邦画

「ラストレシピ~麒麟の舌の記憶~」映画の感想と解説‐天皇の料理番山形と幻のレシピとは


サマリー

2017年11月公開の伝説の料理人のヒューマンドラマ
監督 滝田洋二郎(陰陽師、壬生義士伝、おくりびとラストレシピ~麒麟の舌の記憶~
原作 田中経一「ラストレシピ~麒麟の舌の記憶~」
出演 ●二宮和也(硫黄島からの手紙、GANTZ、プラチナデータ、母と暮らせば、ラストレシピ~麒麟の舌の記憶~
●西島秀俊(Dolls、休暇、ラストレシピ~麒麟の舌の記憶~、劇場版MOZU、クリーピー
●綾野剛(GANTZ、新宿スワン、)
●宮崎あおい(舟を編む、怒り、バースデーカード、日本で一番悪い奴ら、ラストレシピ~麒麟の舌の記憶~
●西畑大吾(ラストレシピ~麒麟の舌の記憶~
●竹野内豊(冷静と情熱のあいだ、シン・ゴジララストレシピ~麒麟の舌の記憶~
●笈田ヨシ(豪姫、あつもの、沈黙-サイレンス-ラストレシピ~麒麟の舌の記憶~

「ラストレシピ ~麒麟の舌の記憶~」予告

 

料理映画は大好きだからついつい観に行っちゃう。この映画も美味しそうな料理がいっぱい出てきて実に楽しい。ストーリーの2/3くらいまではミステリー調でぐいぐいと引きつけられた。残念ながら結末は失速してしまった感がある。

二宮和也さんが主演だけど西島秀俊さんに完全に食われちゃった。西島秀俊さんの存在感は凄い・・・彼の素直でブレない演技は一見の価値がある。それに綾野剛さんや宮崎あおいさんは相変わらず演技が上手い。

滝田洋二郎監督は「壬生義士伝」や「おくりびと」などレベルの高い作品を作っていて好きだけど、今回はやや平凡なデキになってしまった。でもそれなりに楽しめるからお薦めだ。

「麒麟の舌」とは一回その料理を味わっただけで、その料理の複雑な味を再現できる「絶対味覚」を持った天才シェフのことだ。口の中にスープを含むと、どんなだしでどんな食材で作られているかを一発で当ててしまう。

佐々木充(二宮和也)は完全主義にこだわり過ぎて店を潰してしまった天才シェフだ。借金を抱えた彼は富豪相手のシェフをしながら金を稼ぎ、返済に充てていた。

ある日、中国料理界の重鎮 楊清明(笈田ヨシ)から巨額の報酬が約束された依頼が舞い込んでくる。佐々木は中国に飛ぶ、その依頼とは。日本の料理人 山形直太朗(西島秀俊)が創り上げた幻のレシピ「大日本帝国食菜全席」を見つけ出し、この料理を再現させると言う雲をつかむような話であった。

この「大日本帝国食菜全席」は天皇の料理番であった山形が妻の千鶴(宮崎あおい)と満州国に渡り、4年の歳月をかけて創り上げた112種類のレシピが収められたものであった。中国の「満漢全席」にも匹敵する素晴らしい宴席料理だ。

山形も佐々木と同じように「麒麟の舌」を持つ天才シェフと言われているが、彼も消息を絶ちレシピも散逸してしまったらしい。何故これほど素晴らしいレシピが公にされなかったのか、いまだに謎である。

楊清明は山形の助手としてその素晴らしい料理を作り出すのを手伝ったとのことであった。1933年ごろの出来事であり70年以上前だ、果たしてレシピにたどり着くことが出来るのかと佐々木は悩むが・・・。

その後のストーリー

佐々木は親友 柳沢健(綾野剛)に勇気づけられ調査を開始する。宮内庁の情報を頼りに山形の助手をしていた鎌田正太郎(伊川東吾)を見つけ出す。

佐々木は鎌田から遠い昔の出来事を知る。1933年山形は妻の千鶴と国命によって満州国に移住する。彼を待っていたのはハルビンに駐留する関東司令部 陸軍大佐 三宅太蔵(竹野内豊)であった。

彼は満州国に天皇陛下をお招きしたい。その時に「満漢全席」を凌駕する宴席料理で陛下をもてなすことを考えている。お金はどれだけかかってもよい「大日本帝国食菜全席」と呼べる最高の料理のレシピを作ってくれとげきを飛ばす。

山形には日本人の調理助手 鎌田(青年時代:西畑大吾)と満州人の楊(青年時代:兼松若人)が手伝ってくれることになっていた。

満州国には世界中の食材が集まってくる。山形は料理によって民族間の融和を図ろうとレシピ創りに没頭する。彼は天才的な能力を発揮して次々と新作料理をものにしてゆく。

そんな時に妻の千鶴がお産の大量出血によって亡くなってしまう。山形には娘 幸が残された。レシピ創りを始めて4年が経とうとしていた。

山形に満州国への天皇行幸が決定したと三宅大佐から連絡が入る。彼は長い間の苦労が報われると喜んだが、そこには恐ろしい陰謀が渦巻いていた。

ネタバレ

三宅大佐は満州人の楊が天皇陛下に毒を盛ったように見せかけ、満州国を関東軍に乗っ取らせようと画策していた。山形はこれに抵抗して、楊を逃がし、娘を鈴木料理長(竹嶋康成)に預け、「大日本帝国食菜全席」のレシピを燃やしてしまう。そののち満州国は滅亡する。三宅は山形を射殺し、自分も自決する。

山形は生前、レシピのコピーをヨーゼフ・グーデンバーグ経由で楊に渡していた。楊宛に一部始終を書きとめた手紙が添えられていた。

山形幸は鈴木料理長とともに日本に帰国し、ある男と所帯を持ち子供を産んだが夫に先立たれていた。楊はレシピは幸が持つべきと来日しこれを渡す。幸は自分の料理店を開業したが火事で焼け死んでしまう。彼女がレシピを店から持ち出そうとした為だった。

幸の息子は児童養護施設すずらん園の園長(大地康夫)に育てられる。その幸の息子こそ佐々木充であったのだ。つまり佐々木充は山形直太朗の孫であった。

レシピは園長が預かっていたが、このレシピは不幸を呼び寄せると彼は考えていたようだ。彼は充を不幸にしたくなかった。

しかし園長は死ぬ間際にレシピは彼に渡すべきと考え直した。充の料理界での名声を考えると彼には祖父からの血が受け継がれていたのだ。充はもう一度一流の料理人を目指して全力を尽くすことを誓う。

レビュー

結局、「灯台もと暗し」と言う事で、レシピは充の近くにあった。楊と鎌田達が画策し、レシピを充に探させようとしたようだ。何のためにこんな回りくどいことをしたのかややストーリーに無理があるように感じた。

冒頭に書いたように、出だしから面白く、物語に引き込まれたけど、結末がやや興ざめだ。佐々木充の再生物語がテーマなのか・・・。

主役級の俳優たちを惜しげもなく使った豪華な映画だけど、もう少しシンプルで納得のいく結末であれば後世にも残る名作になったかも知れない。

でも美味しそうな料理がいっぱい見れたから僕としては大満足だ。

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