SF

映画「グレートウォール」感想・評価:万里の長城は何の侵入をくい止める為の城なのか?


サマリー

2017年4月日本公開の中国・アメリカ合作 歴史アクションSF映画
監督 チャン・イーモウ(紅いコーリャン、HERO、LOVERS、単騎、千里を走る。、グレートウォール
出演 ●マット・デイモン(グッド・ウィル・ハンティングプライベート・ライアン、 インターステラージェイソン・ボーングレートウォールオデッセイ
●ジン・ティエン(グレートウォールキングコング:髑髏島の巨神
●ペドロ・パスカル(ゲーム・オブ・スローンズ、グレートウォール
●ウィレム・デフォー(誰よりも狙われた男グランド・ブダペスト・ホテルジョン・ウィックグレートウォール
●オンディ・ラウ(インファナル・アフェア、LOVERSグレートウォール
●ルハン(20歳よ、もう一度、見えない目撃者、グレートウォール
●チャン・ハンユー(戦場のレクイエム、グレートウォール

『グレートウォール』予告編

本日3Dで見てまいりました。中国では昨年、アメリカでは今年の2月に公開されている。色々と批判的なレビューが出てる。

中国が舞台の映画なのに白人(マット・デイモン)が救世主になっている・・・歴史的におかしいんじゃないかとか。中国のレビューサイトも10点満点中5点前後と厳しい評価を下している。

確かにマット・デイモンが出ていなければ僕も見に行かなかったかもしれない。でも巷で言われているほど悪い作品ではないし、世界中で300億円以上の興行収入を稼いでいる。(アメリカ50億円、中国200億円)

奇想天外で現実には有り得ないほどSF色の強い作品だけど、僕は気に入った。ストーリーはもの凄くシンプルなので頭を悩ませることもない。是非お薦めだ、出来れば3Dで見た方が臨場感豊かで面白いよ。

生々しい人間同士の闘いより、人間と中国神話の怪獣 饕餮(とうてつ)との闘いの方が何の遠慮もせずに激しい戦闘を描くことが出来る。(中国では政治色を嫌うので、伝説の生き物を敵にすれば問題ないのか?)

舞台は宋王朝時代、ブラック・パウダーと呼ばれる中国の黒色火薬の秘密を盗もうとヨーロッパの傭兵ウィリアム・ガリン(マット・デイモン)とペロ・トバール(ペドロ・パスカル)は万里の長城までやってくる。

ところが万里の長城ではシャオ将軍(チャン・ハンユー)率いる何万人もの戦闘部隊が待機していた。その理由とは二千年前から60年に一度現れると言う伝説の怪獣 饕餮(とうてつ)を迎え撃つためだ。

饕餮(とうてつ)は一頭の女王に率いられた数万頭にも及ぶ群れを成す怪獣だ。大きさは子牛ほどあり曲がった角、虎の牙と爪、独特の不気味な顔を持ち、目は巨大な口の後ろに付いている。

これを防ぐために万里の長城が築かれたとのことだ。ここを通してしまうと宋王朝が滅ぶどころか人類全体も滅んでしまう。戦闘部隊は命がけで長城を死守しなければならない。

饕餮(とうてつ)は肉なら何でも食べる生き物でその貪欲な食欲は仲間でさえも共食いし、エサが無くなってしまえば自分自身でさえも食いかねない生き物だ。

女王はエリマキトカゲのような親衛隊によって守られ、口移しで仲間からエサをもらいもの凄いスピードで繁殖してゆく。

果たして人間には勝ち目はあるのか、そしてウィリアムとペロは生き延びることが出来るのか。

ストーリー

12世紀(中国では宋の時代)ごろ、金儲けのため世界中を旅してまわる傭兵の一団があった。彼らは馬賊に追われ散り散りとなり20名ほどの仲間が数人になってしまう。

夜に身をひそめていた彼らは獣のような怪獣に襲われ、とっさにウィリアム・ガリン(マット・デイモン)は獣の足を切り落とす。夜が明けると仲間はペロ・トバール(ペドロ・パスカル)だけになっていた。

二人は馬賊から逃げるように進むと巨大で限りなく長い長城へと突き当たる。そこで二人とも長城の兵士に捕まってしまう。

普通であれば二人とも殺されてしまうところであったが、ウィリアムが持っていた獣の足が中国神話の怪獣 饕餮(とうてつ)のものであることが分かり命拾いをする。

饕餮(とうてつ)とは二千年前から60年に一度、大群で長城に押し寄せ人々を恐怖のどん底に陥れる怪物だ。人間は今までの長い間、長城を築いて、獣たちを撃退してきた。

長城を守っているのは禁軍と呼ばれシャオ将軍(チャン・ハンユー)が統率している。シャオ将軍の配下には鷲軍、虎軍、熊軍、鹿軍、鶴軍の5つの軍があり、筆頭司令官は鶴軍のリン(ジン・ティエン)であった。

鷲軍 : 赤い甲冑を着け主としてさまざまな弓を武器とする。チェン司令官(ケニー・リン)

虎軍 : 黄色の甲冑が目印の工兵部隊である。火玉を投げる投石器などを操る。ウー司令官(エディ・ポン)

熊軍 : 黒い甲冑を着けた最強の軍隊である。饕餮(とうてつ)と接近戦で戦う。シャオ将軍兼務

鹿軍 : 紫の甲冑を着けた騎兵隊と歩兵隊からなる。機動力に最も優れる。ドン司令官(ホアン・シュエン)

鶴軍 : 青い甲冑を身に着けた女性からなる軍隊で、長城からバンジージャンプのように飛び降り槍で饕餮(とうてつ)を撃退する。筆頭司令官のリン

シャオ将軍を補佐するワン軍師(アンディ・ラウ)はウィリアムが持っていた饕餮(とうてつ)の足から、大群が来るのは予想より早いと推察し、戦闘態勢を取らせる。

予想通り数万頭とも思える饕餮(とうてつ)の大群が長城に押し寄せる。全軍組織的に連携し、饕餮(とうてつ)が壁を登って皇帝の住む都に向かうのを阻止する。

ウィリアムも得意の弓を使って鷲軍と一緒に戦う。味方にもかなりの損害が出たが饕餮(とうてつ)の第一波を食い止める。

ウィリアムとペロ・トバールのところにバラード(ウィレム・デフォー)と言う西洋人が現われる。彼は軍人たちに英語とラテン語を教えていた。しかし真の目的は門外不出の黒色火薬の技術を盗むことであり、ウィリアム達に協力を要請する。

ペロ・トバールはバラードと組むことを了解したがウィリアムは金儲けより尊い「信頼」が禁軍との間に芽生え、この提案を断った。

夜になり、長城の異変に気づきたシャオ将軍は部下を引き連れ現場に駆け付けたが二頭の饕餮(とうてつ)に前後を襲われ、かみ殺されてしまう。将軍は死に際に筆頭司令官のリンに後を託す。

そんな時に次の第二波の攻撃が始まる。饕餮(とうてつ)の攻撃は激しく一進一退が続く。ワン軍師はウィリアムが持っていた磁石が饕餮(とうてつ)を鎮める力があるのではないかと予想する。

眠り薬を仕込んだ銛を使って一体の饕餮(とうてつ)を捕獲する。磁石を近づけると怪獣が大人しくなることから、磁石が饕餮(とうてつ)の女王が発する指令をシールドする効果があることが分かった。

シェン特使(チェン・カイ)は捕獲した饕餮(とうてつ)を皇帝に献上するため馬車で都に向かう。

ところがそれからしばらくして恐ろしいことが判明する。饕餮(とうてつ)が禁軍と戦っているさ中に別の大群が城壁の一部に穴をあけ、既に都に向かっていた。

今から駆け付けても間に合わない、筆頭司令官のリンは布製の気球を使い上空の強風に乗って都へ行くしかないと決断する。

それと同時にこの混乱に乗じて、ペロ・トバールとバラードは黒色火薬を奪って長城から逃走する。

果たしてリン達の気球は間に合うのか、そして都へ向かった饕餮(とうてつ)を倒す事が出来るのか・・・ここから先は映画を見てから読んでね。

ネタバレとレビュー

気球は上空の風に乗って、都に到達する。饕餮(とうてつ)の女王は仲間からエサを口移しでもらう習性を逆に利用する。

ウィリアムとリンは捕えた饕餮(とうてつ)にボール状にした黒色火薬をくくり付け、肉をたらふく食べさせて、女王のもとに向かわせる。

二人は高い塔から火のついた弓矢を女王に向かって射るが、女王の周りを固めるエリマキトカゲのような護衛にはじかれる。

もっと高いところに上らないと女王を攻撃できない、塔の下からは饕餮(とうてつ)が向かってくる、もう時間が無いと最後に放った弓矢が命中し、強烈な爆発とともに女王たちは粉々になる。

都を襲っているおびただしい饕餮(とうてつ)は女王の死とともに倒れてゆく・・・ギリギリ間に合ったようだ。

ペロ・トバールとバラードは逃げるがバラードは馬賊に捕まり、火薬が暴発して死ぬ。ペロ・トバールは禁軍の兵に捕まってしまう。

リンは今回、手柄を立てたウィリアムに黒色火薬を持って国に帰るかそれともペロ・トバールを連れて帰るか選択しろと言う。ウィリアムは迷うことなくペロ・トバールを連れて帰途に就く。

饕餮(とうてつ)とは中国神話の架空の動物なんだ。体は牛とか羊で虎の牙、人の顔と爪を持つ。名前の意味は何でも喰らう猛獣ということだ。この映画ではかなり邪悪にデフォルメされている。

この映画を見ていると中国映画なんだけどマット・デイモンが出てきてもほとんど違和感を感じない。彼が実にこの映画にぴったりマッチするとは驚きだ。

それもそのはず、監督のチャン・イーモウ以外のスタッフはほとんどハリウッド出身者で固められている・・・納得だ。

また、俳優陣も中国・香港・台湾のスーパースターたちが集められ、セットも豪華だけど、俳優陣も凄いと言わざるを得ない・・・残念ながら日本の俳優は出ていないけど。

そしてチャン・イーモウ監督らしく女性ヒロインの描き方が上手い。今回ジン・ティエンを抜擢している。彼女は「キングコング:髑髏島の巨神」にも顔を出している・・・少々影が薄かったけど。

中国映画界の凄さを感じる、着実にレベルアップしている。金をかければいいってもんじゃないけど日本も見習うところが結構あるんじゃないかな(アクションと突飛な発想が凄い)。

今後、こんな作品が増えていくように思う、日本映画界も負けてはいられない。それにしても長城はデカくて長くて、中国旅行に行った時ここを歩いたのを思い出す。

TATSUTATSU

 

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