしばまれてゆく、マメールは医者を目指しているが、学費が高くて学校へ行けない、ジェレマイアはスーパーマーケットのボスと折り合いが悪く店を辞めてしまう、ポールは自分たちはアメリカでは「クズ」だと自信をなくしてしまう。
マメールは兄のテオが兵隊たちに連れ去られたのは自分せいだと、自分を責めつづける。そして兄弟達の兄弟愛は少しずつ薄れてゆく。でも一旦心が離れかけた彼らだが、やがて少しの時間を経てもとの兄弟に戻って行く。
そんな時に姉のアビタルが彼らのもとに帰って来る、キャリーが引き取ることになったのだ。みんなは大喜びで家族の絆が一層強くなる。この国では家族が結束してゆかないと生きて行けないことを痛感する。
マメールに朗報が入る、兄のテオが生きていて、難民キャンプにいるらしい。しかし9.11以降アメリカの難民受け入れはストップしている。
方法は一つ、ケニアのナイロビで各国の大使館めぐりをして庇護を求める。そしてアメリカの友好国にビザを発給してもらう。そのあとはアメリカの福祉団体が動いて、アメリカへの受け入れ申請を行う。
大変な手間だが、アメリカに入国するためには現在はこの方法しかない。果たしてこの方法は上手く行くのか、是非映画を観て頂きたい。
ネタバレ
マメールはケニアに飛んで、難民キャンプを訪ねる。そこにはかつての旧友たちがいた。キャンプの中には10万人の人々が暮らしていた、この中からテオを探すには一苦労だ。
ところが旧友たちが協力してくれ、テオを探し出すことが出来た、兄弟は固く抱き合う。兄はリウマチ熱に罹り心臓を悪くしていた、そして体にはひどい傷跡が残っていた。
マメールは大使館をハシゴしたが、何処にも受け入れてくれる国はなかった・・・・・・・彼は落ち込む。
ところがマメールは兄のテオに受け入れ先が見つかりビザが発給できたと「嘘」をつく。
兄弟は空港へ行く、そして搭乗手続きのまじかになって、マメールは自分のパスポートと搭乗券を兄に手渡す。
今から何があっても「マメール」と名乗ってくれと念を押す、兄弟は入れ替わったのだ・・・・・「いちばん優しい嘘」だとマメールはつぶやく。
兄はダメだと言うが、マメールはカクマキャンプの病院で働くのが僕の使命だと譲らない。兄は寂しそうに一人でゲートを通過してゆく。
ある日の教会で、我々は「ロストボーイズ」ではない、このアメリカの地で自分をみつけたと、ジェレマイアは皆の前で宣言する。
その後2000年に数千人の「ロストボーイズ」が渡米したとのことである。
レビュー
日本は難民の受け入れに対し消極的だが、アメリカの難民に対する懐の深さには驚かされるね。そして一旦アメリカに渡った人たちも、国造り為に帰国し、重要な役割を担っている点は凄いね。
スーダンの内部紛争は、宗教対立と石油の利権争いと言われている。映画では、ジェレマイアがいつも聖書を持ち歩いているし、日曜礼拝で講演もしている・・・・・・キリスト教普及に関するエピソードが盛り込まれているのかな。
兄弟達がケニアの難民キャンプにたどり着くまで、壮絶な旅をソフトに描いている。実際にはこんなもんではなかっただろうなと思う。生きるためにおしっこを飲んだり、チーターのエサを横取りしたりする。結局2人の子供が亡くなってしまう。
ジェレマイアがスーパーマーケットで働くが、毎日賞味期限切れの食べ物を大量に捨てることに耐えられなくなって、店を辞めてしまう。彼は食料不足で亡くなっていく人たちを数多く見ているからなのだろうね・・・・・この点は日本でも同じで考えさせられるね。
映画に出てくるアメリカのジョークが僕は良く分からない、知っている人がいたら教えてほしいね。「何故鶏は道を渡った?」答えは「向うに行くため」・・・・・・みんな大笑いだが、何処が面白いの?
映画に出て来るキャリーと言う女性が非常にチャーミングに描かれているね。明るくて・行動的・気が強くて・正義感に溢れる、さらにボーイフレンドも多い・・・・・・リース・ウィザースプーンにピッタリな役柄だね。
でも彼女の部屋はゴミ貯めのように汚い・・・・・・・僕も人の事は言えない、たまには掃除しよっーと。
辰々
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