ヒューマンドラマ

映画「沈黙‐サイレンス-」感想・評価-キリシタン弾圧を淡々と描き心に残る秀作だ

サマリー


2017年日本公開のアメリカ 宗教映画
監督 マーティン・スコセッシ(タクシードライバー、レイジング・ブル、グッドフェローズ、ギャング・オブ・ニューヨーク、ディパーテッド、ヒューゴの不思議な発明)
原作 遠藤周作「沈黙」
出演 ●アンドリュー・ガーフィールド(ソーシャル・ネットワーク、アメイジング・スパイダーマン、沈黙-サイレンス-)
●リーアム・ニーソン(シンドラーのリスト、スター・ウォーズシリーズ、キングダム・オブ・ヘブン、96時間シリーズ、フライト・ゲーム誘拐の掟
●アダム・ドライヴァー(奇跡の2000マイルスター・ウォーズ/フォースの覚醒
●窪塚洋介(GO、ピンポン、凶気の桜、魔界転生)
●浅野忠信(モンゴル、マイティ・ソー、バトルシップ)
●イッセー尾形(男はつらいよ、トニー滝谷、太陽)
●塚本晋也(鉄男、シン・ゴジラ、SCOOP)
●小松菜奈(渇き。、バクマン。)
●加瀬亮(アンテナ、それでもボクはやっていない、アウトレイジ、劇場版SPEC)
●笈田ヨシ(豪姫、あつもの)

映画『沈黙 -サイレンス-』日本版予告編

映画を観に行ってまいりました。平日の午後だったせいもあって年配の方々が多かった。

あまりにもむごいキリシタン弾圧のシーンが次から次へと出て来るので、気の弱い方や娯楽を求める人には向かない・・・映画を見たあと重苦しくて、暗く落ち込むかも知れない。

僕も映画を見た後暗い気持ちで家に帰った。残酷なシーンばかりが目についてショックが大きかった、二回目を観る機会があればまた変わった感想が出てくる気がする映画だ。

メル・ギブソン監督の「パッション」(イエス・キリストが次から次へと拷問にかけられ、最後は十字架の刑で殺されてしまう。しかしそのあと復活する。)を思い出した・・・この映画も二度と見たくない映画だ。


メル・ギブソン監督の「パッション」

でも「宗教:キリスト教」とは何なのか、キリスト教によって本当に人々は救われ、幸せになれるのか、日本の貧しい村人たちは本当に真のキリスト教を理解していたのか・・・考えさせられる映画であることは間違いない。

この作品では、神はこの世に現れることもないし奇跡を起こすこともない・・・神は「沈黙」し普通の日常が過ぎてゆく・・・蝉の声、風の音、波の音、強い日差しが照りつけるだけ。

キリスト教と仏教との違いは何なのか、同じ宗教でどこが違うのか・・・村人たちはどうして仏教を捨ててキリスト教に走るのか・・・しかし宣教師はキリスト教を捨て仏教に改宗する。

日本におけるこの長崎の惨劇がマーティン・スコセッシ監督によって淡々と映像化されている。ドラマチックな演出や劇的なカット割りは使われていない・・・音楽も控えめだ。

監督はこの企画を28年間温め続け、今回実現させている。また1640年代の日本を忠実に再現しようと努力している・・・台湾で撮影されたらしいが、違和感は僕には感じられなかった。

ただあまりにも淡々と描きすぎたのか、僕にはやや物足りなかったように思われる・・・少々CGなんかも使ってストーリーを劇的に盛り上げる部分があってもよかったのでは・・・。

1640年、高名なポルトガル宣教師フェレイラ(リーアム・ニーソン)が捕えられ、厳しい拷問とキリスト教徒への弾圧によって棄教したとの情報が本国のイエズス会にもたらされた。

とても信じられないと弟子のセバスチャン・ロドリゴ神父(アンドリュー・ガーフィールド)、フランシス・ガルペ神父(アダム・ドライヴァー)は真意を確かめる為、命を懸けて日本の長崎に密入国する。

彼らはそこで想像を絶する光景を目にすることとなる。

ストーリー

ポルトガルの宣教師フェレイラの眼前で、多くの宣教師が雲仙から吹き出す熱湯をかけられじわじわと殺される・・・彼は神に祈り涙を流す、そしてそののち棄教する。

フェレイラの棄教を確かめるため、若いポルトガルの宣教師ロドリゴ神父とガルペ神父はマカオで出会ったキチジロー(窪塚洋介)の手引きによって二年のつらい歳月をかけ日本の長崎に密入国する。

彼らはここで隠れキリシタンのモキチ(塚本晋也)やイチゾウ(笈田ヨシ)達に会う、そして昼間は小屋の中の薄暗い地下室で過ごし、夜になって布教活動を始める。

この村に幕府の役人がやってきて、4人の人質(モキチ、イチゾウ、キチジローなど)を連れ去ろうとする。役人たちは踏絵を彼らに踏ませ、更に十字架に唾を吐きかけ、マリアを侮辱すれば助けてやると言う。

キチジローは役人に言われたとおりに唾を吐きかけ、走って姿を消す。しかしあとの3人は拒絶し、水磔(みずはりつけ)の刑が執行される。

海岸の十字架に張り付けられた彼らは多量の海水を飲み、息もままならず一人ずつ死んでゆく。モキチは最後まで生き残り、死ぬまでに4日間を要した。

危険を感じたロドリゴ神父はガルペ神父と別れ、五島列島に向かう。彼はこの島で空腹と疲労の為倒れるが、キチジローに助けられる。

ところがキチジローの密告によってロドリゴは捕えられ、長崎に連れてこられる。彼は市中引き回しのあと牢につながれる。

ロドリゴ神父は井上筑後守(イッセー尾形)の御前に引き出され通辞(通訳:浅野忠信)を介して、棄教するように説得される。

頑として首を縦に振らないロドリゴに対して役人たちは、彼の眼前で次々と隠れキリシタン達を拷問したり、殺したりする。ロドリゴに心酔するジュアン(加瀬亮)は打ち首にされる。

ある日浜に呼ばれたロドリゴはそこで捕えられたキリシタンたちに混じったガルペ神父を見つける。簀巻き(すまき)にされ船に載せられたキリシタン達は沖で次々と船から海に投げ落とされる、その中にはロドリゴの顔見知りのモニカ(小松菜奈)もいた。

ガルペ神父は溺れている彼らを助けようと沖に向かって泳ぐが、彼も溺死させられる。それを見たロドリゴは大声で泣き叫ぶ。

そしてロドリゴ神父のもとに沢野忠庵と改名したフェレイラが現われ、棄教するように説得する。果たしてロドリゴ神父は棄教するのか、それとも死を選ぶのか・・・。

ネタバレとレビュー

フェレイラはロドリゴ神父が棄教しない限り、次々と罪のない犠牲者が出ると説く・・・ロドリゴは涙ながらにそれを受け入れ、キリストの踏み絵を踏んで棄教する・・・彼は何故「神は沈黙」するのかと嘆く。

ロドリゴ神父はフェレイラと全く同じ道を歩むことになる。

彼は井上筑後守に仕え妻子を持ち名前を岡田三右衛門と改名し、江戸に赴任する。彼とフェレイラは日本で遅れている天文学と医学を教えたり、外国から入ってくる物がキリスト教か非キリスト教かを検閲する役目も仰せつかる。

それでも幕府は彼らに定期的に棄教したかどうか証文を書かせたり、踏絵を踏ませたりする。フェレイラは日本で亡くなる。そしてロドリゴも天寿を全うして仏教徒として火葬される。

ロドリゴの妻は棺桶の彼の手の中に木製の十字架を誰にも悟られないように握らせる・・・彼の体は煙と一緒に天に昇って行く。

フェレイラは日本は「沼」だと言う、「沼」の上にどんなに努力をしたとしても草木(キリスト教)は育たない。

役人によって溺死させられたモニカはロドリゴに死んだら、つらい役務もない、苦しみもないパライソ(パラダイス:天国)に行けるんだねと聞く・・・死ぬのが怖くないようだ。

キチジロウは家族の中で唯一踏み絵を踏んで生き延び、家族は生きながら火をつけられ死んでゆく。彼は何度も仲間を裏切り棄教して逃げる。ロドリゴをも密告する・・・ユダのような役割だ。

でも仏教に改宗したロドリゴのもとに現れ、懺悔をしながら中間(召使)として生涯仕える。彼は弱い人間なんだけど、常に自分を懺悔し、キリスト像を肌身離さず持ち歩いている。

キチジロウが我々に最も近い人間像ではないだろうか、誰しも人間は弱い生き物だから何かにすがってないと生きて行けないからね。

それにしても噂通り、窪塚洋介とイッセー尾形の演技は素晴らしい・・・日本の俳優陣もたいしたものだ。

TATSUTATSU

パウロ 愛と赦しの物語」もご参考に。

 

 

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